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上手に伝えられたこと

私の職場には、還暦を過ぎた方で、感情が昂ると声が大きくなって話が長くなる方がいる。

まあ、この年代の方だとよくある話だし、もちろんそれはその方の特性なので、仕方がないと思いつつ、目の前で延々と1時間以上続くと、さすがに仕事に集中できず辛くなった。

この方は私が休む前からこんな感じで、周りの人達は本人にわからないように「うるさいよね」と言いながら、多分誰も本人にそのことを伝えないまま、今日まで来たんだと思う。

私も実際「うるさいな」と思っていたけど、休職前は別のチームだったから我慢してきたけど、復職後同じチームになり、時々、困ったなと思いながら今日まで過ごしてきた。

そして今朝もその方が私の目の前の方に丁寧に仕事を教えているのが伝わってきたけど、大きな声で熱のこもった教えが1時間以上それが続き、逆に私はエネルギーを吸い取られたような気持ちになって、ぐったりとしてしまった。その後、なかなか仕事に集中できなかった。

せっかく教えてるのに「うるさくて集中できないので静かにしてください」なんて言ったら、相手を怒らせてしまうかもしれないと思うと、なかなか言い出せなかった。

隣の先輩に「集中できないんですけど、どうしたらいいでしょう。」と何度も言ったけど、相手はこちらの様子を伺うこともなく、熱い教えは続いた。

先輩と話して、音に敏感なのは私の特性だから、相談するなら管理職じゃない?という話になったので、私はオフィス内の冷蔵庫に行ったついでに上司に「○○さんの声が大きくて仕事に集中できないので、仕事中に耳栓をしても良いでしょうか?」と尋ねた。

上司にとっては思いもよらない質問だったらしく、キョトンとして「え、いいけど。」と言った。過程はどうであれ、耳栓のOKをもらえたので私は安心した。

そしていったん終わったかと思われたけど、また再開し、うんざりしていたし、隣の先輩が私のわからないところを説明してくれているのに、それがかき消されるほどの声のトーンだったので、本当に困ってしまい、とうとう私は言った。

「お話中恐れ入りますが、○○さん(先輩の名前)の声が聞こえないので、もう少し声のボリュームを落としていただけますか。」と。

そうするとその方はすぐ声のボリュームを下げてくれた。また忘れて戻るかと思ったけれど、引き続き配慮してくれているようだった。

私がかなり配慮して、普段滅多に言わない「恐れ入りますが」という枕詞と理由を伝えたからなのか、また、タイミングも良かったのか、私が恐れていた「こっちは仕事教えてるのに何なんですか?!」逆ギレみたいな返事は全くなかった。

私は自分が上手に伝えられたこと、また相手がすんなり聞き入れてくれたことで、仕事に戻れた。

こんなことならもっと早くちゃんと伝えれば良かったとか、上司に相談するのも唐突だったな、など色んな後悔があったけれど、でもきっと職場の人たちは私が休んでいる間も「うるさいうるさい」と思うだけで、本人に伝えた人はいなかったのだろうなと思う。私も正直、空気読んでくれと思ったことは何度もあったから。

休職する前までの私なら、我慢するか、感情的になって「うるさいから静かにしてください!」と言っていたかもしれない。でも、リワークで「アサーション」のプログラムを受け、そういう方法もあるということを知った。ただ、知ってるのとできるのとは違うから、復職してそういう場面に遭遇した時にできるかなという不安は多かれ少なかれあった。

相手に伝えるまでにかなりの時間と勇気が要ったけど、自分が言えたことだけでなく、相手も理解してくれたことで自信にもなったし、相手に対する見方も少し変わった。

その後、同じような境遇になることはないので、相手が覚えていてくれてるかはわからないけれど、でも相手は、適切な言葉、タイミングで伝えればわかってくれる人だとわかったのは、私にとって良い出来事だった。

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