哲学の煙

 分厚い本を開いて、白い紙にびっしりと書き写された黒い活字に目を通す。それはあまりにも難解で目を覆いたくなるものだ。自分の人生を賭け、命懸けで被造物の真理を解き明かそうとする哲学者達の血肉の結晶であるそれに私は喰らいつく。煙草に火を点け大きく息を吸い、口から一筋の白い煙を吐き出す。すると面食らっていた頭に冷静さが取り戻され、どうにかして弁証法の最中にある人類の叡智の一つをどうにかして理解しようと努める。1ページ、また1ページと読解を進めるが、私はそのその本に書かれた内容のほとんどを理解できずにいた。煙を吸っては吐くを繰り返す趣向品は、私にホイジンガ的な余暇を与えてくれる。趣向品という遊びによって私は自分を取り囲む加速してく世界から距離を取り、読書という減衰的な生命活動によってコスパなどという社会からの生命を加速させる要請から私は自由になる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?