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きえ

死んだら全部終わりだという。死んだら何も残らない。富も名誉もあの世には持っていけない。あの世はない、ただ終わりがある。しかし遺していく、ものは。偉大であればこそ、愛されていればこそ、或いは憎まれていればこそ、名前くらい残る。懐古くらいは残るだろうか。矮小であってはいけない、何者かでなければいけない、何にもなれないならば、消えるだけである。わたしは早く消えたいけれども、その代わりに誰か、血の繋がらない誰かに、強烈に残っていたい。尊大なわがままである。そしてそれは到底叶わないものであろう。天才は27で死ぬ。わたしはあす、27になる。無論、なにものでもない。その先もいきている。けれどどうやら、すこしは愛されているらしい。答え合わせは、またその分だけ遠くなる。ひどく苦痛である。仕方がないと、それでもいいと。笑えるだろうか。

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