▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼ (22)チガイがわかる・おもしろ日本語入門 ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△
第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!
その6、 “ある” と “いる” の ナルホド活用法
souy
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元NHKアナ、民放キャスター、はたまた講演講師や大学
講師などを遍歴して、その後突然スペインのバルセロナに
移住して、早や18年。
著書(最新刊)『熟年夫婦の行き当たりばったりスペイン
移住記』(地球の歩き方、ダイヤモンドビッグ社)
他に『NHKはもういらない』(三一書房)
『勉強っていやいやするもの?』(大日本図書)
「脳みそのほんとうの使い方」(日科技連出版)など
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前回は、以前形容詞だったにもかかわらず、今では動詞的活用を身につけてしまった“ない”についてお話ししました。なんとも興味深い、言語の変容の歴史でした。
もう一度おさらいしておきましょう。
例えば、「この味噌汁は美味しくないです」と「この味噌汁は美味しくありません」の2つの言い方が存在するのは、“ない”が形容詞の“です”を付けるフォーマル形とともに、動詞としてのフォーマル形を持ってしまったことで起った現象です。どちらも文法的には正しい言い方ということになります。あなたの疑問がひとつ解けましたね。
◇
さて今回は、“ない”の否定形にも当たる動詞“ある”について観察してみましょう。
けれども「存在する」“exist”という意味の動詞は、日本語では“ある”だけでは
ありません。 そうそう、“いる”という動詞もある(笑)んですよね!
では、“ある”と“いる”の違いは何でしょう?
生きていない物に使うのが“ある”、生きている人や動物に使うのが“いる”???
けれども木や花は、生きていても“いる”とは言いません。 それじゃあ、動くものは“いる”、動かないものは“ある”?? いえそれもヘンです、だって時計は動くのに“ある”、だれも「時計がいる」とは言いません。 これは、こまりました!!
でもここでは便宜上、
動くものは“いる”、動かないものは“ある”と考えてみましょう!
そうすると、動詞の進行形に“いる”が使われるワケが解ってきます。
例えば「I am eating a sandwich.」は、英語ではbe動詞とeatの進行形を組み合わせるのですが、日本語では動詞“食べる”と動詞“いる”とをつなげることで、
「私はサンドイッチを食べている。」ーーーと表現します。
つまり、日本語は動くものに使う“いる”を他の動詞につけることで、欧米言語などの進行形にあたる“eating”などを表しているわけです。こう考えてみると、“いる”が本来持っているコンセプトも想像できますね。
そう、
日本語の進行形は、動くものに使う“いる”(exist)を動詞につける!!
ということです。
では動かないものに使う“ある”は、どうなんでしょう??
これも“ある”が動かないものの存在を表すと考えると、その本質が見えてきます。
例えば、「Here Japanese letters are written.」(ここに日本の文字が書いてある)
という文章は、〈事実ここに日本文字が書かれていて、それは以前誰かが間違いなく書き記したものだ〉という証拠でもあります。
そう、つまり“ある”はある種の《証拠物件》を示していると考えていいでしょう。
「やや、ここに日本文字が書いてあるのは、この部屋に日本人がいた証拠だな!」・・と叫ぶ助手のワトソンに対し、かの名探偵ホームズはパイプをくわえて答えました。
「いや、日本文字を書けるのは日本人とは限らないだろう!!」
・・・なーんてね。
というわけで“いる”は進行形に、“ある”はいわば証拠形(?)として使われます。
けれども残念ながら、コトはそう単純ではありません。
例えば日本語では部屋の窓が開かれている状態を、通常「窓が開(あ)いてある」とは言わず「窓が開(あ)いている」と言うのです。本来なら「窓が開(あ)いている」とは窓がゆっくりと開きつつある進行中の状態を指すはずが、それを証拠形としても使ってしまうのです。
これは日本語を学ぶ生徒たちにとって理解に苦しむことで、私も何度も質問を受けた難題です。はっきり言って私たち日本人でさえ説明できない、ミステリ―なのです。もしや日本人の感性の中に「開く」や「流れる」などの動きに特別な思入れがあって、なぜか進行形を使ってしまう??? ハハ、それはワタシの妄想にすぎません。
では、少しばかり文法的に分析してみましょう。
動詞には、他動詞 (Transitive verb) と自動詞(Intransitive verb) があります。
他動詞は主語である人などが何か(目的語)を動かす時に、また自動詞は主語そのもの(自ら)の動きをあらわす時に使われます。
「窓を開ける(あける)」は他動詞、「窓が開く(あく、ひらく)」は自動詞です。
じつは他動詞の場合には、“いる”も“ある”も、ともにつなげることができますが、
自動詞には“いる”は接続可能ですが、“ある”をつなげることはできないのです。
つまり「窓を開けている」も「窓を開けてある」もOKですが、「窓が開いている」はOKでも「窓が開いてある」はNOなのです。同様に、自動詞の「窓が閉まってある」も「柱が倒れてある」も「牛乳がこぼれてある」もNOです。ですから「窓が開いている」とは、すでに窓が開いてしまっている状態を表し、一方、今まさに窓が開く動きを見せている状態については、通常「窓が開きつつある」などと言い表すことが多いようです。
さらに、「開く」は「あく」とも「ひらく」とも読め、「あく」は自動詞、「ひらく」は他動詞ですが、その他に「開ける」(あける)という他動詞もあって、ちょっとややこしいです。 それらを、以下にわかりやすく図解してみることにしましょう。
《 open 》 《 close 》
ーー 他動詞 ーーー 自動詞 ーー ーー 他動詞 ーーー 自動詞 ーー
(窓を) (窓が) (窓を) (窓が)
開ける(あける) 開く(あく) 閉める(しめる) 閉まる(しまる)
開く(ひらく) = 開く(ひらく) 閉じる(とじる)= 閉じる(とじる)
下段の、開く(ひらく)閉じる(とじる)は他動詞と自動詞の両方を兼ねた特殊な動詞です。そのため、「窓が開いている」も「窓が開いてある」も、また「窓が閉じている」も「窓が閉じてある」も、ともに正解ということになります。覚えておくと便利です! (ただし例外として「窓が開けてある」と「窓が閉めてある」という使い方もあるのですが、「窓が開けている」と「窓が閉めている」は存在しませんのでご注意ください)
でも、どうしてこんな現象が起こってしまうのか、
その理由は、きっとこうでしょう。
よくよく考えてみれば「・・いる」というのはなんらかの動作が進行してることを表しており、それは誰かが動作している場合でもそのもの自体が動いている場合でも接続可能です。
しかし「・・ある」という表現を使う場合には、誰か(何者か?)が、ある時点の前に、何かに、何らかの行為をしてしまっていることを表している。つまり事前に準備したり完了したりしてあることになります。 したがってどうしても誰か、あるいは何者かの行為者が必要になるというわけです。
常識的にも、その物自体が事前に準備するなんてことはあり得ませんよね?
◇
少しだけ、コトバの接着剤について説明しておきましょう!
動詞や文章をつなげるために、日本語では一種の接着剤を使います。それは“て”と
“で”です。 上の“開ける”と“いる”や“ある”をつなげた場合も、“開けている”や“開けてある”というように、“て”が接着剤の役割を果たしています。
使い方は簡単! 動詞のインフォーマル過去形の最後が“た”なら、それを“て”に、
“だ”であれば、それを“で”に変えればいいのです。この言葉をつなげる方法は、
きっとあなたの強い味方になることでしょう!
しかしコトバの接着剤については、後の章で再び詳しくお話しするつもりです。
ではまた次回をお楽しみに!!
ーーー 次回は第23回 第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!
その7、“もの”と“こと”(the things)
を、お届けするつもりです。
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