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025\\\ 蓮 の 華 を 敷 く

これは何十年も前のお話しです。「蓮の華を敷く」ということを教わりました。ぼくが「あやしい踊り」などをやっていた頃のことで、その時の踊りの師匠(踊りというよりも演劇の師匠だったかもしれませんが)からの教えでした。

その師匠は、この言葉を、誰にでも言っていたかどうかはわかりません。

その師匠は(今はどうしているかわかりませんが)、インドあたりに行っては、何やらあやしいものを吸ったり口の中に入れたりして、自己流の瞑想のようなことを海岸でしていたらしいようです。

「インドの海岸では、太陽と月が同時に海の上に見えるところがあるんだ。生きているうちにあれを見なければダメだね」と言ったり、さらに、「オレンジ色っていうのはね。いい色なんだよ!」とも言います。よくわかりませんでした。


日本でも、なにやら有名人や演劇の業界人との付き合いもあって、あやしいなりに迫力と納得性のある人だったのでした。

稽古の中で、ぼくに「教え」らしきことを言って来るのはよいのですが、とにかく言うことが抽象的で、何を言いたいのかがわからない。

具体的な踊り(身体の動かし)についてのことは一切言いませんし(その師匠も舞踊家ではありませんでしたし)、演劇についてのビジョンなども、これと言って明確なことは言いません。

それでいつも、ぼくの動きを見ながら、怖い眼でこちらを刺すような視線で、「意識というものをどう使っているのだ?」などのような、答えようのない質問をしてきます。こちらが答えられないでいると、「うーん・・。わかった・・」と言って、話しはそこで終わりになります。


そんなことを他のメンバーたちに話しをしても、ただ笑っているだけ。その師匠とは、仕事でも仕事以外でも何かと交流はあったのですが、とにかく毎回会っていても凄まじい緊張感で、こちらが何かおかしいことを言うとすぐに、いつもの怖い眼でこちらを見ながら「う~ん・・・」と言うだけです。

しかし、そんな師匠の言う言葉の中でひとつだけ、「蓮の華を敷きなさい」という言葉だけは、ずっと今でも覚えています。意味は不明です。自分で考えろとも言わない。本当のところ、ご本人もよくわかってはいなかったではないか?と察してはいますが・・・。

ぼくの踊り(身体の動き)を見ては、すぐに「蓮の華を敷きなさい」と言いますので、それでぼくは、「蓮の華はどこに敷くのですか?」と質問しますと、「観客のために敷くのだ」のようなことを言うので、よくわからないわけです。

蓮の葉っぱ4枚 クウキの神様

「敷く」というのだから、「相手の下に敷くのだろうな」と、ぼくは考えるのですが、答えは言ってくれません。さらに、「アンタはね、自分をかっこよく踊ろうとしているだけだろ」と言い、そう言っては最後に「蓮の華を敷きなさい」で、いつも締めくくります。

インドはいいよ。蓮の華を敷くんだよ。などと言うので、仏教的なことをベースに物事を考えているのかというと、そうでもなさそうなのです。お釈迦さまはお座りになっている下に蓮の華を敷いています。しかしどうやらそういう意味でもなさそうです。

いろいろ話しをつなぎ合わせながら聞いておりますと、「蓮の華を敷く」というのは、どうやら自分のためにではなく、人々のためにそうしなさいというようにも聞こえて来るのです。


もう、今のぼくは、「踊り」が主体ではなく、「呼吸法」が中心となっています。呼吸法には抽象的な曖昧さ無いのです。設計図を描くように繊細で、幾何学の図形のように具体的です。

「蓮の華を敷く」という教えは、今のぼくにとって、これほど具体的な言葉は無いと感じています。すべての呼吸法の技法を「蓮の華を敷く」にまとめています。この具体性さは、呼吸法そのものがそうさせてくれるのです。

ぼくは呼吸法を教えることが中心ではなく、呼吸法によって蓄えられたエネルギーを用いての「エネルギーヒーリング」が中心です。ぼくが相手の人にエネルギーを送るスタイルですが、『送るエネルギーを一度地面に敷いて』から、『敷いたエネルギーが地面で広がるように相手の人に伝わる』というスタイルです。

一般では(ヒーリングに一般があるかどうか?はしりませんが)、相手の人に向けて正面からエネルギーを浴びせるというスタイルが多いようです。ぼくは、吐いた呼吸を地面に敷くという、いかにもオリエンタルなイメージの呼吸でおこないます。


確かに「踊り」の側からみれば、とても抽象的な「蓮の華を敷く」です。しかし呼吸法の側からみる「蓮の華を敷く」は、それは「人々のために蓮の華を敷く」という具体的なビジョンとなったのでした。

その師匠にも(そのころからエネルギー送るということはやっていましたので)、何度かエネルギーヒーリングはしたことがありました。アタマや神経ばかり酷使している人なので、身体の方は弱そうに感じたからです。

それで、20分くらい、師匠にエネルギーヒーリングをいたしますと、いつもの怖い眼をこちらに向け、「う~~ん・・・」と言いながら、うなずいていたのを思い出します。

もしかして、これが師匠にとって、ぼくの「蓮の華を敷く」に感じることだったのかもしれません。

★呼 吸 法 ワ ン ダ ー ラ ン ド///★

つづく


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