フリーランスのカメラマンとは持久走である。

とあるカメラマンからの金言を今でも覚えている。

「いつの間にか俺しかいなくなってた」

特に直接的な関係のない僕よりも歴のある先輩カメラマンと話していた時の一言。

その時は休憩中の談笑で聞いた一言だったから、
あくまでも自分の実力を謙遜された一言だと思っていたが今思えば言い得て妙な、本当のことだと感じる。

・カメラマンをやり続ける体力=財力・環境維持・精神力

とにもかくにも財力に困るのがフリーランスカメラマンだ。

カメラマンにより違いはあるだろうが、
定期的な仕事のあるカメラマンは聞いたことがなく一件一件の戦いであり、月によって収入が増減する。

そのわりに金を使いがちなのだ。
僕はファッションが好きなので靴や新しい服を買うこと以外に散財理由はあまりないのだが、
一般的なカメラマンは良い作品や良い写真を求るあまりレンズやモデル代・その他設備に投資をしがちだ。

必要もないのに。

いいレンズに越したことはない、いや安くても良い論争は飽きたのでそこに重きは置かないが、
少なくともサードパーティー制の代替も含めて大三元と言われる焦点距離を補ていれば十分であろう。

極めつけのバカはローンを組んで金を払う予定もないのに月賦で支払いなんてことをしてる。

一時期の僕だ。

やめておけ。死ぬ。レンズよりも貴様の腕だ!

そして次に環境。

恋もせず、友人たちと遊ぶのも節制し、ただ仕事を生み出す環境に打ち込めるでしょうか?

周りが変化していくと自分もそれに影響を受けやすいです。もちろんそれら全てをシャットアウトしろというわけではなく、上手く付き合いながら生きていけるでしょうか。

仕事していてももっと大きい車が欲しいな、
もっと機材が欲しいなとなっていき、
今いる環境に苛立ちを感じ始め、
「結局金がないとどうにもなんねえ」となり、
カメラマンから逃げたくなります。

そして最後に精神面。
これらは上記を踏まえて、それでもやり続ける精神を保てるかどうか。
まともな精神してたら出来ませんしオススメしません。
一番キツいのがパートナーや家族からの「ちゃんと働いたら?」の一言でしょう。
勿論自分自身でもそう思い、白髪が生えるくらい悩みます。だってこのご時世選んだとしても、福利厚生・土日祝休みでまとまったお金がもらえる仕事なんかあるんだから。
側から見てても、実質的にもフリーランスカメラマンはフリーターのようなものです。
何が足りなくて、何が悲しくてこんな仕事をしなきゃいけないのか。

とことんまで追い詰められます。
特に自分の能力に自信を持っていたり、優秀な人なら尚更でしょう。

カメラを置いて、就職活動して1ヶ月〜2ヶ月もあれば明日から来てくれって会社があって、
それで家庭を持ったり親孝行が出来るのに、

それでもやり続ける異常な精神性を保たなければなりません。

果たしてカメラマンやクリエイターを辞めた人たちが夢を諦めた人たちなのか。
僕はそんなことは思わない。
むしろ彼らの方が一般的な勝利者なのだと思います。

ただそれ以上に捨てられない性と別の次元の勝利を手に入れたいと思っているからです。

じゃあ2年、3年走り続けた僕はどうなのか?

トータルの収入面は始めた当初とあまり変わらずなのですが、何よりスタート時と変わったのはカメラマンのイノウエとしての認知度がお客さんから頂けていること。

起業当初の仕事はイチゲンさんをたくさんこなすということがほとんど(まあ今でも半分以上はイチゲンさんだけど)3年目に入って顧客化が進んできました。
具体的に言うと企業HPや社員の写真更新、毎年の行事の撮影依頼。

そしてそこからのご紹介があり非常に走りやすい環境が作られています。

カメラマンって探してもいないんですよ、実は。
あとは顔馴染みの紹介っていうことだけで信頼に足りる。

だってカメラマンやってるみなさんもいざモデルとかメイクさん探したらいないでしょ?
平日動けますとか、土日祝動けますとか、
そう言う人が多い。

そういう意味では僕は使いやすい存在でお客さんも日にちの調整がしやすい。

別にインスタグラム見てたら僕と実力差が明確にあるかというとそんな人ほとんどいないんですよ。カメラマンの実力自体はかなり同じレベルで拮抗しています。

要はカメラマンとして走り続けろってこと
でも別にやめてもいいよ、
それはそれで誰かを幸せにしてるから

今から仕事なのでさようなら

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