医療ニーズの高い人は医療保険で訪問看護師やマッサージ師を呼ぼう!〜終活セミナー

 看護師に部屋を片付けてもらったり、自宅にマッサージ師を呼んだりすることも可能。医療保険で受けられるサービスは実は多いーー。葬儀社・ライフネット東京主催の終活セミナーが2月15日、東京・東五反田のライフネット東京事務所で開催され、柴垣医院(東京・自由が丘)在宅診療部ソーシャルワーカーの松本晶子さんが、「介護保険と医療保険の違いと使い方」を解説してくれた。知っているようで知らない保険の使い方をいろいろ聞いて、参加者は「そんな使い方があったのか〜」と驚きながら聞き入っていた。

ユーモアも織り交ぜながら語る松本さん

 「そもそも何で私たちは医療保険や介護保険を使うのでしょう?」と松本さんは問いかける。
 まずは基本的な解説をしてくれた。
・国が、国民の安心や生活の安定を支えてくれることを『福祉』といい、具体的には『社会保障制度』の中でそれは実現される。社会保障制度は国民の安心や生活の安定を支えるセーフティネット。
・社会保障制度は、社会保険、社会福祉、公的扶助、保健医療・公衆衛生からなり、人々の生活を生涯にわたって支える。
・医療保険や介護保険は「社会保険」。
 「それでは、何で私たちは公的な保険に入らなければいけないの?」。
 NHKの番組「チコちゃんに叱られる!」のチコちゃんのように松本さんは畳みかける。
 答えは「日本国憲法第25条があるから」。
 日本国憲法第25条は1項で「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と、生存権を規定している。
 「だから、私たち国民は上手に社会保険を利用して、健康で文化的な生活を、天国に行くまで続けましょう!」と松本さん。
 社会保険の中には医療保険(健康保険など)、介護保険のほかに、年金、雇用保険、労働災害保険があるが、「今回のテーマである介護保険と医療保険の違いについてお話しします」と松本さんは本題に入った。
・医療保険は、「病気やケガをした際の医療費の補填」が目的・医療保険は全日本国民の加入が義務づけられおり、生まれてから死ぬまでずっと使える。
・介護保険は「介護にかかる費用の補填」が目的。
・介護保険は、40歳以上の全日本国民に加入義務がある。
・介護保険の対象は65歳以上の方(第1号被保険者)と、40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第2号被保険者)。
 「介護保険のサービスは保険者が自治体なので、地域によって違うんですね。私がいま勤めている目黒区ではスポーツジムで高齢者が介護予防のトレーニングをしていますが、私が生まれ育った荒川区では区の会議室で体操をしています。荒川区はとてもいい区なんですが、介護関連のサービスに関しては少し寂しい」と笑いを誘う松本さん。
 40歳から64歳の人が介護保険が使える特定疾病は以下の16種類だ。
 末期がん/関節リウマチ/筋萎縮性側索硬化症(ALS)/後縦靭帯骨化症/骨折を伴う骨粗しょう症/初老期における認知症/パーキンソン病関連疾患/脊髄小脳変性症(SCD)/脊柱管狭窄症/早老症/多系統萎縮症(MSA)/糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症/脳血管疾患/閉塞性動脈硬化症/慢性閉塞性肺疾患(COPD)/両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
 「例えば末期がんは、どのくらいだったら末期か、というのは難しいですが、上記の対象になるかどうかは医師の判断次第です。要介護認定なども医師の意見書が重視されるので、本人の病状や生活をよく知っている専門医やかかりつけ医とふだんから懇意にしておくことが大事」(松本さん)。
 「どんな介護サービスを受けるかは、要介護者や家族が自分で決めなければなりません。ケアマネジャーが提案しても、そのプランを選ぶかどうかはすべて要介護者か家族が決める。医療では医師に言われたらそのまま受け入れることが多いですが、介護は自分たちで決めます」と松本さん。
 しかし、「最近は、終末期の医療では、どこを死に場所にするか、どんな治療をするかは医者の説明を聞いた上で、患者や家族が決めることが当たり前になりつつあります。ですから患者(要介護者)や家族は、どんな治療があるのか、どこで療養するかなど、必要な知識と情報はしっかりと得ておかないと、満足できる選択ができない時代になってきました」と松本さんは注意を促す。
 「家族に介護や医療について詳しいキーパーソンがいるか、力のあるケアマネジャーや医師に出会えるかどうかによって、介護や医療はまったく変わってきます。そして、どんな選択をするにしても、決めたことについては患者や家族が覚悟を持って取り組む必要があります」ときっぱり。
 団塊の世代のすべてが75歳以上になる2025年までに、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる体制(地域包括ケアシステム)を構築することが求められており、その図の中に地域での医療、介護をサポートする多職種が示されている。それらがどんなサービスを提供してくれるのか、勉強しておかなければいけない。
 それでは在宅サービスで医療保険と介護保険はどんな関係になるのだろうか。 松本さんは「介護保険の受給者、介護保険が優先する」という大原則があることを説明。このため、「医療依存度が高い人の中には、介護保険を申請しない人も出てきている」という。
 訪問看護で医療保険を使える人は以下のような人だ。
・65歳以上で、医師が訪問看護の必要性を承認し、かつ要支援・要介護に該当しない方。
・40歳以上65歳未満で、医師が訪問看護の必要性を承認。かつ16の特定疾病の対象ではない方。対象であっても、要支援・要介護に該当しない方。
・40歳未満で、医師が訪問看護の必要性を承認した方。
・ただし、要支援。要介護の認定を受けた方でも、厚生労働大臣の定める20疾病(末期がんや多発性硬化症、重症筋無力症など)に該当する場合は医療保険で医療保険で訪問看護が利用できる。
・また、終末期や退院直後など医師が週4日以上の訪問看護が必要と判断した場合に発行される特別訪問看護指示書が出た場合も、医療保険適用の対象になる。
 松本さんは、「看護師は、在宅ケアで、できる仕事の範囲が広い。ご飯を作る以外の仕事はほぼできます」という。「看護師は『療養上の世話』ができるので、介護の仕事がほぼできる。医師が指示書に環境整備、清潔保持、身体管理と書いてくれれば、トイレに連れて行ったり、部屋を掃除したりすることもできます」。

質問タイムも盛り上がった。

 以下、松本さんが質問に答えてくれた。
Q 訪問看護は訪問医でセットで仕事をすると思っていたのですが、通院している人の自宅での様子を見守りたいと医師が思ったら、訪問看護師を派遣することもできるのですか。
松本 お医者さんは、訪問医でもクリニックの医者でもだれでもいいんです。通院している患者さんの自宅での様子を見たいから、毎日、看護師さんに行ってもらいとお医者さんが思ったら、訪問看護ステーションに頼んでくれる。
 お医者さんが、訪問の依頼ができるのは、看護師のほか、理学療法士、言語聴覚士、作業療法士、薬局、歯科医、マッサージ師、鍼灸師など。
 リハビリは、今はがん患者に対しては、死ぬま実施します。例えば、食べる訓練。死ぬ数時間前までアイスを食べさせたりとかを、言語聴覚士が行ったりします。
 マッサージをしてもらいたければ、医療保険でマッサージ師も自宅に呼べます。

Q  看護師さんに掃除をさせるというのは特殊な感じがします。それは療養に役に立つのですか?
松本 例えば、腹膜透析だと、猫ちゃんがいたりとかすると、やれないんです。部屋が汚れてたら駄目なんです。看護師が、どこの位置にどの機械をどのように置くとか、透析をするエリアをどういうふうに作ったらいいのかが必要なので、部屋の掃除にも行きます。

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