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公園で1人弁当を食べる

天気はいいのだが日当たりのいい木製のベンチはカップルや外回りののサラリーマン、子供連れのお母さんだとかが占拠してて空いておらず、仕方なく日陰の石のベンチに座る。座った瞬間から硬い冷たさがお尻から伝わり一気に体温を奪っていく。

これはまた悪化しそうだなと持病の痔を心配しながら、全然つめたくもなんとも無いですよという態度でそそくさと飯を頬張る。



ふと見ると1匹の蚊が、フラフラと目の前を横切り黒いズボンへの着地点を模索している。

もう11月も半ば。こんな寒い季節に人生最後の悪あがきのようにご馳走を探して飛んでいる1匹の蚊。その姿に、人生の半ばを当に過ぎた自分の姿をかぶらせ、寒さを少しでも紛らわせるために組んでいた右足をそっと差し出す。



ふわふわと無重力状態の宇宙飛行士のように黒い月面に降り立った老齢の蚊。ヨボヨボの足を踏ん張り星条旗のように自らの針を地面に突き刺そうとした瞬間。

バスっという鈍い音とともに蚊はペシャンコに。

容赦なく振り下ろした手。


まるで神の存在にでもなったかのような超越感などもちろん無く、少しの申し訳ない気持ちと魚拓のように残る蚊の残像をふり払うように手のひらを軽くはたき、残りのご飯をかき込み公園を後にした。



いつか大きな手のひらが落ちてきて、世界が一瞬で終わればいいのに。


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