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水滸噺 20年3月(下),4月(上)【変貌黒騎兵】

あらすじ
黒騎兵隊長 指揮権を剥奪され
黒騎兵幻王 選ぶ色を剥奪され
九紋竜史進 最早打楽器と化し
宋国禁軍将 初めての荒馬調練

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝,楊令伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

マイペースで、これからもお付き合いのほどよろしくお願いします!

それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊…春がやってきて浮かれる奴もチラホラ。ひときわ澄んだいい音がした時は、その方角に礼をしよう。

騎馬隊

騎馬隊…林冲家懲罰ダーツにて、とうとう絶対に当ててはいけない場所に当ててしまった。

人物
林冲(りんちゅう)…勘弁してくれ!張藍!
索超(さくちょう)…食い物見たら、すぐ口に入れるよな。
扈三娘(こさんじょう)…まだ野生の犬や馬の方がお行儀いいですよ。
馬麟(ばりん)…もう鄆城のスイーツ屋では許してもらえなくなったか。
郁保四(いくほうし)…とっておきの旗を依頼されました…

1.
林冲「さっきから指揮にキレがないぞ、索超」
索超「すまん林冲殿、花粉症なものでな」
林「花粉症?」
索「花粉が目や鼻に打撃を与える厄介な病だ」
林「花粉ごときに負けるな」
索「善処はしているが」
林「花粉に負けない調練をするぞ、索超」
索「勘弁してくれ」
林「ならば指揮に支障をきたすな」

馬麟「大丈夫か、索超」
索「涙と鼻水が止まらん…」
扈三娘「梁山泊は森が豊かですからね」
索「林の旗で鼻をかむわけにもいかん」
郁保四「お察しします、索超殿」
索「何か手はないものか…」
馬「仮面をつけてみるのは?」
索「ふむ」
扈「鼻をかむ巾は…」
郁「いっそ鼻をかめる旗にしましょう」

索「…」
林「おう、動きを取り戻したな、索超」
索「〜♪」
青騎兵「!」
索「♪〜」
青「!」
馬「鼻をかむ音で指揮をするとは」
扈「索超殿の耳が心配です」
索「!」
馬「くしゃみは突撃か」
扈「不意に出たら危ういのでは?」
索「〜♪〜」
郁「旗でかむときは撤退ですね」
林「旗はよく洗えよ」

林冲…あいつが無防備にならんか?
索超…鼻をかみすぎて痛くなってきた。
馬麟…鄆城で鼻セレブを仕入れてきた。
扈三娘…アレルギーとは無縁。
郁保四…旗の素材について助言した。

2.
張藍「…」
郁保四「…」
林冲「…」

索超「これは何事だ、馬麟」
馬麟「家庭内の度重なる不祥事で、騎馬隊の指揮権が張藍殿に移譲されたらしい」
扈三娘「聚義庁でも満場一致だったそうです」
索「林冲殿は副官か?」
扈「兵卒です」
馬「そこまで怒らせたのか」
扈「どこまで指揮できるのでしょう」

郁「!」

索「鮮やかな張の旗だな」
馬「林の旗よりも頼もしく見えるのはなぜだろう」

張「突撃!」
騎兵「!!」
張「反転!」
兵「!!」

索「おお!最初から黒騎兵を手足のように!」
扈「林冲殿直轄の兵でしたら、張藍には死んでも逆らえないでしょうね」
馬「百里風も巧みに乗りこなしている」

張「撹乱!」
兵「!」
林「…!」
張「林冲!」
林「」

索「林冲殿が一呼吸遅れをとったぞ」
扈「兵卒に向いてないですからね、林冲殿」
馬「副官にはもっと向いてないからな」

張「密集!」
兵「!」
林「……!」
張「遅い!林冲!」
林「すまぬ、張藍…」
張「上官にその言葉はなんだ!」
林「」

張藍…豹子頭を御せるなら、百里風も黒騎兵も朝飯前。
林冲…叱責されまくった。騎馬隊隊長以外の適性が無さすぎる。
郁保四…林冲と比べ物にならないくらい緊張感があったという。

索超…もう張藍殿でいいんじゃないか?
扈三娘…林冲殿はどうしましょう?
馬麟…お役御免になりかねんな。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…なんだかんだで所属したら、潜入仕事上、芸達者になっている軍だとか。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…稽古風景を覗く者は何人たりとも許さない。
劉唐(りゅうとう)…この面子で新しい手品をやるのは一苦労だ。
楊雄(ようゆう)…菓子と酒の売り子ならできるぞ。
孔亮(こうりょう)…人前で芸ができる奴の気持ちが分からん。
樊瑞(はんずい)…ついに完成した…
鄧飛(とうひ)…鎖鎌の芸はまいど命がけ。相方の楊林が。
王英(おうえい)…得意の下ネタは遊撃隊なら爆笑必至だが、この軍では…
楊林(ようりん)…手先も器用で、意外に口も達者。軍を辞めても多分食っていける。

3.
劉唐「第四回致死軍飛竜軍対抗一発芸選手権を行う」
公孫勝「…」
楊雄「今年もやって来た」
孔亮「わりに結構な頻度でやってるよな」
樊瑞「ツボるとしつこいところあるんだよな、公孫勝殿」
劉「一人目!」
兵「…」
公「…」
兵「!」
公「…」
樊「この程度の軽業、李袞なら目をつぶってもできた」

王英「致死軍は一人目から樊瑞を使ってきたか…」
楊林「斜め一点倒立とは恐れ入ったよ」
劉「お前たち」
王「任せろ劉唐」
林「俺たちも仕上げてある」
劉「二人目!」
林「…」

雄(ここで楊林が)
孔(今回は何でくる?)

林「…」

樊(切り絵か)
雄(手先が器用だからな)

林「!」

孔「火眼狻猊か」

孔「王英がスベったか」
雄「盛りのついた虎なのに、芸に思いきりがなかった」
樊「最低点だ」

公「…」

劉(公孫勝殿が)
林(一体何を)

公「おい、ウスノロ」

劉(林冲殿だ)
林(相手にしない公孫勝殿が見える…)

公「俺を馬鹿にしたな!」

雄(林冲殿を演じながら林冲殿を馬鹿にするか)
孔(高度な)

公孫勝…林冲を演じながら、分かるものには公孫勝のセリフが聞こえてくる一人芝居を熱演。
楊雄…特に持ちネタはない。
孔亮…顔が良いから歌って踊れたら最高なんだけど、リズム感が致命的。
樊瑞…ついに斜め一点倒立を会得。会得するまでの道のりは、過去這い上がって来た崖よりも急峻だった。

劉唐…手品のパターンは公孫勝に読まれ尽くされてるから、裏をかくのが大変。
楊林…手先が器用。潜入任務の時に芸人として荒稼ぎできるほど。
王英…最低点の罰の一環で、虎の格好をして一月任務を課せられた。

本隊 

本隊…模擬戦の勝敗表の結果は月末にまとめられて掲示される。一番負けてたら、罰走。

人物
関勝(かんしょう)…青龍偃月刀は関羽の物と同じ重さがある。
呼延灼(こえんしゃく)…鞭(べん)と鞭(むち)を使い分ける。飴は?
穆弘(ぼくこう)…片目を失い、片膝を負傷した。次は片手か?
張清(ちょうせい)…プロポーズが成功した時、魂が身体から飛び出すのが分かったという。
宋万(そうまん)…林冲との稽古で、やっと一合渡り合えるようになった。
杜遷(とせん)…公孫勝との稽古で、より粘り強くなった。
焦挺(しょうてい)…泰山相撲大会の噂をキャッチした。出てみたいけど、叛徒だからなぁ…
童威(どうい)…李俊の無茶ぶりは童猛と交代制でしのぐ。
李袞(りこん)…投げやすい槍を李雲と湯隆に設計してもらった。
韓滔(かんとう)…棗の棒の細工品が結構売れる。
彭玘(ほうき)…妻の命日は、呼延灼と韓滔と盛大に飲み明かした後で、ひっそり独りで飲むのが流儀。
丁得孫(ていとくそん)…適度に品が悪い所が瓊英にとって新鮮だったという。

4.
呼延灼「…」
関勝「呼延灼、その鞭は?」
呼「鞭ではない鞭だ」
関「ややこしいぞ」
呼「いかん。むちだぞ皆」
関「双鞭ではなく双鞭とは」
呼「よくしならせるのが、良い調練になるのだ」
関「何か技はないか?」
呼「…見せてやろう」
関「蠅が…」
呼「!」
関「おお!」
呼「これくらいは容易い」

呼「!」
関「俺の剣を!」
呼「まあこんなものか」
関「見事だ、呼延灼」
呼「戦では使えんがな」

史進「逃げろ!乱雲!」
扈三娘「」

呼「…」
関「…」
呼「!」
史「!?」
扈「」
呼「…使うか、扈三娘?」
扈「」
史「」
扈「!」
史「!?」
関「見事な…」
呼「なぜこうも澄んだ音が出るのだ…」

呼延灼…鞭で戦に出るのも検討したが、将を討てなかったものでな。
関勝…この漫画の呼延灼は鞭を使うのか。
扈三娘…だんだん史進が物欲しそうになってきたのが余計腹立つ。

史進…全身打楽器みたいないい音が出る。特にお尻。

5.
丁得孫「おう、瓊英殿!」
瓊英「あら、丁得孫殿。ご無沙汰しております」
張清「失せろ、丁得孫」
丁「誰のおかげで連絡先が分かったと思ってやがる、張清殿」
張「知ったことか」
丁「うちの頭には勿体ねえ嫁さんだよ」
瓊「恐縮です」
丁「俺になんか恐縮しないでくれ、照れちまうよ」
瓊「なぜ?」

関勝「おや、夫婦水入らずではないか」
張「この邪魔なあばたの虎をどっか連れてってくれ、関勝」
丁「鈍臭い張清殿の話を聞きたくないですか、関勝殿?」
関「ほう」
張「!」
瓊「!」
関「!?」
丁「さすが瓊英殿」
関「…今、礫で礫を遮らなかったか?」
瓊「さて?」
張「頼むから帰れ!丁得孫!」

張清…ここまで礫が上達していたとは…
瓊英…龔旺殿もお元気ですかね?
丁得孫…まあなんだかんだでお似合いだよ。からかってやるけどな。
関勝…丁得孫も抜け目ないところがあるんだな。

遊撃隊

遊撃隊…もはや脱いでも脱がなくても、誰からも何も言われなくなって久しい。

人物
史進(ししん)…脱いでも先方がノーリアクションだった時に、そそくさと着物を着る姿ほど情けない姿はない。
杜興(とこう)…史進の竜の鳴き声が聞こえんか?
陳達(ちんたつ)…俺たち少華山の三人は、涙すら枯れてるぜ?
施恩(しおん)…武松が来た時に、体術を習って悶絶。
穆春(ぼくしゅん)…武松が来た時に、また棒をへし折られた。
鄒淵(すうえん)出林竜(しゅつりんりゅう)にはよく聞こえるぜ、爺。

6.
鄒淵「双頭山と合同調練とは珍しいな」
史進「鮑旭が打診したという」
杜興「鮑旭が?」
陳達「子午山で一緒だったからか?」
史「そんなところではないか?」

董平「よう」
鮑旭「待っていたぞ、史進!」
史(妙にテンションが高いな)
鮑「今宵の調練が終わった後で、宴があるからな!」
史「おう…」

史「そんなに酒を注ぐな、鮑旭」
鮑「久しぶりだから良いではないか!」
陳(らしくねえな)
杜(お前たち)
鄒(どうした、爺?)
杜(鮑旭の密書が)
陳(読んでくれ)
杜(…)
鄒(乗るか?)
杜(鮑旭たっての依頼だそうだ)
陳(なら仕方ねえ)
鄒(全部鮑旭のせいにしよう)
史「もう勘弁しろ、鮑旭」
鮑「飲め!」

史「」
鮑「…ご協力感謝します、皆さん」
陳(史進を酔い潰すとは)
杜(伊達に喪門神を名乗っとらんわい)
董「なにを始めるのだ、鮑旭?」
鮑「杜興殿、棒はありませんか?」
杜「細くてよくしなる棒ならあるが」
鮑「最高です!」
鄒(いつもの棒か)
鮑「いざ!」
史「!?」
董「何と澄んだ音だ、史進」

杜興…心が洗われる音だ。
陳達…そんだけ穢されてんだよ、俺らは。
鄒淵…もはや打楽器だな、史進。

董平…この音をドラムに取り入れられないか…
鮑旭…声を出すな、史進!

史進…助けろ!お前たち!

水軍

水軍…とうとう梁山湖の主との縄張り争いも佳境を迎えつつある。

人物
李俊(りしゅん)…兵の調練用に、大きな生簀を作ろうと画策中。
張順(ちょうじゅん)…湯の用意がないと、もう潜れねえな。
阮小七(げんしょうしち)…俺たちの村の言い伝えがなかったかな…
童猛(どうもう)…湖畔を覗く目の精度は水軍で一番。
項充(こうじゅう)…礫にもトライしてみたが、ちょっと勝手が違う。
阮小二(げんしょうじ)…おふくろが何か残してないかな、小七。

7.
李俊「ついに梁山湖の主の居場所を突き止めたか」
阮小二「もう野郎の側近は全員締めちまったからな」
趙林「水軍で美味しくいただきました」
張順「だがそれと引き換えに、梁山湖の水温低下が著しい」
張敬「俺と叔父貴でも半刻もてば良い方です」
阮小七「無理強いはできん」
項充「どうする李俊殿」

李「俺たちは争う気などなかったのだが」
二「奴らは争う気しかなかったからな」
七「手段を選ばねえ野郎どもだ」
童猛「貝の連中も難儀してる」
順「俺の部下もだ」
李「主と戦をするしかないか…」
童「例の槍魚は、阮小二?」
二「バッチリだ」
七「この策がハマればいいが…」
項「下手な絵だな」

李「だが、主はどうやって水温を下げているのだ?」
二「それだけは分からん」
李「主を殺したら、湖が氷漬けにならないだろうな」
七「なりかねん」
項「それはそれで梁山泊の守りになるかも知れんが」
童「梁山湖の生き物が絶滅するな」
順「それは俺らも本意ではない」
敬「説得は無理でしょうか」

李俊…共存はできないか?
阮小二…主次第だろうな。
阮小七…奴も本意ではないだろう。
張順…覚悟を決めて潜るか。
項充…一体どんな奴なんだ…
童猛…この水温は魚も貝も苦しかろう。
張敬…魚語を学ばないか、趙林?
趙林…俺は最近舟の声が分かるようになってきたよ。

二竜山 

二竜山…官軍との小競り合いはよくある。でも楊志や秦明が強すぎて、文字通りの小競り合いにしかならないから、レベルアップはあまり期待できない。

人物
楊志(ようし)…麓の官軍を撃退するのも飽きたな。
秦明(しんめい)…山の罠づくり選手権を解珍と共に開催予定。
解珍(かいちん)…獣を捕らえる罠づくりには定評がある。林冲が引っかかったことがあるのは、絶対に内緒だぞ。
郝思文(かくしぶん)…関勝たちとの雄州時代の戦はバリエーションに富んでいた。
石秀(せきしゅう)…実家が肉屋だったから、肉料理の腕には自信があったが…
周通(しゅうとう)…楊志にフライド曹正の摂取を禁止された。
曹正(そうせい)…石秀との交代で、急遽二竜山の副官を無茶ぶりされた。桃花山の調練をかろうじて突破。
蔣敬(しょうけい)…武芸ができないコンプレックスが未だにぬぐえない。
李立(りりつ)…剣はそこそこ使えるが、めったに振り回さない。そういうもんだろ?
黄信(こうしん)…あだなは鎮三山(ちんさんざん)。鎮二山でも、鎮四山でも絶対に、嫌。絶対に、鎮三山
燕順(えんじゅん)…オフの時は気ままに清風山を散歩している。
鄭天寿(ていてんじゅ)…オフの時は銀細工を作っている。湯隆の弟子が習いに来た。
郭盛(かくせい)…楊令とのハンドシグナルやアイコンタクトは多岐にわたる。
楊春(ようしゅん)…少華山が懐かしくなることがある。また行きたいな。
鄒潤(すうじゅん)…鄒淵と一緒に、登雲山という山をねぐらにしていた。
龔旺(きょうおう)…槍を投げるのが得意。調練は投げやりにならなくなってきた。

8.
曹正「副官になったはいいが」
楊志「曹正は足が遅いな」
曹「ぽっちゃり系だからな」
周通「デブと言え」
楊「機敏に動けんと、二竜山の副官は務まらんぞ」
曹「忌々しいが、石秀の野郎のままで良かったんじゃねえのか?」
楊「ソーセージ作りしかできないお前のセカンドキャリアを模索しているのだ」

石秀「ソーセージ作りなど…」
楊令「石秀殿」
石「美味かっただろう、楊令?」
令「星一つと半です」
石「なに!」
令「香辛料が効きすぎです」
石「楊令の舌が子どもだからだ」
済仁美「石秀殿」
石「これは、済仁美殿」
済「食品を作る者ならば、誰にとっても美味しい食品を作らなくては」
石「!」

曹「おい、石秀」
石「俺もお前に用事がある、曹正」
曹「…減量のやり方を教えてくれ」
石「…俺も、どのご家庭の食卓も豊かにするソーセージの作り方を教えてくれ」
曹「楊令に叱られたか…」
石「お前も楊志殿に何か言われたな」
曹「…」
石「…」
曹「仕方ねえな」
石「公孫勝をつけよう、曹正」

曹正…何という速さと体力だ、白嵐。
石秀…奥が深いな、ソーセージ作りも。

楊志…曹正の具足がパンパンだ。
周通…有事が起きても曹正で大丈夫なんですかい?

楊令…辛いのは苦手です。
済仁美…もっと太くて大きくないと。…ソーセージの話ですよ?

9.
龔旺「次!」
兵「!」
龔「次!」
兵「!」
龔「次!」
兵「!」
秦明「龔旺、それは?」
龔「飛槍の鍛錬です」
秦「ほう、的の中心に当たっているな」
龔「張清殿と丁得孫と一緒に飛び道具を鍛錬してました」
秦「張清は礫で、丁得孫は飛叉と聞いたことがあるな」
龔「やつの飛叉は最後の切り札です」

秦「確かに、一本しかない武器を最後に投げるのだよな」
龔「剣はありますけどね」
秦「私も飛槍を試していいか」
龔「…お手並み拝見といきましょう」
秦「!!」
龔「…的は外れましたが、ずいぶん遠くまで行きましたな」
秦「いかん」
龔「どこに行ったのかな?」
秦「むこうの木の辺りではないか」

龔「おお…」
秦「刺さっているな」
龔「深々と刺さりましたな」
秦「抜けるか、龔旺?」
龔「容易くは抜けそうにないです」
秦「どれ…」
龔「秦明殿?」
秦「!」
龔「…すごい力だ」
秦「伊達に霹靂火とあだ名されていないぞ、龔旺」
龔「お見それしました」
秦「的に当てる技を教えてくれ、龔旺」

龔旺…何に使うんですか?
秦明…解珍のスケベ爺を懲らしめるのに使えそうだ。

聚義庁

聚義庁…嘘をつくのが下手くそな連中がそろっている。正直者揃いだが、全員叛徒。

人物
晁蓋(ちょうがい)…嘘は顔に出る。
宋江(そうこう)…信じられないことでさえも全部本気で言っている。
盧俊義(ろしゅんぎ)…嘘を見破るのが大得意。でないと闇塩の元締めなどできん。
呉用(ごよう)…嘘をついたことがない。つくときはさぞかし下手くそな嘘だろう。
柴進(さいしん)…嘘をついた時は、扇子で口元を隠す癖を宣賛に見抜かれた。
阮小五(げんしょうご)…しれっと嘘をつける。それを後でフォローして誠にするから大したもんだ。
宣賛(せんさん)…嘘をついた際、微妙な覆面の動きを金翠蓮に見破られた。

10.
晁蓋「おい、呉用」
呉用「なにか?」
晁「お前の仕事は全て私が終わらせておいたぞ!」
阮小五(拙い嘘だ…)
呉「奇遇ですな」
晁「?」
呉「私も晁蓋殿の調練を既に終わらせましたよ」
阮(さらに拙い嘘を…)
晁「なに!」
阮「…」
晁「なぜ黙っていた阮小五!」
呉「…」
阮「…晁蓋殿を休ませたく」

呉「晁蓋殿」
晁「…」
呉「私の仕事はどれほど終わっているのですか?」
晁「…本隊の補給場所に関する決済」
呉「…」
晁「裴宣から届いた、鄆城の商人の掟に関する決済」
阮(…おや?)
晁「湯隆が仕入れる鉄の補給計画に関する決済に…」
呉「嘘ですよね、晁蓋殿」
晁「梁山泊頭領が嘘をつくか!」

呉(…決済済みの書類が山ほど)
阮(気づかなかったのですか、呉用殿)
晁「たまには私だって調練以外の仕事をしないとな」
呉「…」
阮「…」
晁「そうか、調練はもう済んでいるのか」
呉「…はい」
晁「しかしずいぶん早いな、呉用」
呉「…詳細は阮小五が」
阮「!」
晁「おう、聞かせてくれ」
阮「」

晁蓋…さすが林冲だ。
呉用…しまった…今日はエイプリルフールだとばかり思っていたから…
阮小五…たまたま飛び込んできた林冲に丸投げできて九死に一生。覚えてろよ、呉用殿。

11.
宋江「梁山泊職人芸術展を済州で開催しているそうだな」
呉用「帝も来たそうです」
盧俊義「殺せなかったのか?」
宋「貸切予約をされた上に、物販を全て購入する上客を殺すわけにはいかん」
呉「洪清と高廉直々の警護体制だったので、公孫勝もとてもじゃなかったと」
盧「ならば我らも見に行こうか」

李逵「行こうぜ!宋江様!」
武松「…」
燕青「…」
盧「久しいな、燕青」
宋「頼もしい護衛だ」

宋「李雲の木の玩具は?」
呉「釘を使わない技の髄を尽くしたと」
盧「湯隆の剣も鎧も美しいな」
宋「鉄の船?」
呉「阮小二が図面を引き、湯隆の弟子が作成したと」
盧「いつかそうなるかもしれんな」

宋「蕭譲の帝の御宸筆に金大堅の玉璽まで飾ってあるぞ」
盧「…これはマズイのではないか?」
呉「帝は大笑いしていたそうですが、洪清と高廉が顔色を変えたと…」
李「なあ、呉用」
呉「どうした?」
李「俺の石に紙が貼ってあるんだけど、なにが書いてあるんだ?」
呉「!?」
宋「どうした、呉用?」

宋江…この額面は、まさか…
盧俊義…陶宗旺の石積みにも貼ってあるぞ…
呉用…これで当面の兵糧は賄えます。

武松…焼物が完売して嬉しい。
李逵…お前に言われて砕いただけの石だぜ、燕青?
燕青…李逵の石を展示する策がここまでハマるとは…

公孫勝…物販売り場店員として潜入。李師師もいたぞ。

徽宗…李逵の石を見て花石綱予算の半分を注ぎ込んだ。
洪清…袁明に一部始終を報告したら、袁明まで行きたがって困った。
高廉…公孫勝に接客してもらって少し嬉しかった。

李雲…こんな仕事も悪くねえな。
湯隆…いい息抜きになったぞ。
阮小二…趙林と一緒に図面を引くのが楽しかった。
蕭譲…蔡京と高俅の出展はさすがに自粛したが、ストックはある。
金大堅…蔡京の印鑑の宛名をミスって冷や汗をかいた事がある。

養生所&薬方所

養生所&薬方所…薬草の匂いが強いが、それ以外の異臭がするとクレームがあり…

人物
安道全(あんどうぜん)…しまった…この壺は…
薛永(せつえい)…責任者を連れてきましょう。
白勝(はくしょう)…林冲の手の皮なら大丈夫じゃねえか?

12.
安道全「林冲も敗れるとは」
薛永「張藍殿の他にも弱点があったのですね」
白勝「林冲でも無理な代物を、俺たちでどうしろっていうんだよ」
解珍「…」
安「お前のたれで全身麻酔ができると思って保管していたのだが」
薛「見るもおぞましい事になってしまった」
白「どうしてくれるんだ!」
解「…」

解「なぜ常温で保管しておるのだ」
安「ヘドロを医療機器と同じ棚にしまえるわけないだろう」
解「持ってることも忘れていたな?」
薛「それは否めない」
解「気の毒な…」
白「持てるか、解珍?」
解「女にな」
白「ほざいてろ」
解「…味は悪くない」
白「舐めるな…」
安「中毒になっても知らんぞ」

解「このタレに肉を漬ければ蘇るかもしれん」
薛「誰が食うんだ」
白「お前が漬かれ、解珍」
解「案ずるな、白勝」
白「煮ても焼いても食わねえからな」
解「…」
安「ごねてないで早く持っていってくれ」
解「…致し方ない」
白「おい、解珍!」
解「いかん!」
薛「…」
安「床が溶けるヘドロか…」

安道全…これはこれで用途がありそうだな。
薛永…たれの成分を濃縮すれば薬になるかもしれないな…
白勝…お前舐めなかったか、解珍?
解珍…わしの舌はなんともないぞ?

林冲…立合いで、手が痒くて仕方がない隙を史進に突かれた。

文治省 

文治省…だれだってミスをすることはある。もっとも、された方はたまったもんじゃないのは、万国共通。

人物
蕭譲(しょうじょう)…蔡京の文書に誤りがあっただと?
金大堅(きんだいけん)…やってしまった…
裴宣(はいせん)…玉臂匠も印の誤り、ですな。

13.
戴宗「貴様ら」
蕭譲「…」
金大堅「…」
戴「貴様らの拵えた手紙のせいで、俺はマジで死に行く一秒前まで来ていた」
蕭「…」
金「…」
戴「聖手書生に…」
蕭「…」
戴「玉臂匠が揃って」
金「…」
戴「なぜ、宛名印の誤りを見抜く程度の仕事すらできなかったのか」
蕭「…」
金「…」
戴「説明しろ」

戴「蕭譲」
蕭「押印のことは私の管轄外だ!全部金大堅の手ぬかりだ!」
戴「…ダブルチェックもしないのか、お前ら?」
蕭「!」
戴「金大堅」
金「私は蔡京の印を彫れとしか言われなかった!だからあのデザインになるのもやむなしだろう!」
戴「…お前は蕭譲の文を読まずに彫ったのか?」
金「!」

戴「それで?」
蕭「それでとは?」
戴「どう落とし前をつけてくれるのだ?」
金「…お前の好みの女体像を彫ろう!」
蕭「…お前の好みの女の文字を真似た恋文を作ろう!」
戴「それはお前らが作りたいだけではないのか?」
蕭「!」
金「!」
戴「そろそろ風が吹くぞ?」
金「それは?」
戴「黒旋風」

戴宗…非番の飲み代は二人に負担させることで手を売った。
蕭譲…恋文を密造する悪戯の度が過ぎて梁山泊入り。
金大堅…思春期前の子供たちの遊び場に女体像を放置する悪戯の度が過ぎて梁山泊入り。

兵站

兵站…食べ物や日用品などを集めるセクションだけど、新商品開発にも夢中。

14.
柴進「これは売れるぞ、蔣敬」
蔣敬「なんですかこの機材は」
柴「VRの立合いゲームだ」
蔣「それは」
柴「武器も別途購入して遊べるぞ」
蔣「良い稽古になりそうですな」
柴「テストプレイをしてくれ、蔣敬」
蔣「すごい…」
柴「林冲、孔明、李忠のレベルから選べ」
蔣「絶妙な人選ですな、柴進殿」

蔣「李忠殿レベル10位なら、ギリギリ勝てました…」
柴「一度林冲を試してくれ」
蔣「嫌です!」
柴「林冲レベル1ならいいだろう?」
蔣「…一度だけ試してみます」
柴「立合い!」
蔣「」
柴「やはり駄目か」
蔣「」
柴「1でもそこまで強いのか?」
蔣「」
柴「どれ」
蔣「」
柴「」
宋清「何事だ…」

柴進…林冲レベル1は、李忠レベル100よりはるかに強い。
蔣敬…VRでも死ぬかと思いました。
宋清…鉄扇で孔明レベル20まで善戦できた。

練兵場 

練兵場…好漢の得意武器に応じた練習スペースも確保してある。弓矢も飛刀もなんでもござれ!

人物
徐寧(じょねい)…賽唐猊を着る時の音もすごい。

15.
項充「!!」
李袞「!!」
項「お前の飛槍も様になってきたな」
李「飛刀よりもしっくり来たぞ、項充」
李応「む!」
項「李応殿?」
応「お前ら、飛刀の鍛錬か?」
袞「飛刀と飛槍の鍛錬です」
応「混ぜてくれ」
項「どうぞ…」
応「!!!!!」
袞「凄い…」
応「独竜岡一の飛刀の名手と言われたのだ」

項「…本気を出していいですか、李応殿」
応「望む所だ、項充」
袞「見せろ!八臂哪吒!」
項「!!!!!!!!」
応「やるではないか、項充」
項「梁山泊一の飛刀の名手の座」
応「お互い譲れんな」
袞「…」
応「本数はお前に分があるかも知れんが…」
項「…」
応「!」
袞「目を伏せた姿勢から当てた!」

応「これはどうだ?」
項「…」
袞「拝礼から?」
応「!」
袞「眉間に当てた!」
応「猪も退治したことがあるぞ」
項「…的を増やしてくれ、李袞」
袞「任せろ」
応「四方の的に当てるのか?」
袞「前!」
項「!!」
袞「背!」
項「!!」
袞「左右!」
項「!!」
袞「上!」
項「!!」
応「見事だ!」

項充…李応と飛刀談義で美味い酒が飲めた。
李袞…飛槍で闘う練習中。軽業に自信がある。
李応…梁山泊には名手が揃うものだな。

16.
徐寧「…」
林冲「…」

索超「元禁軍師範の同僚だった二人の立合いか」
馬麟「徐寧は林冲殿が、馬上でやり合いたくないと言うほどの腕前らしい」
扈三娘「あの鎧が徐寧殿の家宝の?」
郁保四「賽唐猊です」

徐「!」
林「!」

索「…噂には聞いていたが」
馬「うるさい鎧だ」
扈「音の撹乱ですね」

徐「!」
林「!」

索(耳栓はないか、郁保四!)
郁(聞こえません、索超殿!)

徐「!」
林「!」

馬(立合いに集中できん)
扈(耳を塞いでも身体が震えますね)

徐「!」
林「!」

索(馬もよく耐えているな)
馬(動きが激しい分、よりやかましくなっている)
扈(林冲殿は耳がついてないのでしょうか?)

林「!」
徐「!?」

索(勝負あったが…)
馬(落馬した時に極め付けの音が出た)
扈(嫌な鳥肌が立ちました)
郁(耳聞こえるかな)

林「さすがの腕前だ、徐寧」
徐「やはりお前には敵わん、林冲」

索(健闘を称え合っているのだよな?)
扈(自分の声も聞こえません)

林「うるさい鎧だ」
徐「俺のやり方さ」

徐寧…賽唐猊ノイズ耐久テストを耐えた馬が愛馬。1000頭に1頭いればいい方。
林冲…だからこいつとやり合いたくないのさ。
索超…徐寧の腕は確かなのでしょうが…
馬麟…分かっててやってるのがタチ悪いな。
扈三娘…思わず身が竦む音です。
郁保四…防御力の高い、鎧なんでしょうけど、堪りませんよ。

郵便屋さん 

郵便屋さん…梁山泊が誇る通信網。オンラインにも対応中。

人物
戴宗(たいそう)…メールとやらが流行ったら、俺らの仕事はほとんどなくなるな!
張横(ちょうおう)…戦の伝令も楽になりそうだ。
王定六(おうていろく)…そうなっても、神行法の札は記念に残しましょうよ。

17.
戴宗「王定六」
王定六「どうした、戴宗殿」
戴「お前、二足歩行に飽きた事はないか?」
王「斬新な問いだな」
戴「這ったり四足歩行になることもあるだろう?」
王「確かに、森を駆ける時はそうなることもあるな」
戴「ならば、四足歩行で神行法を試してみないか?」
王「待て、戴宗殿」
戴「待たん」

王「馬で試せばいいじゃねえか」
戴「乗ろうとした張横が弾き飛ばされたから無理だ」
王「…」
戴「その馬は今でも見えない速さで走り回ってるだろう」
王「分かった。身体を慣らす」
戴「さすが活閃婆」
王「生臭と酒は禁止だな」
戴「ああ」
王「札を貸してくれ」
戴「ほれ」
王「!」
戴「野郎!」

王「俺がずる賢いことを忘れていたな、戴宗殿!」
戴「逃さん!」
王「!」
戴「くそっ!手の札が外れん」
王「撒いたか!」
戴「フラグだ!」
王「なに!」
戴「…止まれん!」
王「土煙しか見えないとは…」

戴「みだりに止まることもできんぞ!」

王「俺も酒と生臭の取りすぎは控えるとしよう…」

戴宗…原始に帰った心持ち。逞しくなって帰ってきた。
王定六…帰ってきた戴宗の仕事をほとんど肩代わりさせられた。

間者

間者…気配を消したり、領土のセキュリティに気を配ったり、やることは多数。情報分析もするから、地頭の良さも大事。

人物
時遷(じせん)…泥棒の延長線だと思って引き受けるんじゃなかったと思うくらい苦労した。
石勇(せきゆう)…修行中は、なぜ時遷に隠れ場所が分かるのか不思議でならなかった。
侯健(こうけん)…潜入はできないけど、慎重さと粘り強さは随一。
孫新(そんしん)…潜入は苦手だけど、噂話を集めてくるのは随一。
顧大嫂(こだいそう)…潜入はやりようがない。武力で何とかするのは随一。
張青(ちょうせい)…潜入は得意。紛れ込むのには絶妙なモブ顔。
孫二娘(そんじじょう)…実は潜入は大得意だが、今はもっぱら事務職。もったいないなぁ。

18.
楽和「私たちのアイドルキャンペーンはいつまでやらなくてはならないのですか、姉上」
楽大娘子「かわいいは正義だから、ず〜っと!」
孫新「脱毛があんなに痛いものだとは思わなかった…」
和「私は双頭山から帰還指令が出ているのですが…」
娘「もう燃やしてあるな、孫新」
孫「…すまん」
和「…」

和「孫新!」
孫「…あとで話がある」
和「分かった」

和「客層がいかがわしいにもほどがあったな」
孫「男に戻れる気がしないぞ…」
和「話とは、孫新?」
孫「董平殿が梁山泊に密使を出した」
和「…」
孫「宋清が迎えにきている」
和「…そうか」
孫「戻るなら今宵だ、楽和」
和「お前は、孫新?」

孫「俺の仕事は、間諜だ」
和「お前も風流喪叫仙に…」
孫「…俺にはあんな綺麗な舞台似合わねえよ」
和「しかし、一度でいいから…」
孫「俺はお前と合わせられりゃ、満足だ」
和「孫新」
孫「…じゃあ、またな」
和「…お前の曲は忘れない」
孫「忘れられてたまるかよ」
和「暫しの別れだ、孫新…」

楽和…あの怪しい連中は誰だったんだろう…
孫新…楽大娘子の説教は全部右から左。
楽大娘子…許さんぞ、梁山泊…

呂牛…あいつは見逃してやろう。
文立…聞煥章様は理解できんだろうがな。

黄門山

黄門山…欧鵬、蒋敬、馬麟、陶宗旺のグループ。謎の一体感に定評がある。

19.
蔣敬「馬麟は賞金稼ぎだったのか?」
欧鵬「凄腕のな」
陶宗旺「そうだったのか」
馬麟「…忘れてくれ」
蔣「しかし、極悪人を捕らえる仕事なんて、なんだかかっこいいではないか」
馬「…綺麗な仕事ではないぞ、蔣敬」
蔣「…」
欧「だが実際強えんだろ、馬麟?」
馬「そうでもない」
陶「本当か?」

欧「俺も粋がってた時は、絶対に鉄笛仙の縄張りに入らないようにしてたぞ」
馬「お前はそんなに弱くないだろう、欧鵬」
欧「武松の兄貴に相手にされなかったよ」
馬「それは相手が怪物なだけだ」
欧「なら一度立合ってくれるか、馬麟」
馬「悪くない」
陶「俺もいいですか!」
蔣「見せてもらおうか」

陶「互角だったじゃないか、欧鵬兄貴」
欧「梁山泊で鍛えたおかげだ」
馬「陶宗旺は力の使い方を工夫しろ」
陶「分かりました!」
蔣「羨ましいな…」
欧「俺は計算ができるお前が羨ましいぞ」
陶「簡単な計算しかできない俺からすれば蔣敬は異次元だ」
馬「そんなもんだ、蔣敬」
蔣「…礼を言う。皆」

欧鵬…花栄殿や呂方ともよく立合うぜ。
蔣敬…武芸が出来なくても裏方でバッチリ貢献している。
馬麟…稼いだ賞金もどこに行ったことやら。
陶宗旺…鉄鍬という鉄の鍬を使って戦う。穴掘りのスピードが尋常じゃない。

雄州

雄州…あるお城を攻めざるを得ない時のことである。

20.
関勝「厄介な戦になったな」
郝思文「遼軍に城に籠られるとなると…」
魏定国「こちらは寡兵ですからな」
関「俺たちは十倍の兵どころか、相手の半分いればいい方だな」
単廷珪「…恐れながら」
魏「…もしややるのか、単廷珪」
関「なにをだ?」
単「私に策があります」
郝「それは?」
単「地図を」

関「水攻めとは…」
郝「その策なら」
単「言うは易しです、郝思文殿」
郝「?」
単「この川をせきとめる日数」
関「…」
単「土嚢の用意や敵に察せられない工夫」
郝「…」
単「戦後処理も大変なんてものではありません!」
関「…お前やりたいのか?やりたくないのか?」
単「めっちゃやりたいです」

郝「予算は?」
単「べらぼうにかかります」
関「木材や土も用意しないといかんな」
単「量の見積もりも、兵の労力も大変なことになりますよ」
魏「お前やりたいんだよな?」
単「めちゃくちゃやりたい」
郝「その割に悲観的な物言いを…」
単「現実的な意見を申し上げているだけです」
関「やるぞ!」

・関勝…こんなに効果があるとは。聖水将だな、単廷珪。
・郝思文…泥まみれになった。宣賛に密使を出して、知府の弱みを握り予算問題を解決。
・魏定国…この堰を切る瞬間の感慨たるやなかったな。
・単廷珪…だからやめられんのだ、水攻めは。

青蓮寺

青蓮寺…やっと彼らも遊ぶことを覚えた。

人物
袁明(えんめい)…梁山格闘優勝記念の賞金で、部下に賞与を払った。
李富(りふ)…ちょっと北京に行ってきます。
聞煥章(ぶんかんしょう)…北京の妓楼でブラックリスト候補。
洪清(こうせい)…梁山格闘準優勝記念の賞金で、体術道場を改修した。
呂牛(りょぎゅう)…たちの悪さに手足が生えた男。

21.
聞煥章「李富ではないか」
李富「元気そうだな、聞煥章」
聞「北京に危急の仕事が入ったのか?」
李「…遊びに来たのだが」
聞「…遊びに?」
李「お前が手紙で書いてきたではないか」
聞「ああ…」
李「何をして遊ぶのだ?」
聞(社交辞令だったのだが)
李「外出も久しぶりだ」
聞(どうしたものかな…)

李「いつも北京で何をして遊んでいるのだ?」
聞「…友だちと酒を飲んだり」
李「ほう」
聞「梁山パークに行ったり…」
李「いいな」
聞「まあ、色々だ、李富」
李「ではその友だちに会わせてくれ」
聞「…いや、それは」
李「不都合が?」
聞「なんというか…」
呂牛「そこの人!」
李「私?」
聞「!」

聞(なぜお前がここに)
呂牛(友達だろう?)
聞(願い下げだ)
李「なんのご用事で?」
呂「いや、見事な人相をされていると思いましてな」
李「…白髪で嗄れた声の私が?」
呂「いかにも!」
聞(真犯人がどの面さげて会ってるんだ)
呂「過去に何かおありなのかな?」
李「…」
聞(悪趣味にもほどがある)

李富…まるで私の過去を知っているかのような占い師だったよ…
聞煥章…相手にするな、李富。
呂牛…占い料はお友達から頂戴しますからいりませんよ!

禁軍

禁軍…元帥になる前の童貫をいびった連中は、軒並み左遷されている。因果応報だな。

人物
童貫(どうかん)…周囲を実力で黙らせるタイプ。
趙安(ちょうあん)…周囲をフレッシュで認めさせたタイプ。

22.
呉達「呼延灼。連環馬は禁止だ」
呼延灼「…」

呼「…」

童貫「あれは?」
呉「自転車ですな」
童「呼延灼はなにを?」
呉「連環馬禁止の命を伝えたら、突然自転車に乗り始めました」
童「ふむ…」

童「呼延灼」
呼「童貫殿?」
童「私の自転車はあるか?」
呼「ございます」
童「貸せ」
呼「はい」

童「…」
呼「童貫殿?」
童「…」
呼「僭越ながら、お尋ねしますが…」
童「聞くまでもない、呼延灼」
呼「…ご無礼を」
童「…」
呼「…」
童「!」
呼「…自転車に乗る調練をいたしませんか?」
童「不要」
呼「せめて補助輪を」
童「不要だ、呼延灼」
呼「…失礼いたしました」
童「!」
呼「…」

童「…」
呼「童貫殿…」
童「話しかけるな、呼延灼」
呼「…」
童「初めて馬に乗った時のことを思い出している」
呼「…」
童「よし…」
呼「…」
童「!」
呼「!」
童「乗れた」
呼「童貫殿!」
童「なんだ」
呼「下り坂ではブレーキを!」
童「…ブレーキ?」
呼「!」
童「!!」
呼「童貫殿!」

呼延灼…連環馬を大失敗した。自転車に乗って連環馬のイメージトレーニングをしたかったのだが…
童貫…下り坂で死を覚悟した。
呉達…呼延灼の上官。たまに訳の分からないことをするからな、呼延灼も童貫殿も。

23.
童貫「本気を出す調練を行う」
李明「元帥」
鄷美「質問はまだだ、李明」
李「しかし…」
童「聞こう」
李「なぜ、将校皆でカラオケなのですか?」
畢勝「後で分かる」
李「…」
童「皆でするのではない、李明」
李「?」
童「各々が個室でするのだ」
馬万里「つまり」
韓天麟「各々が、ヒトカラを?」

童「左様」
陳翥「意図が分かりませぬ!」
童「本気を出す調練と言った」
鄷「各自配置につけ!」

李「ヒトカラなど初めてです」
段鵬挙「陰キャのすることではないのか」
王義「それは誤りだ。段鵬挙」
段「王義?」
王「もしもお前が元帥に風流喪叫仙のラップを披露しろと言われたら?」
段「死ぬな」

王「ヒトカラとは即ち、自分との戦」
李「王義殿?」
王「初めて歌う曲を他人に披露するなど、実戦で豹子頭の騎馬隊を相手に初めての戦法を試すも同然」
段「全滅だな」
王「しかし一人で戦場を想定するならば、いかような戦をする事もできる」
李「それが元帥の意図ですね」
王「皆、四刻後に会おう」

李明…若者流行の歌謡曲を選択。
馬万里…厳つい風貌に似合わぬ女性歌謡曲を熱唱。
韓天麟…彼の年齢層にはたまらない選曲。
陳翥…風流喪叫仙の大ファン。
段鵬挙…なんだかんだでアニソンレパートリーが豊富。
王義…ヒトカラの名手。開封府で部屋に店員が入ってこないカラオケ店を全て知っている。

童貫…覗いているのではない。本気を出しているのか確かめているのだ。
鄷美…馬万里の高音に爆笑。
畢勝…原キーじゃないと、絶対歌えないタイプ

楊令伝

黒騎兵

黒騎兵…黒の具足の補充は結構大変。塗料を塗る職人の確保が喫緊の課題。

人物
楊令(ようれい)…黒以外を身に着けるわけにはいかん。
郝瑾(かくきん)…着物も黒地が多いですものね。
張平(ちょうへい)…物は考えようですよ、楊令殿。
蘇端(そたん)…俺はたまに派手な具足を着たくなるぜ。
蘇琪(そき)…黒以外ありえん。
耶律越里(やりつえつり)…彼の具足だけは特注品。予算が倍以上かかるがデカいんだから仕方ない。

24.
楊令「黒騎兵の色を変えたいと思ったことはないか、だと?」
張平「たまにはイメージチェンジをするのはどうでしょう」
楊「ふむ」
蘇琪(乗るのか、楊令殿)
楊「赤と青はあるな」
張「黄色とかどうですか?」
楊「白も悪くなさそうだ」
呉用「白はやめてくれ、方臘を思い出す」
楊「他の色はないかな」

張清「緑はだめだぞ、楊令殿」
皇甫端「紫もな」
段景住「金もだめだ!」
楊「…」
張「意外と所有者がいますな」
楊「茶色?」
張「歩兵が土で茶色いですから」
山士奇「失礼な」
史進「肌色は」
班光「シシハラです。史進殿」
楊「やはり黒しかないのかな」
張「銀はどうですか、楊令殿?」
楊「…」

楊「銀は、やめておく」
張「…」
楊「銅はどうだ?」
張「一段落とさなくても」
楊「橙色や桃色はちょっとな」
張「一度トライしてみては?」
楊「桃騎兵」
張「かわいいですね」
楊「橙騎兵」
張「騎兵になりたてみたいですね」
楊「灰騎兵はどうだ、張平?」
張「廃棄される兵みたいです、楊令殿」

楊令…やはり黒だな。
張平…青はだめです!水色も!藍色も!
蘇琪…ケチだな、張平。
呉用…白の衣装にはいい思い出がない…
張清…緑衣の将とは俺のことだ!
皇甫端紫髯伯とは私のことだ!
段景住金毛犬とは俺のことだ!
山士奇…粘り強い歩兵を率いる将。やたらデカイのに声がやたら小さい。
史進…ボディーペイントなら脱いだことにはならん!
班光…下半身はどうするのですか!

遊撃隊

遊撃隊…シシハラ問題遂に解決!

人物
班光(はんこう)…意を決した。
鄭応(ていおう)…遠巻きに見守っていた。怖気を振るったぜ…
穆凌(ぼくりょう)…ここまで一人の人間と向き合えるなんてすごいな…

25.
班光「…」
杜興「…」
史進「何の用だ、シシハラ発起人ども」
班「…私たちの言葉が、兵にあのような影響を与えるとは思わず」
杜「その点については、我らの責任を全面的に認める」
史「精々頑張ってくれ」
班「史進殿にお願いが」
史「兵のことはお前らが何とかするんだろう?」
班「我らと共に…」

史「ふざけるな、班光」
班「遊撃隊には史進殿が必要なのです!」
史「知らん」
杜「わしも兵に関することなら何でも言う事を聞く所存だ」
史「老いぼれは黙れ」
班「…私と立合ってください」
史「殺されたいか、班光」
班「私も史進殿を殺すつもりで…」
史「!」
班「!?」
史「もう死んだな、班光」

班「!」
史「まだ死なないか、班光」
班「史進殿を殺すまで…」
史「口数が多い!」
班「!」
史「黙って死ね」

杜(何刻立合っているのだ…)
史「…」
班「」
杜(班光の動きが)
史(やれやれ)
班「」
杜(死域か!)
史(いつもこれくらいの力を出せればな…)
班「」
史「!」

史「行くぞ、老いぼれ」

史進…甘ったれた兵どもを締め上げるぞ。
班光…さっきの事は何も覚えてません…
杜興…よくやったぞ、班光。

洞宮山

洞宮山…魔窟。4人の魔女がいると近隣の村々では噂されている。

26.
馬麟「六」
白勝「七」
杜興「八」
白寿「嘘!」
杜「!?」
顧大嫂「また爺か」
孫二娘「あんたは九だろうが」
杜「死んでも出さんわい」
扈三娘「でも、負けたら杜興殿の肝の臓が過労死する酒を飲まされますよ?」
孫「飲め!老いぼれ!」
杜「…アルハラじゃ」
顧「パワハラ爺が言うんじゃないよ!」

扈「王子」
孫「女王」
杜「嘘じゃ!」
孫「いい度胸してるじゃないか、老いぼれ!」
杜「誠だったとは…」
孫「おら持ってけ、爺」
杜「嘘から出た誠か…」
孫「」
顧(キレたね)
孫「…十二杯」
杜「…」
孫「十二杯だ。杜興」
馬(もはや洞宮山の史進枠だ)
勝(てめえから虎穴に入って喰い殺されてら)

顧「王」
寿「一」
馬「二」
勝「三」
杜「…四」
寿「嘘!」
杜「!?」
顧「見せな、爺」
杜「誠じゃ!」
孫「なら見せやがれ、老いぼれ!」
杜「やめろ!」
白「吐け!杜興!」
杜「」
顧「…吐いたね」
孫「撤収!」
寿「四なら私が四枚持ってます」
扈(死神ですね)
馬(俺は絶対に関わらんぞ)
杜「」

顧大嫂…洞宮山の王。異論ないだろう?
孫二娘…洞宮山の女王。嫌かい?
扈三娘…洞宮山の王子。男装も様になる。
白寿…洞宮山の姫。えぐい。
馬麟…洞宮山のナイト。異動届の密書を送った。
白勝…洞宮山のドクター。野戦病院の方がまだマシだ…
杜興…洞宮山のセバスチャン。この面子で李家荘のようにいく訳ない。

岳家軍

岳家軍…今朝は饅頭を取り合って、お昼は洗濯の場所を取り合ってた。今夜もまた…

人物
岳飛(がくひ)…おのれ!減らず口を!
徐史(じょし)…口ばっかり達者。もうちょい武芸も指揮も頑張った方がいい。
孫範(そんはん)…彼みたいな人間を大人と呼ぶのだ。

27.
岳飛「また生意気な物言いを!」
徐史「岳飛殿が鈍臭いのは本当じゃないですか!」
岳「孫範に言いつけてやる!」
徐「俺だって孫範殿に言いつけますよ!」
岳「やかましい!」
徐「!」
岳「俺が孫範に言いつけるのだ」
徐「…突き飛ばしましたね」
岳「それがどうした」
徐「孫範殿に言いつけます」

岳「しまった!」
徐「岳飛殿が言いつけても、俺が孫範殿に言いつければ、叱られるのは岳飛殿です」
岳「小賢しいまねを!」
孫範「本当にうるさいな、お前たち」
岳「孫範!聞いてくれ!」
徐「岳飛殿がまた俺に悪行を!」
孫「全部聞こえているよ」
岳「徐史を断罪してくれ!」
徐「岳飛殿をです!」

孫「どっちもどっちではないのか」
岳「なんだと!孫範!」
徐「今晩の献立に影響させますよ!」
孫「そもそも事の発端はなんだったのだ?」
岳「それは…」
徐「…なんでしたっけ?」
岳「どうでもいいが、徐史を断罪しろ、孫範」
徐「岳飛殿を裁いてください!孫範殿!」
孫「…ならば喧嘩両成敗だ」

岳飛…徐史の皿洗いを一週間。
徐史…岳飛の雑用を一週間。
孫範…こんな馬鹿を連れてやってるんだよな、毎日。

twitterにて連載中!

ご意見ご感想やリクエストは、こちらまでよろしくお願いいたします!

今号も、お読みいただき、誠にありがとうございました!

これからもすいこばなしを、どうぞよろしくお願いします!

中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!