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希望を無くした虎は活路を見出せない話

今日はひとりのプロ野球ファンとして、阪神タイガースの2022年シーズン開幕9連敗について取り上げたいと思う。

結論から言えば「リーダーの闘争心の減退」が大きいのではないかという話。もう少し詳しく言えば「リーダー自身が具体的で強い意志をもって、目標達成のためにあらゆる手段を尽くすことで希望を見出し前進する力」が大きく減少しているのではないかという仮説だ。

様々な要因があるとは思います。激戦を繰り広げて最後まで首位を争った昨シーズンと比べると、抑えのエースだったスアレス投手が抜けたことだとか、チームに馴染んでいたとされるサンズ選手の放出だとか、昨年勝ち頭だった青柳投手がコロナ療養で出遅れたとか、なんやかんや戦力のことを言ったらキリが無い。

でも最も大きな要因は何だろうか?と考えた時にあがるのは矢野監督が「今シーズン限りで監督を退任する」ことを開幕前に言っちゃったことなのではないだろうか。本心に嘘をつけない正直な人、なのかもしれないですが、リーダーとしてはちょっともったいないタイミングだった。言わなくても、もしかすると心の底にその想いがあった時点で、少なからず態度や言動に出てしまっていたかもしれないので、遅かれ早かれなのかもしれないけれど。

この件は、いろいろなメディアでも同じテーマで、様々な解説者が同様の要因を取り上げていますが、ここでちょこっと組織行動論的な分析を入れてみる。

人が熱意をもって物事に取り組み、夢中になって没頭し、活力が生まれている状態を想像してみてほしい。間違いなくパフォーマンスが発揮され、結果もついてくることだろう。そんな個人が影響し合い、チーム全体が活性していくことでよりいっそう相乗効果が生まれて強くなっていく。
最近話題のビジネス用語でいう「ワーク・エンゲージメント」ってこれですよね。

ではそんな熱意や活力を生み出す源泉は何だろうか。それはひとりひとりの個人の資源であり資質である「やりとげる自信」であり「目標に向けて自律的に進むエンジン」の役割を果たす心のエネルギー源なのだ。もちろん組織の仕組みや環境の要因もゼロではないが、このポジティブな心のエンジンの影響は大きい。学術的に注目されている「心理的資本」がそれにあたる。

「やりとげる自信=心理的資本」は開発できるとされている。その中の要素のひとつに「Hope(ホープ)」がある。私たちは「意志と経路の力」と表現することにしている。志があり目的に向かって、行動を惜しまず目標をひとつひとつ達成していく力だ。

もしリーダー自身がこの「意志と経路の力」が大きく減退していたとしたら、チームの士気はどうなろうだろうか。言葉にするまでもない!

阪神タイガースの話に戻そう。矢野監督は口では優勝と言っていても、本心では「辞めたい」ことの方が本音としては大きかったのかもしれない。この1年で辞めることを決めることで、そして宣言してしまうことで、ある意味で「目的を達成してしまった状態=志を果たしてしまった状態」なのかもしれない。そう、それは目標を見失っているに等しい。

目的を果たしてしまい、新たな目的やそれに紐づく目標を持てていない状態は、先ほどの意志と経路の力(Hope)が減退してしまうのだ。これは研究でも明らかになっている。

つまり、もう自分は「あがった(ゴールした)」と思った瞬間から、安堵が生まれる。良い緊張感すら失われる。そう、闘争心そのものが失われてしまうのだ。そしてこれは周囲にも影響を与えることから、リーダーがその状態になれば負の影響は絶大なのだ。

人間だからホッとしたいし、リラックスしたいし。リーダーはつらいことも多い。だからこそ、修羅場を経ても、立ち直り乗り越える力(Resilience/レジリエンス)も求められるし、経験を糧にできる柔軟な楽観力(Optimism/オプティミズム)も求められる。ちなみに、これらもすべて個人の資質である心理的資本の要素だ。

いちプロ野球ファンとして、阪神タイガースのこれからのまき直しに期待したいし、リーグを盛り上げてほしいと思う。矢野監督が昨年やってきたことはきっと間違いではない。失敗を恐れず挑戦することを促していた。若い選手が活躍し、中軸も育ってきたように見える。今、めちゃくちゃしんどいと思うが、志を再確認してほしい。

そしてまずは1勝するという達成体験がきっかけとなって、うまく回り始めますように。

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