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▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼     (27)チガイがわかる・おもしろ日本語入門   ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△

第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!

       その11、 命令形 と 「・・ください!」

過去形や否定形など動詞の変化形についてはすでにおおよそお話しましたが、足りないものがまだいくつか残っています。今回はそのうちの命令形について詳しくご説明していくことにしましょう。


  日本語の命令形にもインフォーマルとフォーマルの2種類があります。


動詞“行く”の場合、インフォーマルが“行け!”で、フォーマルが“行きなさい!”
“飲む”の場合は、インフォーマルが“飲め!”で、フォーマルが“飲みなさい!”
“買う”の場合は、インフォーマルが“買え!”で、フォーマルが“買いなさい!”
“帰る”の場合は、インフォーマルが“帰れ!”で、フォーマルが“帰りなさい!”。

つまり動詞の不定形の最後の“u”を、インフォーマルでは“e”に、フォーマルでは
“i・nasai”に変えればいいのです。手順はとても簡単ですね。


      
       『“る”捨て型』動詞の場合はどうでしょう。


“食べる”の場合、インフォーマルが“食べろ!”で、フォーマルが“食べなさい!”
“起きる”の場合は、インフォーマルが“起きろ!”で、フォーマルが“起きなさい!”
“寝る”の場合は、インフォーマルが“寝ろ!”で、フォーマルが“寝なさい!”。

つまり不定形の最後の“ru”を、インフォーマルでは「る」を捨てずに“ro”に変え、
フォーマルでは「る」を捨てて、そこに“nasai”を接続すればいいのです。


   でも、あの『“る”捨て型』の変わりもの動詞2つはどうなのでしょう。


まず動詞“する”は、インフォーマルが“しろ!”で、フォーマルが“しなさい!”、
前にお話ししたように、“す”が“し”に変化します。

しかし動詞“来る”は、”インフォーマルが“来い(koi)!”となり、否定形に使う
(ko)が使われるので要注意です。けれどもフォーマルでは“来なさい(kinasai)!”と以前お話ししたとうりの変化をするだけです。さほど難しいことはありませんね。

             さて本題はここからです!


けれども、この命令形はインフォーマルもフォーマルも、今はほとんど使われません。というのも前にも触れましたがどちらも百年も前の封建時代の言葉で、直接話し相手に使うのは少しキツすぎるのです。それはまさに軍隊の命令のようになってしまうので、今では一部の親が子供を叱りつける時などに、口にするコトバになってしまいました。

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最初に“食べろ!”と“食べなさい!”はインフォーマルとフォーマルだとお話ししま
した。事実、“食べろ!”には“食べなさい!”よりも強烈な響きがあります。しかし
現代では両方とも、いわばインフォーマルの部類に相当すると考えてよいでしょう。


      では今、人にものを頼む時どうしたらいいのでしょうか?


例えば自分の話しを聞いてほしい時、「聞け!」や「聞きなさい!」ではなく、そう、通常は「聞いてください!」といいますね。 この「・・・ください!」が、今では欧米言語のいわば“命令形”にあたるのかもしれません。

映画の字幕なども「Sit down, please !」は「座ってください!」と訳されています。だから“please !”は“ください!”だと思っている人も多いことでしょうが、前にお話したように“please !”の意味に近い日本語は“どうぞ!”や“どうか!”です。

     しかし「・・・ください!」とは、一体何なのでしょう?


勘のいい人はもう気がついたかもしれません。そうです、前に説明した3つの動詞、“あげる”、“もらう”、“くれる”の中の、“くれる”の変化形のようなのです。
ハハ、「・・ようなのです」とはアヤフヤな感じですが、事実上はっきりしません。


     『“る”捨て型』動詞「くれる」の命令形を見てみましょう。


上の規則に従えば、インフォーマルが“くれろ!”で、フォーマルが“くれなさい!”
となります。しかし実際には“くれろ!”も“くれなさい!”も使われません。たぶん
何かの理由で“くれろ!”は“くれ!”に、そして“くれなさい!”は“ください!”
に変わってしまったようなのです。

なんとも不確かですみませんが、ここでは「・・・ください!」は“くれる”の命令形の一つと考えておくことにしましょう。


つまり「聞いてください!」は、妙な英語ですが「Please give me to listen me !」を、「座ってください!」は「Please give me to sit down here !」を意味しているのです。もっとはっきり言えば、「聞く」と「くれる」、「座る」と「くれる」の2つの動詞を、例の接着剤“て”や“で”で接合した合成語にあたるわけです。

(「聞いてくれ!」も存在しますが、やはり命令色が強く一般的には使えません)

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それにしても、日本語の動詞の命令形は前近代的でキツすぎるので、それを和らげるため“くれる”という動詞のやはり命令形の一つを使って、他の動詞と繋ぎ合わせた・・・、なんともフシギな話です。おそらく同じ命令形であっても、“ください!”だけを特別扱いする何かの事情があったのでしょう。まさに日本語はフシギが一杯!! 考えてみればこの国は、サムライ時代の終焉から約150年、第二次世界大戦からも80年弱しか経っていません。その近代化の歩みはまだまだ浅いのです。

      ところが、こうなると今度は逆の問題が浮上しました。


それはこの「・・・ください!」が丁寧すぎることです。公的な場や目上の人に対する場合にはよくても、親しい友達や家族に対してはちょっとフォーマルすぎるのです。さりとて本来の命令形は、すでにお話ししたようにあまりにキツすぎます。

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そこで現在よく使われているのが、“ください!”を省略してしまう方法です。つまり「聞いてください!」を「聞いて!」に、「座ってください!」を「座って!」に。その他にも「起きて!」、「食べて!」、「寝て!」のように短縮化することでずっとソフトに聞こえ、より親しい感覚を演出することができるというわけです。(「ください!」をよりソフトな「ちょうだい!」に変え、「聞いてちょうだい!」、「座ってちょうだい!」、「食べてちょうだい!」などとする方法も使われます)


                面白いでしょ?

     日本語は生きモノ、きっとまだまだ変わっていくことでしょう!

        これからもぜひ、楽しく日本語を学んでください!


              では次回をお楽しみに!!

                 
ーーー 次回は第28回 第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!
  

               その12、前(まえ)と後(うしろ、あと)
                     

 を、お届けするつもりです。


               ▽    ▽


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