なぜいま、「人生100年時代」と言われるのか?

 人生100年時代。最近、広告などでよく使われるキーワードだが、なぜいま、「人生100年時代」なのか。

 国立社会保障・人口問題研究所は、2015(平成27)年国政調査の確定数が公表されたことを受けて、同年を出発点とする2065年までの全国将来人口推計を行っている(平成29年推計)。その中位推計によると、2065年時点の男性の平均寿命は84.95年(歳)、女性は91.35年(歳)となる。2065年になったとき、100歳以上に達する人は、女性の場合、5人に1人の割合になるという推計。女性だけを見れば人生100年時代と言えなくもないが、男性は全体の5.8%が100歳に到達するに過ぎない。

 英国の学者、リンダ・グラットン氏らが書いた「ライフ・シフト」で引用している研究では、2007年に生まれた日本の子どもは107歳まで生きる可能性が50%あるとされた。毎年0.2歳年齢が延び続けるという仮定。日本でも男性は2005年から10年間で約2年寿命が延びている(2005年78.56歳→2015年80.75歳)から不可能な数字とは言えないが、病気の克服などさらなる長寿化促進の要因が加わらないと難しいのではないか、というのが専門家の見方だ。

 人が100年生きるのが当たり前の世界になるかどうかは実は定かではないのだが、それでも「ライフ・シフト」がベストセラーになったのには理由がある。

 令和2年(2020年)版高齢社会白書によると、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.4%。高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」と呼ぶ。高齢化率が20%あるいは21%を超えた社会は「超高齢社会」と呼ばれ、日本は堂々たる超高齢社会だ。800万人いると言われる1947年から1949年にかけて生まれた「団塊の世代」がすべて75歳以上になる2025年には医療や介護の需要急増に追いつけないという「2025年問題」も生じるとされ、超高齢社会は課題が多いと見られていた。

 しかし、みんなが長寿になるということは悪いことばかりではないはずだ。長寿社会になって問題が起きるのは、これまでの社会のあり方が長寿社会にそぐわなくなっているからではないかーー。そうした考えから、超高齢社会の制度や習慣、ライフスタイルを長い時間をかけて作り直していこうという機運がでてきた。人生100年時代の本当の問題は、「人生50年時代(1947年の日本人の平均寿命は女性53.96歳、男性50.06歳=筆者注)の価値観とライフスタイルのまま人生90年(人生100年といってもいい)を生きる結果、定年退職後の人生設計がなく、長くなった人生を持て余している人は実態として少なくありません」(東大がつくった高齢社会の教科書)ということなのだ。

 人生100年時代の設計は実は「定年後の問題」ではない。60歳になってから、人生100年の設計を始めるのでは遅すぎるのだ。50歳でも遅い。むしろ、自分の将来を真剣に考え始める高校生ぐらいから、人生100年時代の設計を考えた方がいい。

 「人生100年時代の歩き方」は、主に、若い人たちに向けて発信していきたい。

 


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