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チウ・ダンが語るペンホルダーの利点

チウ・ダン選手の基本情報

チウ・ダン(邱党,)選手はドイツ生まれの代表メンバーとして、初のペンホルダーの選手です。

両親ともに中国生まれの卓球選手で、ドイツのブンデスリーガでプレーした。それもあって、一家は長い間ドイツに在住していた。兄の邱亮も卓球をしている。自然な流れで、ダン選手も6歳から卓球を始めた。父親は中国の理論と技術を息子たちに与えた。

卓球一家に育ったダン選手にとって、常に卓球が生活の中心だった。小学生時代からブンデスリーガの下部チームでプレーしていて、高校卒業の17歳頃にプロになることを決意した。

1996年生まれのダン選手は2017年、21歳の時に、家を出てブンデスリーガのデュッセルドルフへ拠点を移し、代表チームの練習にも加わった。これが彼にとって大きな転機となった。実家にいる時と違い、私生活も全て自分で管理しなければならない。プロ卓球選手としての意識が芽生えた。その4年後、2021年頃から国際大会でも活躍する選手となった。

本記事では、そんなチウ・ダン選手がなぜペンホルダーラケットを選択したのか、その理由に迫る。

ペンホルダーの理由

ダン選手が6才で卓球を始めた当初は、父親の勧めでシェークハンドのラケットを使用していた。一般的に、シェークハンドはペンホルダーと比べて、バックハンドが打ち易く、優位であると言われる。ダン選手の父親は現役時代ペンホルダーを使用していたが、やはりシェークハンドが有利だと考えたのだろう。しかし、ダン選手には当てはまらなかった。

約6カ月経つと、シェークハンドラケットでのバックハンドが苦手だと気付いた。ダン選手の手と比べて持ち手の部分が長く、手首を上手く曲げることが出来なかった。

「それなら中国式ペンホルダーを試してみたら、と父が言いました。冗談のつもりだったそうですが、試してみるべきだと思いました。」とダン選手は語る。

当時、中国のワンハオ(王皓)選手がペンホルダーラケットの裏面打法を完成させて、バックハンドドライブを打ちまくり世界を驚かせた。これにより、シェークと同じ様に中国式ペンでもバックハンドを振ることが出来ると証明された。

もはやペンホルダーに弱点は無いと考えたダン選手は、その道へ進むことを決めた。その後は王皓選手をロールモデルに、YouTubeでペンホルダーグリップを研究したそうだ。

ペンホルダーの利点

現在のペンホルダーは上述の通り、フォアハンドもバックハンドも振ることが出来て、シェークハンドグリップに負けていない。ペンホルダーグリップの利点について、ダン選手は以下のように述べる。

「一番の利点はラケットの角度が他の選手と異なること。対戦相手が慣れるまで苦労している事が分かる。ペンホルダーの選手は少ないから、一緒に練習する機会が限られている事が理由だ。初めて顔を合わせた選手との試合ではこちらにアドバンテージがある。相手はこちらの返球、回転、技術に対応しないといけないから。」

とはいえ、トップ選手は経験豊富だから、このアドバンテージはわずかだそうだ。

もう1つの利点は手首を柔軟に扱えること。サーブやレシーブといった台上での技術はもちろん、ラリーでも大きな強みとなる。例えばマリン選手の場合、彼はワンハオ選手と比べるとより古典的なペンホルダー選手だけど、台上技術、サーブ、レシーブ、3球目攻撃の全てにおいて非常に優れている。

3つ目の利点はフォアハンドを打つ時に、ボールへパワーを伝えやすいこと。ペンホルダーはラケット裏側の中央付近に中指・薬指・小指を添える。そのため、フォアハンド打球時の感触をダイレクトに得られる。このおかげで、打球に威力が出ていると感じているそうだ。

ちなみに、卓球王国2023年2月号では、ダン選手の技術を父親である邱建新が解説している。

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ペンホルダーへのアドバイス

ペンホルダーの道に進んだダン選手でしたが、ドイツではほとんどの選手がシェークハンドだったため、身近に参考に出来る人はいませんでした。父親の邱建新は現役時代ペンホルダーでしたが、表ソフト速攻型であり、現代風のドライブ型を志すダン選手とはプレースタイルが異なります。

ダン選手は特にペンホルダーラケットの持ち方を、YouTubeなどで研究したそうだ。「マリン選手、ワンハオ選手、ユスンミン選手、シュシン選手、どの選手もグリップが異なっていて、初めは戸惑いました。しかしこれは、ユニークさとして強みになる可能性があります。」と彼は言う。

特にワンハオ選手のプレースタイルを参考にしていますが、香港の黄鎮廷( WONG Chun Ting)選手もバックハンドが上手く、学びが多いそうだ。

また、これは元も子もないが、ペンホルダーの可能性を信じて練習するしかないとも述べている。「ペンホルダーでも活躍した選手はたくさんいます。ペンホルダーのアドバンテージに目を向けて、自分のプレースタイルを作るべきです。若いうちは試合経験よりも、練習量を多くしてフィジカルとテクニックを強化する事が必要。中長期で実力をつけることを目指すべきだ。」とのことだ。

ペンホルダー選手からアドバイスを求められることは多く、「ペンホルダーの人気が上昇していて嬉しい」と語った。

父親について

ダン選手の父親である邱建新(チウジャンシン、Qiu Jianxin ) さんは1965年生まれ。中国代表チームに招集された経験もあり、1989年以降はドイツのブンデスリーガでプレーした。上述の通り、ペンホルダー表ソフト速攻型で、サーブを得意とした。現役引退後は、ドイツでコーチ業に就いた。

ジャンシンさんは日本との関わりも深く、青森山田高校で故吉田安夫先生と共に選手を指導していたことがある。そのほか、日本代表チームのコーチや、水谷隼選手や石川佳純選手のプライベートコーチを務めたこともある。

ダン選手は現在ブンデスリーガに所属し、練習も主にそちらで行っている。しかし現在も、父親からアドバイスを貰ったり、練習を見てもらうこともあるそうだ。「子供の頃から多くの事を学ばせてもらった」とダン選手は語っている。

予想外の活躍と今後の期待

ダン選手の一番の目標は馬龍選手の様に、どの選手が相手でも常に勝利することが出来る選手になることだそうだ。彼は馬龍選手の強さについてこう分析している。

「フィジカルが強く、小さなフォームでボールをさばく。返球の精度が高く、こちらがミスをしてしまう。だからどの選手にも勝てる。フォアハンドの印象が強いかもしれないけど、1ゲームの中でフォアドライブによる点数はそれほど多くない。」

また、世界ランクもあまり気にしておらず、きちんとした実力を付けることを目標とし、やみくもに国際大会に出場することは控えているとのこと。

ドイツ卓球協会の代表を務めるクラウディアさんは、この3~5年のダン選手の活躍に驚いたそうだ。世界ランクTop10入りは予想外だったと述べた。ダン選手ほど卓球に関して細かいところまでケアしている選手は見たことがないそうだ。独創的なペンホルダースタイルということもあり、ドイツ代表の次世代のスター選手としての活躍を期待しているとのこと。

同じくヨーロッパ選手でペンホルダーラケットを使用するフェリックス・ルブラン選手と共に、今後も卓球の可能性を探求していってくれそうだ。

チウ・ダンの使用用具

以下、チウ・ダン選手の使用用具です。 彼が契約中のバタフライの公式サイトを参考。 現在は別のラケット・ラバーを使用している可能性があります。
PRを含みます。

▼ラケット
バタフライ特注中国式ペン スーパーALC
▼裏ソフトラバー1
バタフライ『ディグニクス09C』

▼裏ソフトラバー2
バタフライ『ディグニクス05』

参考資料

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