’あるがまま’と’幸せ’と

 ‘あるがままな自己表現ができることそれこそが幸せではなかろうか。

  人間をやっていると色んなことに気を向けなければならない。日本人が特に気になるのが周囲の評価、目線ではないだろうか。我々の多くは他人の目線に気づかい、怯えながら日々を過ごしている。そんな中で感情を押し殺して、歯を食いしばって生きてはいまいか。

 だが感情の抑圧、欲望を過度に自生する事は多くの心理的、身体的デメリットが存在する。いわゆる慢性疲労症候群線維筋痛症といった身体関連疾患を有する人たちは幼少期の環境に偏りがあると言われている。環境とは、ここでは家庭環境であり、具体的には両親の子供に対する接し方である。子供に対する接し方には干渉・保護つまり’関わりの強さ”と’関心”の軸がある。身体関連疾患を持つ人は母からの過保護・過干渉父からの無関心を受けて育った人が統計的に多いとされる。なぜそのような態度、接し方が子供に影響を与え、将来的な疾患のリスクを高めるのか、その鍵にはあるがままの自己認識、自己表現が。過保護、無関心な親の元で育った子供は自己の気持ちを明確に表現する機会が奪われる。そして機会が奪われ続けることで自分の気持ちを素直に語る意味の喪失が起こる。自己表現の機会と意味の喪失は認知に影響を与え、脳の構造にまで変化を及ぼしてしまう。具体的には自分の喜びや悲しみといった感情を認識できなくなってしまう。そのような状態をアレキシサイミア(無感情状態)という。治療抵抗性の鬱や慢性疼痛ではその心理的背景にアレキシサイミアの状態が存在するということが知られるようになった。感情を認識できない脳が無意識に求めた刺激、それが疼痛なのかもしれない。

 このような患者の治療にはマインドフルネスやアサーショントレーニングが有用とされている。マインドフルネスは自身の感覚や感情を丁寧に観察し、自己の認識を正常化させてくれる。そしてアサーショントレーニングとは自分の思いを適切に、適応的に表現するための訓練である。受容してもらえるという安心感の元、自分の感情を素直に認め、他者に表現すること、あるがままな自己の表現。精神疾患の治療だけでなく、人生を幸福に楽しく生きるためにきっと何より必要なことだと思う。

 

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