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ひとりごと(PROがPROらしかった時代)

昔はプロカメラマンのテクニックは秘伝中の秘伝であり、公開することなどありえない時代でした。そのためプロカメラマンを目指す者たちは、技術を吸収するため、私の様にプロのアシスタントについたり、レンタルスタジオのスタッフになったりして「完全にその道に入り」、そのハードワーク(現代なら間違いなくブラック企業)に耐えたわけです。今ではその勤務形態は大幅に緩和されたようですが、「写真の技術」とは、そんなハードワークと引き換えに手に入れるものでした。そんな時代のカメラマンには当然ながら、臨機応変の強力なテクニックと不屈の精神力、そして体力。また、そこから生まれる強烈な自負がありました。昔はカメラマンと言えば、間違いなく「体育会系」に属する職業でした。それは一見オシャレでカッコよさそうに見えるファッション系の現場でもそうです。誰でもなれるわけではなかったその時代、アマチュアカメラマンとプロカメラマンの間には厳然たるラインが引かれていました。

時代は流れシノゴやブローニーといったゴツいカメラは35mmデジタルカメラに取って代わられ、その結果大光量は不必要となり、ジェネレーターはどんどん小型化し、露出計もポラも不要になり、挙句の果てには「とりあえず撮って細かいことは後で調整」な時代です。かつて門外不出であった「写りこみを防ぐアオリのテクニック」や、「シズル感を生むハイライトの入れ方」などは、フォトショップでより簡単に、よりリアルに、より低予算で達成可能となり、「今までの蓄積はなんだったの!?」という時代です。もはや写真の技術の習得には血のにじむ努力も、不屈の精神力も必要ありません。土門拳がカメラをホールドする訓練としてレンガを使っていた話は有名ですが、そんな、体育会系の時代は終わったのですね。いい写真のためには「根性」よりも「フォトショップのプラグイン」の時代です。「簡単・便利・キレイ」という、ある意味必然的な時代の流れが、プロカメラマンと一般のカメラマンのボーダーラインをあいまいにしてしまったのでしょうか?

カメラマンが写真師と呼ばれ、尊敬されていた時代は今や昔話ですね(涙)

では、素敵な写真ライフを

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