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初任給で買った美容スチーマーを捨てた話

社会人になって初任給で買った美容スチーマー。

忘れないようスマホのカレンダーに登録しておいた燃えないゴミの回収日、私はそれを収集場所にやけに丁寧に置いた。

日常のゴミ出しでこんなにソワソワするなんてと自分でも可笑しくなって家に入ったその数時間後、回収されて跡形も無くなっているのを見た時はやっぱり少し寂しくなった。

当時、CMや電車広告でよく目にしたスチーマー。大好きなモデルさんが広告塔になっていて、街中で見かける度に目で追っていた。ちょうど社会人になって、もうすぐお給料がもらえる頃、少し背伸びしたら届いてしまうことに気がついた時は胸が高鳴った。それでも慣れない数万円の買い物には躊躇いも隠せない。

給料日の前、私は母との電話でそのスチーマーのことを話題に出してみた。節約家の母にはきっと反対されると思ったし、むしろそれならそれで、買わない方が気が楽だなんておかしなことを考えていた(だってやっぱり高価な買い物は少し罪悪感が付き纏うから)。

だけど母から返ってきたのは正反対の言葉で。

「良いじゃない。家でたくさん使えるんだし、エステに行くことを思ったら安いものよ。」

母からの意外すぎたその言葉に背中を押され、躊躇いが吹っ切れた。とうとう私は給料日を待って、美容スチーマーを手に入れる。高額な買い物に、しばらく外箱だって捨てられなかった。

まだ東京での生活が心細い日々。予定のない夜、私は一人部屋で無心になってスチーマーを使った。ちょっぴり大人になった気分で嬉しくなる。胸いっぱいに蒸気を吸い込むその時間に本当に救われた。

そうやって、得体の知れない不安な夜を何度過ごしたことだろう。

それから転職をして、2度引っ越しをして、恋人ができたり、仕事終わりの用事が増えたり、生活がどんどん忙しくなっていくにつれ、スチーマーを使わない日が増えていた。

それでも、社会人生活の相棒のような気がして、必ず部屋の棚の特等席に置いていた。幾度の断捨離を経ても当たり前のように手元に置いてた。

結婚して2年を前に、妊娠していることが分かった。新しい命を迎えるための準備、生活環境の見直しを進める中で、このスチーマーを手放すことに。

片方の蒸気口が壊れてて、実質ほとんど使ってなかったから。今が手放すタイミングだと思えた。

部屋から無くなって、すっきりして、少しセンチメンタルにもなる。一人の夜をたくさん救ってもらったから。

今必要なものでも、時間が経てば、環境が変われば手放す時もやってくる。そうやって、自分と一緒にものも新陳代謝していくんだろうな。これからも。

社会人になったばかりの私の相棒になってくれたスチーマー。そんな物に、また出会えるかな。






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