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S4 『油断大敵、卯が無敵』

A 他人の目線

 「はあ?俺も絶対国公立行くし。いや俺よりお前の方が無理じゃね?」

ゆうきは強気だった。いや強気に見えて、ただプライドが高いだけの見栄っ張りなのかもしれない。いや、でもやはり本当に自信があるのか。。

この前まで部活三昧でろくに勉強なんてしてないのだろうが、バスケ部エースのこの男の集中力は確かに目を見張るものがあるはずだ。きっとこの夏は受験の夏だとか意気込んで、もうすでに予備校の夏期講習に申し込んで、本屋に行って参考書も買い漁っているに違いない。やばい、負けてられない、俺も勉強しなきゃ。

B 本人の目線

「はあ?俺も絶対国公立行くし。いや俺よりお前の方が無理じゃね?」

なんかムキになっちゃったけど、実際図星なんだよな〜。まったくもって勉強始める気が起きねぇ。な〜んでだろう。これはあれなのか、病気か?恋か?いや、恋は、、ないな。まあでも未練はあるから、恋に近いのかな〜。あ〜なんであそこで3P(スリーポイント)外すかな、俺。何やってきたんだろう。バスケ。バスケ。バスケがしたいです、安西先生。いや、顧問は葛西先生だったな。テストで良い点とったり、良い大学行くのってなんの意味があんだろ。意味あんのかな。まああるんだろうけど、分かんねぇな〜。どうしようかな、やる気でねぇ。やれば良い点取れたりするのは、過去の経験上知ってるんだけど、どうにもこう、やる気がな〜。まさしはすげえよ、毎日ちゃんと勉強してるもんなぁ〜、って、感心しててもしょうがないんだけど。はぁ〜あ、眠くなってきたわ。Zzzz、Zzzz、ZZZzzz。

《さあ、最終コーナーにさしかかるところ。現れたのは、うさぎだーー!後ろにはカメの姿は一向に見えません。ブッチ切りの速さで今、ゴール!!さすがうさぎ選手、圧倒的なレース展開を見せ、カメ選手との勝負を100戦100勝としました!お、ここで勝者のうさぎ選手からインタビューのコメントが入りました。なになに、なるほど、「僕は勝つことが好きです。それは負けることや、やらずに文句言うのがダサいと思うからです。僕にとって一番耐えがたいことは“ダサい”ということなんです。ダサくならないように、かっこよくいられるように、何かや誰かを舐めたり、比べたりせずに、そういう甘えのある自分に打ち勝つことを積み重ねてるだけなんです。カッコイイとはそういうことだと思うし、いつまでもかっこよくいたいから」だそうです。いや〜、本当にかっこいいですね、うさぎ選手。また次回のレースも楽しみにしましょう。それでは次のレースです。カニvs猿ですね。こちらのレース展開はどうでしょうか・・・・・》

 「んっ、んん〜っ。ふぁ〜あ。なんだ意味不明な夢。でもあれだな、、、なんか妙に刺さったわ。今の。俺、言い訳とか逃げ場ばっかり用意して、ダセェことばっかりしてたわ。俺もダサいのはヤだからまずは、英単語からでも始めるか」

手垢も付いていなかった英単語帳に、初めて指紋が刻まれた。

A 他人の目線(後日談)

ゆうき、あいつ、やっぱ夏から急激に伸びたよな〜。もはや地元の国公立じゃなくて、昔の帝国大学を狙えるレベルだもんな。でもほんと、力あるやつが、頑張っちゃうのって、チートだよな。そういうやつに憧れるけど、基本性質が俺はカメだから、あれをやられちゃうとキツイわ〜。ゆうきって、確かに、少し出っ歯だもんな…….、、いや、ほんとに、見た目イジリしかできないの、ツラっ!!!

(完)


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