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水滸噺 21年2月【突入!無法地帯!】

あらすじ
九紋竜御竜子 いつものように
燕浪子李番頭 いつまでも友で
禁軍将趙安撫 たやすく死なず
水滸無法地帯 ようよう解禁す

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・2周年と1000本達成を機に、今月からネタバレありの無法地帯を解禁しました!ご注意ください!
・作者のtwitterにて連載しています。
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!

それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…2周年を迎えたので、色々と新たな取組にもチャレンジしていきたい所存。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…総帥の口から思わぬ言葉が飛び出す時の衝撃ときたら…

1.
公孫勝「かわいい…」
劉唐「!?」
楊雄「劉唐殿?」
劉「…疲れたのかな」
楊「いつものことですよ」
劉「今、公孫勝殿がかわいいと言った」
楊「…緊急事態ですね」
劉「大事なことを一度しか言わない公孫勝殿が二度ということはないと思うが…」
公「かわいい」
劉「!」
楊「今言いませんでした!?」

公孫勝…その視線の先には…
劉唐…なにが可愛いのだ、公孫勝殿!
楊雄…すごい聞きたいけど、聞くに聞けない…

騎馬隊&致死軍

騎馬隊&致死軍…ハイスペックバカなのはどっちもどっち。

2.
公孫勝「馬鹿、の語源を知っているか林冲」
林冲「含みがあるな、ウスノロ」
公「秦の趙高という宦官が馬を鹿だと言った」
林「いや、鹿を馬と言ったのではないか?」
公「…」
林「…」
公「どちらでもいい」
林「馬鹿はお前だな、公孫勝」
公「馬鹿に馬鹿と言われた」
林「いくらでも言ってやる」

林冲…張藍の命令には馬鹿正直。
公孫勝…客観的には林冲と同じくらい馬鹿。

養生所&薬方所

養生所&薬方所…生傷が絶えなくても無問題。

3.
穆春「覚えてやがれ!」
薛永「…」

穆弘「薛永」
薛「はい」
弘「春が世話になった」
薛「それほどでも」
弘「世話になった礼を言わんとならん」
薛「…」
弘「表へ出ろ」
白勝「おい、穆弘…」
薛「大丈夫だ、白勝」

猫「!!」
弘「春!早く撫でろ!」
春「目が怖い!兄者」
薛(引っ掻かれ放題だ)

穆弘…猫ちゃんに懐かれなさすぎる傾向あり。
穆春…拾った猫ちゃんに引っ掻かれて泣いた。
永…傷薬塗ったらすごい顔したな、穆春。
白勝…猫に舐められがちな傾向あり。白日鼠だから?

文治省

文治省…文系セクション。識字率向上が今年のミッション。

4.
蕭譲「私の字には独創性がなくてな」
金大堅「だから偽筆の達人なんだろう」
蕭「とはいえ私の字というものが欲しい気持ちは分かるだろう?」
金「それは分かる」
蕭「今のままでは仮に恋文でも書いて送ろうものなら秦明が霹靂火に打たれることになる」
金「大惨事だな」
秦明「どういう意味だ、蕭譲」

蕭「私の字を書こうとすればするほど、秦明の字が際立ってしまう」
秦「この字は私が気合を入れて書いた字だ」
金「それにしても迷惑な話だな」
秦「そんなにあの時私の字ばかり書いていたのか?」
蕭「お前の字よりもお前らしいな」
秦「魯達がさわりを見せただけで焼いてしまったぞ?」
蕭「嘘だろ」

金「そのおかげで今の二竜山の繁栄があるのではないか」
蕭「だがしかし、何を書いても秦明になってしまうのは困る…」
秦「困るのは私の方だ」
蕭「いっそ左手で書いてみるか…」
秦「黄信の字だ…」
蕭「右足で…」
金「器用だな」
秦「孔明の字…」
蕭「左足は…」
秦「孔亮!」
金「青州に縁が?」

蕭譲…口で書けばいい!
金大堅…この字は?
秦明…秦容の字だ…

5.
裴宣「なぜか私たちは気があうな」
鄧飛「お前のような冗談の分かる堅物は嫌いじゃねえ」
孟康「珍しいな兄貴」
裴「今日は愚痴っていいか?」
鄧「いいぞ鉄面孔目」
裴「私は孔目だったのに、なぜ民政を任せられているのだろう?」
孟「それ言ったら俺だって元々は船大工だぜ?」
鄧「知らなかった」

裴「水軍に行こうとしなかったのか?」
孟「あまり思い出したくねえんだ」
裴「すまん…」
孟「今の仕事の方が性に合ってるからな」
鄧「俺も普通の軍は勘弁だ」
裴「鄧飛ならそうだろうな」
鄧「俺は堅物にはなれそうにないよ」
裴「私はもっと柔軟になりたいのだが」
孟「鉄面が柔面になるのもな」

孟「相手に不正があったら?」
裴「理を持って不正を認めさせる」
鄧「ぶんなぐる」
孟「騙されたら?」
裴「訴える、かな」
鄧「騙しかえす」
孟「お前ららしい」
鄧「お前の理詰めも強えんだろうけどな」
裴「だてに鉄面孔目と呼ばれてないぞ」
鄧「ちょっと弁論術とやらを教えてくれ」
裴「任せろ」

裴宣…仕組みを覚えたら会得が早いな、二人とも。
鄧飛…劉唐を言いくるめて楽な仕事をゲットした。
孟康…商人を言いくるめて兵糧を売って荒稼ぎできた。

塩の道

塩の道…盧俊義の表の顔しか知らない部下も当然いる。

6.
李袞「…えらい体術の稽古だったぜ燕青」
燕青「そうか?」
李「なんだか俺によくしてくれるよな?」
燕「…」
李「なんでだ?」
燕「お前の名に似ている友がいる」
李「そんな事で?」
燕「…浪子は気まぐれだからな」
李「李袞で得したぜ!」

李固「旦那様。商談に行って参ります」
盧俊義「おう」

李袞…なんだか分からねえけど、飛槍が上手くなったぜ。
燕青…何も知らない李固の事が羨ましくなる事もしばしば。

盧俊義…塩の首魁だけでなく、表の商人の顔もしないといけないのが辛いところだ。
李固…生真面目な番頭だが、燕青の友達。幸か不幸か、闇塩については何も知らない。

郵便屋さん

郵便屋さん…神行法は肉と酒が禁止なんだけど、もはや禁を破る前提で使っているきらいがある。

7.
李逵「酒を飲みすぎだ、戴宗」
戴宗「あと一杯…」
李「また神行法で痛い目見るぜ?」
戴「…なんだかお前に説教されると釈然としねえんだが」
李「俺に説教しようってか、戴宗」
戴「板斧をしまえ」
李「てめえの神行法が使えねえと仕事にならねえんだよ!」
戴「お前は酒も肉もいらねえのか、李逵」

李「宋江様の大事な仕事の時は我慢して当然だろう?」
戴「当たり前のことを当たり前のように言われちまった」
李「当たり前だ」
戴「…どうせ俺は飲んだくれだ」
李「飲むときに飲め。飲まねえ時は飲まねえケジメをつけろよ」
戴「ケジメねえ」
李「肉食おうとしてんじゃねえ!」
戴「バレちまった」

李「気持ちのいい朝だ」
戴「…」
李「神行法は使えんだろうな」
戴「酔っ払い神行法にはならねえはずだ」
李「いい加減な秘術だな」
戴「俺に言うな」
李「行くぞ」
戴「しまった…」
李「…首出せ戴宗」
戴「違う!」
李「…」
戴「札が足りねえ」
李「それが?」
戴「…」
李「足が生えてんだろ?」

戴宗…死に物狂いで走った流石の健脚。
李逵…板斧の煌めきが凶々しかった。

鄆城

鄆城…雷横の幼い頃は気弱な少年だったらしく…

8.
雷横「帰れ!白秀英!」
白秀英「あんたの部下に媽媽の話言いふらすけどいいの?」
雷「…それだけはやめてくれ」
朱仝「おう。最近噂の劇場に来てみたら」
宋江「何事だ、雷横?」
雷「…頼むから会わなかったことにしてくれないか?」
朱「そうはいかんな」
白「立派な髭ね!旦那!」
朱「美髭公だ」

朱「雷横と何かあったのか?」
白「それが大ありなんですよ、美髭公の旦那」
朱「ぜひ聞かせてくれ」
雷「これ以上聞いたら貴様を友と思わんぞ」
宋「では私たちにこっそり教えてくれ」
白「いいでしょう」
雷「白昼堂々のどこがこっそりだ!」
白「あれは雷横がまだ私よりも小さかった頃…」
雷「!」

白「雷横はそれはもう媽媽が大好きで…」
雷「子どもの頃だろう!」
宋「親孝行はいいことだ」
白「内緒で媽媽に贈り物をしようとした時に…」
朱「素晴らしい」
白「選んだお皿を割ってしまい、大泣きに泣いて…」
宋「甘酸っぱいな」
白「直すため、鍛冶屋修行を始めました」
朱「そう繋がるのか!」

雷横…白秀英にいくつ弱みを握られているか分かったもんじゃない。
朱仝…自分の甥っ子に弱みと髭を握られ続けて久しい。
宋江…雷横も隅に置けないではないか。

白秀英…開封府から来た芸妓さん。雷横の幼馴染。フラグは立ってるの?

東渓村

東渓村…晁蓋が担いで持ってきた塔の置き場をもうちょっと考えてほしかったと愚痴る不束者がいたらしい。

9.
晁蓋「どういうことだ!」
石秀「…」
楊雄「…」

呉用「めずらしいな晁蓋殿が」
公孫勝「…」
呉「なぜあの二人が叱責されているのだ?」
劉唐「時遷が盗んだ鶏を捕らえようと追いかけたら晁蓋殿にけしかける形になったそうで…」
呉「…」
劉「危うく目を啄まれるところだったと」
呉「そこまで!?」

鶏「…」
晁蓋「私が締めてやる」
石秀「…」
楊雄「…」

呉「また晁蓋殿がムキになった」
劉「そういえば時遷は?」
公「晁蓋殿に晒し系にされている」
劉「あんな所に!」

晁「覚悟しろ、鶏!」
鶏「!!」
晁「おのれ!」
鶏「!!」
晁「強い!」

呉「晁蓋殿よりも強いではないか、あの雄鶏」

鶏「…」

楊「撤退しろ!」
石「とても敵わん」
劉「チキン野郎どもが」

鶏「…」
劉「公孫勝殿!頼みました!」
公「…」

鶏「…」
公「…」

晁「知らん!」
呉「嘘をつかないでください」
晁「知らんと言った!」
呉「晁蓋殿!」
晁「知らん!」

鶏「〜♪〜」
劉「鳴いた」
公「裏切り者か?」

…結局東渓村の朝を告げる鶏になった。

晁蓋…バレバレの嘘を突き通せなかった。
呉用…晁蓋の代わりに磔にされる夢を見た。
公孫勝…耳を斬り落とす夢を見た。
劉唐…時遷が干からびているぞ!
楊雄…よく盗んできたな。
石秀…なぜか既視感がある。
時遷…既に磔にされて死線をさまよっていた。

雄州

雄州…いたずら合戦の延長線が戦だという…

10.
関勝「宣賛にいたずらをしてこい、郝瑾」
郝瑾「バレるから嫌です」
関「バレなければいい」
郝「宣賛殿にバレないわけがありません」
関「弱気だな」
郝「関勝殿の手本を見せていただければ、私もいたずらに挑戦できるのですが」
関「いいだろう。宣賛も腰を抜かす本気の大人のいたずらを見せてやる」

関「首尾はいいな」
単廷珪「俺たちの罠は大掛かりだから後始末が大変ですぜ?」
関「あと片付けも込みで酒と肉を振舞ったのだが?」
魏定国「宣賛殿のことだから死にはしないと思うが」
単「あとが怖い…」
関「大刀の命令が聞けぬのか、聖水将、神火将」
単「やれやれ」
魏「射ますよ」
関「いけ!」

魏「!」

宣賛「焦げ臭いな」
金翠蓮「瓢箪矢の匂いが」

宣「何をしている関勝殿!」
単「くらえ宣賛殿!」
宣「すごい粘着力だ!」
単「聖水将の新兵器だ」
宣「…頭巾が邪魔だ」
金「脱いで追いかけましょう」
単「!!」
宣「許さん」
関「なんだ!?」
魏「退路に落とし穴が!」
単「降伏する!」

関勝…あと片付け中、また穴に落ちた。
郝瑾…用意周到な宣賛の布陣に感服。
魏定国…降伏の証に瓢箪矢をあるだけ貢いだ。
単廷珪…降伏の証にあるだけの粘着弾を関勝に当てた。

宣賛…頭巾をとって走る姿がめっちゃ怖い。
金翠蓮…家の汚れを落とし切るまで決して家に帰さない。

青蓮寺

青蓮寺…働き方改革導入が大きく前進しそうな兆しが。

11.
聞煥章「それでは失礼します」
袁明「聞煥章」
聞「はい?」
袁「もう帰るのか?」
聞「定時ですので」
袁「定時で帰って何をするのだ?」
聞「…休みますが」
袁「…」
聞「仕事は既に終えていますからね」
袁「…私も定時で終えてみようか、洪清?」
洪清「…」
聞「…それでは失礼します」
袁「…」

袁「…定時とはまだ外が明るいな、洪清」
洪「はい」
袁「久しぶりに若者と遊戯場に行こうか」
洪「…」
袁「それとも久しぶりに蹴鞠をしようか」
洪「…」
袁「どこか気持ちが高揚しているのはなぜかな、洪清」
洪「定時で終えたからです」
袁「すると青蓮寺の皆も、定時で仕事を終えるのはどうかな」

職員「なんだって!」
職「ついに俺たちも定時退社厳守?」
職「やっと上層部が働き方改革に理解を…」

袁「…青蓮寺の手の者の反応は?」
洪「喜ぶ者と理解せぬ者の二つに分かれております、殿」
袁「…」

李富「定時退社とはなんだ、沈機?」
沈機「仕事に終わる時間があったのですか、李富殿?」

袁明…仕事以外の生きがいが見つかる予感が。
洪清…早く寝て早く起きると体術の動きのキレがいい。
聞煥章…頼まれなくても定時退社。
李富…頼まれなくても深夜残業。
沈機…頼まれなくても休日出勤。

禁軍

禁軍…フレッシュがもはや逆として通用しなくなって久しい。

12.
公順「…落ちない」
何信「まだ皿を洗っているのか」
公「どうしても落ちない汚れがあって…」
何「しぶとい油汚れだな」
公「しぶとすぎます」
何「趙安殿とどちらがしぶとい?」
公「…それは趙安殿の方がしぶといに決まってます」
何「洗剤如きでは落ちんな」
公「首を斬られても平気なんですから」

公「…私の着物にシミが」
何「厄介なところに作ったな公順」
公「しぶとそうなシミです」
何「趙安殿とどちらがしぶとい?」
公「それは趙安殿の方がしぶといに決まってます」
何「我らの中ではしぶとさの単位は趙安殿だからな」
公「1趙安殿のしぶとさを会得する前に死にそうです」
何「桁違いだ」

何「しぶといな公順」
公「趙安殿とどちらがしぶといですか?」
趙安「私がどうした?」
公「趙安殿!」
何「しぶとさの化身!」
趙「どういう意味だ」
公「趙安殿のしぶとさを尊敬しているのです」
趙「釈然とせん」
何「趙安殿危ない!」
趙「!?」
何「隕石が古傷に直撃した」
公「でも生きてる!」

公順…古傷が開かなかったのですか?
何信…皮一枚の所で開かなかったらしい。
趙安…死線を彷徨っていたが、ガッツリ両足が生寄りの所に入っているので死神も萎えた。

楊令伝

黒騎兵

黒騎兵…戦以外にも細かな仕事はあるようで。

13.
蘇端「蘇琪。懺悔をさせてくれ」
蘇琪「なんだ大げさな」
端「郝瑾殿にすごくくだらない嘘をついてしまったのだ」
琪「いつものことではないか」
端「俺はいたずらはするが、嘘はつかなかった」
琪「大差ないと思うが」
端「俺自身もあまりのつまらなさに失望しているほどなんだよ」
琪「そんなにか」

琪「どんな嘘をついたんだ?」
端「…昨日郝瑾殿から頼まれていた仕事を一つやりそびれていたんだ」
琪「それで?」
端「なんだか、どうしても正直にやってませんでしたと言えなくて…」
琪「…」
端「先方はお留守でしたと言ってしまったんだ」
琪「本当につまらない嘘だな」
端「だろう?」
琪「…」

端「言った途端に凄まじく恥ずかしくなって」
琪「バレなかったのか?」
端「結局バレずにすんだ」
琪「どうせ些細な仕事なんだろう?」
端「二言三言の確認と報告で済んだ」
琪「つまらん…」
端「自分がいたたまれなくて、厳しい調練を志願してな」
琪「ああ」
端「心底後悔している」
琪「知らん」

蘇端…怒られるのが怖かったんだが、これからの調練の方がよほど怖いよ…
蘇琪…嘘つくとやっぱりそうなるんだな。

遊撃隊

遊撃隊…結局班光も同レベルの変態なのだ…

14.
班光「史進殿の着物に触れるのも嫌になって…」
花飛麟「そうだろうな」
班「何をどうすれば人体からあんな臭気を発することができるのかという匂いがするんですよ」
花「絶対に同じ川で洗いたくないな」
班「花飛麟殿、失敬」
花「班光?」
班「!?」
花「私の着物になにを」
班「フローラルな香り…」

花「何をしている班光!」
班「この着物も違う意味で人体から発しえない香りがします!」
花「気持ち悪いぞ班光!」
班「花飛麟殿の美は視覚だけでなく嗅覚までも翻弄するのですな!」
兵「なんだって!」
兵「俺にも嗅がせろ班光!」
花「失せろ!」
班「芳香剤で花飛麟殿の香りを販売しましょう!」

花「いい加減に着物を返せ班光!」
班「あと一回キメさせてください!」
花「言い方が嫌だ!」
班「…花飛麟殿。汗をかかれていますな」
花「貴様らが暑苦しくしたせいだ」
班「…妙にムラムラしてきました」
兵「もしや花飛麟殿の汗からフェロモンが発せられているのでは」
班「それだ!」
花「!?」

花飛麟…梁山泊美の化身。着物の残り香に蝶が寄ってくるらしい。
班光…花飛麟のフェロモンにやられてしまった。

15.
史進。着物を着てくれ。頼むから、着物を着てくれ。杜興はそう言って、泣いていた。鬼瞼児の目にも涙か。そう言い捨てた史進は、また着物を近くの木にかけて、裸で走り出した。
春の風はスケベだな、班光。史進は爽やかに笑う。スケベもなにも、すっ裸ではないですか、史進殿。お前もスケベだな班光。

16.
史進殿が梁山泊の春の妖精ですって?
笑わせないでください。
梁山泊の妖精とは、花飛麟殿のことを言うのです。
湖畔に映るあのキリリとしたお美しい顔。彫刻のように無駄のない整った筋骨。そして何より、天から盗んで来たと言っても信じるであろう、桃と見間違う尻…
花飛麟の矢は、容赦を知らない。

無法地帯

無法地帯…色々好き勝手やる場所。ネタバレ注意!

17.
史進「今日からは好き勝手やらせてもらう」
班光「今まで好き勝手やってなかったつもりですか!」
杜興「引っ込め小僧!」
史「ダイバーシティという言葉を聞いたことがあるか?」
陳達「北宋の世にそんな言葉はないだろう」
鄒淵「多様性という意味らしいがそんなもん俺たちは知らん」
班(知ってる…)

史「もはや俺を制限するものはない」
穆春「まあそうだろうな」
史「だからやりたい放題やっても構わんのだ」
施恩「限度はあるぞ、史進」
史「着物を着る自由があるならば」
班「脱ぐ自由は認めません!」
史「差別だ!」
班「いい加減に恥を知ってください、史進殿!」
史「知る、とはなんだ班光?」

班「…また詭弁を」
史「四知という言葉がある」
班「…」
史「俺が何をしても天と地と己とお前が知っている、という意味だ」
班「だからなんですか」
史「俺が裸なのも天と地と己とお前が知っているのだ!」
班「だからなんですか!」
史「ここを着物解放府とする」
班「東京開封府みたいに言うな!」

史進…これからは好き勝手にやらせてもらう!よろしくな!
班光…私が秩序を守ります!
杜興…意外と早い復帰だったの。
陳達…まあどうせこうなるだろうと思ったよ。
鄒淵…それにしても早いな。
穆春…どうなることやら。
施恩…またこれからよろしくお願いします!

18.
趙安「フレッシュ!」
穆弘「…」
花栄「…」
趙「本当になんでもありにしたのだな」
花「ここならば、いくらでも綺麗に殺してやれる」
穆「待て花栄。俺を遮るな」
趙「もう済んだ事ではないか!」
花「こちらがやられっぱなしというのは釈然としない」
穆「もう一度やらせてもらおう」
趙「待て!」

趙「なぜ弓を持っているのだ!」
花「この方が私は貴様を綺麗に殺せる」
公順「我らで護衛します!趙安殿!」
何信「…私は応援席か?」
解珍「無論じゃ」
魏定国「剣の斬れ味も抜群ですぜ」
花「もらったな」
穆「俺も騎馬で突撃させろ」
花「頼もしい」
公「…」
趙「フェアフレッシュを要求する!」

趙「いったいこのシチュエーションでどうやって耐えればよいのだ」
穆「遮る者無し!」
趙「もういかん!」
花「!」
魏「瓢箪矢!」
公「盾が!」
趙「フレッシュマンの加護を…」
穆「…また風が俺を!」
花「穆弘!こっちに突っ込んでくるな!」
魏「いかん地雷が!」
穆「!」
花「…」
趙「隙!」

趙安…命からがら逃げのびるしぶとさは健在。
穆弘…片目だから仕方がない!
花栄…せっかくの魏定国の罠を!穆弘!
魏定国…主張が強い者同士だとぶつかり合うのな。
公順…穆弘の威圧感も花栄の弓も受け切れるほどの器量はまだない。
解珍…酷い匂いだな貴様。
何信…お前のタレよりはマシだ!

19.
林冲「…」
楊令「…」
林「…どうだった?」
楊「…大変でした」
林「そうだろうな」
楊「後悔はありません」
林「ならいい」
楊「楽しい話をしませんか、林冲殿」
林「どんな?」
楊「…例えば」
林「例えば?」
楊「張藍様からお伺いした、林冲殿恥ずかしい話選り抜き十選集の話とか」
林「貴様!」

楊「本当に張藍様との出会いはこんな形だったのですか?」
張藍「本当です、楊令」
林「やめろ張藍」
楊「父上もよく母上に制圧されていましたが、今思うと…」
楊志「やめろ、令」
済仁美「なぜ?」
張「久しぶりね、済仁美」
林「もう恥ずかしい話を吹聴するのをやめてくれ、張藍」
張「…ならば」

林「今度はなんだ!」
張「楊志殿と楊令に立合って勝ちなさい」
林「雑作もない」
志「何を言っている林冲」
令「それは俺たちの台詞です、林冲殿」
林「吹毛剣を四つにしてやろうか」
志「林冲の槍を切り刻んでやろうか、令」
令「いいですな」
済「気の済むまでやってらっしゃい」
林「覚悟しろ!」

林冲…楊令が強くなっている喜びをひた隠しにしていた。
張藍…お茶にしましょう。済仁美。
楊令…林冲と互角になっていた自分が嬉しかった。
楊志…久しぶりに吹毛剣を思う存分振るっていた。
済仁美…今後の展開を検討しましょう、張藍。

20.
宋江「この四人で釣りとは」
晁蓋「お前には負けん」
盧俊義「おう、おう」
呉用「…」
晁「まさか呉用が釣りをするようになるとはな」
呉「太公望だって釣りをしたんですから、この私だって」
宋「強気だな」
盧「おう、おう」
宋「誰が先に釣るかな」
晁「私だ!」
呉「どうでしょう」
盧「おう!」

宋「盧俊義?」
盧「おう、おう」
晁「盧俊義に当たりが!」
呉「この辺りは釣れるのか、阮小五?」
阮小五「大物が狙える場所です」
趙林「やっぱりおうしか言いませんね、盧俊義様」
阮小二「そういうもんだ」
阮小七「でけえ船だな兄貴!」
盧「おう、おう」
晁「おう!」
宋「大物だ!」
呉「…」

盧「おう…」
晁「盧俊義とやりあうとはどれほどの大物だ?」
宋「魚影が見えてきたぞ」
ニ「タモなら任せてください」
呉「私にやらせてくれ」
五「…」
趙「釣れる!」
盧「おう!」
呉「しまった!」
晁「何をしている呉用!」
宋「せっかくの大物を」
盧「おう!」
五「張順!」
張順「任せろ!」

晁蓋…盧俊義の身体ほどある魚とは…
宋江…私たちはボウズだったな。
盧俊義…おう!
呉用…腕力はからっきしなのを忘れていた。
阮小五…こんなこともあろうかと声をかけていた。
阮小二…四人でタモを持っても無理だった。
阮小七…豪華な企画だ。
趙林…釣り博打ですった。
張順…水中戦は敵無し。

21.
史進「いでよ!九紋竜!」
九紋竜「!!!!!!!!!」
鄒淵「来い!出林竜!」
出林竜「!」
史「九紋竜!逆鱗だ!」
九「変態死すべし!」
史「俺を攻撃するな!」
九「羞恥を知れ」
史「助けろ班光!」
班光「…御竜子」
九「班光様の仰せのままに」
史「やれやれ」
鄒「馬鹿め」
班「…史進殿」

史「なんだ班光」
班「今九紋竜を御竜子の私が制御しているのですが」
史「さっさと返せ!」
班「そういう訳にはいきません、史進殿」
史「貴様!何を企んでいる!」
班「羞恥を知らない史進殿に九紋竜を焚き付けてお灸を据えます!」
史「おのれ班光!」
鄒「…」
史「鄒淵!何をしている」
鄒「…」

鄒「俺は班光につく」
班「鄒淵殿!」
史「陳達!」
陳「俺も跳澗虎と共に班光につく」
跳澗虎「!」
史「貴様らそれでも遊撃隊か!」
陳「九紋竜のいない史進なんぞ単なるすっ裸だ」
鄒「史進を燃やせ!班光」
班「九紋竜!」
九「汝らは三人で卑怯な真似をするか」
班「しまった!」
九「滅ぶべし」

九紋竜…史進の竜。九つの逆鱗に触れる者を燃やし尽くす。
史進…全裸で燃やされた。
出林竜…鄒淵の竜。特に特徴はない。
鄒淵…とばっちりで燃やされた。
班光御竜子の通り、竜を御す事ができるが、九紋竜の逆鱗に触れてしまった。
跳澗虎…陳達の虎。すごいジャンプ力。
陳達…一緒に燃えてた。

22.
呉用「童貫に勝つにはどうすればよかったかな」
宣賛「皆目検討がつきません」
呉「…では本人に聞いてみよう」
童貫「そうだな…」
宣「!?」
童「まず双頭山では万に一つも負けなかった」
呉「朱仝と雷横だったら?」
童「分からんが、相手になる将校が少なかったのは確かだ」
董平「…」
孫立「…」

童「講和の茶番で即座に攻撃できなかったのは惜しかった」
呉「あれこそ侯健たちの仕事だ」
童「なりふり構わず二月も時を稼いだのは敬意を示しても良い」
侯健「なりふりどころか…」
童「その後の戦でも礫を肩に食らったのは痛かった…」
呉「頭に当たる気はなかったのか?」
童「腕の方が困ったぞ」

呉「それは?」
童「食事も厠もままならなかったからな」
宣「利き腕でしたらそうでしょうね」
童「左手を使う調練も思うようにいかなかった」
呉「従者に飯をよそってもらったのか?」
童「侯蒙にな」
宣「…お手柄だな、張清」
張清「それは狙っていない」
童「あの段階では我らの勝利は確実だった」

呉用…軍令を出した自分を童貫に指摘されて大笑いした。
宣賛…終始冷や汗が止まらなかった。
董平…鄷美に慰められた。
孫立…楽大娘子が口を聞いてくれない。
侯健…股関節がめちゃくちゃ柔らかくなった…
張清…瓊英に飯をよそってほしい時がある。

童貫…なんだかんだで梁山泊の面々と気があう。

23.
王英「…」
扈三娘「…」
白寿「…」
燕順「おう、王英」
鄭天寿「とうとう年貢の納め時だな」
王「…」
扈「何か言いたいことは?」
白「…もういいんだけどね」
王「…」
燕「男になれ王英」
鄭「てめえの落とし前くらいてめえでつけろ」
王「…大変、申し訳ございませんでした」
扈「それで?」

王「…それでとは?」
扈「それで王英殿はどうされたいのですか?」
燕(自業自得とはいえ、きつい女だ)
鄭(俺らの監視の目がありゃ良かったんだが)
王「…」
扈「…」
白「あなたの巻いた種なんだから」
王「…二人にお許しいただきたく」
扈「私たちに許してもらうために王英殿は何をするのですか?」

王「…命を賭けて二人をお守りします」
扈「それはもういいです」
白「やる事はやってもらったからね」
王「…兄貴」
燕「なんだ色男」
鄭「今の王英とは口をききたくねえ」
王「…もう金輪際不義はしねえから、許してくれ!」
燕「甘いぞ!矮脚虎!」
王「!?」
鄭「てめえの財産吐いて俺らに使え!」

燕順…二人とも王英の馬鹿の金で憂さ晴らしだ!
鄭天寿…清風山の恥さらしがやらかして申し訳ない。
扈三娘…燕順の懐の広さにグッときた。
白寿…鄭天寿のイケメンぶりにドキッとした。

王英…当分このメンツの使いっ走りをやるという事で落ち着いた、らしい。

24.
宋江「梁山泊出オチ選手権!」
盧俊義「企画そのものが出オチではないか?」
呉用「盧俊義殿」
晁蓋「構わん。一人目!」
史進「!」
晁「一人目!」
蘇端「!」
宋「まだ来ないのか」
呉「既に二人…」
盧「一人目前へ!」
史「俺が」
蘇「俺だって」
宋「黙れ」
史「」
蘇「」
晁蓋「企画通りだな」

晁蓋…楊令が控えていたぞ!
宋江…場を弁えろ楊令。
盧俊義…お前はこちら側だ。
呉用…出ることもできなかったなんて…

史進…お察しのすっ裸。
蘇端…お察しのすべり芸。

25.
宋江「梁山泊我慢大会を行う」
呉用「何を我慢するのですか?」
盧俊義「この冷たい氷に抱きつくのだ」
呉「何も金の極寒の地でやらなくても」
阿骨打「俺を混ぜてくれ!梁山泊首脳陣!」
宋「金国の帝が!」
阿「極寒の我慢大会と聞いて我慢できずに駆けつけてきた!」
盧「今何と言った阿骨打殿?」

阿「我慢できずに駆けつけてきたのだが」
盧「我慢大会に参加する以前に我慢できていないではないか!」
阿「しまった!」
呉「阿骨打殿もこちらへ」
宋「すでに始まっているぞ」
呉「晁蓋殿、楊令殿、林冲、完顔成、耶律越里に…」
盧「史進はどうでもいい」
阿「楊令は随分身体をはりたがるのだな」

呉「肌が氷に張り付かないから心配です」
宋「…もしや参加者全員がそうなっているのではないか?」
阿「金国の寒さを侮りすぎだぞ!」
呉「湯の準備を!」
盧「樫の木を盛大に燃やすのだ!」
阿「…これは離れたくても離れられなくなっているな!」
呉「晁蓋殿!楊令殿!」
盧「史進はどうでもいい」

宋江…湯を運ぶやかんが足りぬ!
盧俊義…塩をかけたら余計寒くなるな。
呉用…瓢箪矢と油を!
阿骨打…火攻めではないか。

晁蓋…死ぬかと思った。
楊令…気を引き締めたくて参加。
林冲…楊令には負けん!
完顔成…貧乏くじを引きすぎた忍耐力が自慢。
耶律越里…我慢が自慢。
史進…どうでもいい。

26.
林冲「二周年だ」
張藍「あっという間でしたね」
楊志「色々あったな」
楊令「そうですな、父上」
済仁美「これからは何が起こるのでしょう」
曹正「俺もソーセージに代わるものを探し求めて二年が経ってしまった」
石秀「無駄な月日と脂肪を蓄えたものだな」
志「よそでやれ二人とも。統率がとれん」

曹「曹正のチョコレートソーセージだ!」
石「何の脈絡もなくぶち込んでくるな!」
林「ただの細長いチョコではないか」
志「ろくな話にならん気を感じる」
令「曹正殿、石秀殿。申し訳ないが…」
済「退場してください」
曹「そんな!」
石「酷いぞ楊令!」
張「私たちの団欒に混ざりたいのですか?」

曹「俺のアシストがなければ楊志たちの団欒はできなかった!」
石「私の探した隠れ家がなければ団欒はできなかったでしょう!」
志「たしかにその通りだ」
令「今の私たちならば、青蓮寺の軍も返り討ちにできるのですが」
済「頼もしい」
林「ならば曹正と石秀などさっさと追い払え」
曹「酷いぞ林冲」

林冲…いつまでごねているのだ、曹正。
張藍…家族の団欒を邪魔しないでください。
楊志…邪険にするのも申し訳ない気がしてしまう。
済仁美…厚かましい曹正は嫌い。
楊令…吹毛剣を抜きますよ!

曹正…結局石秀と泣きながら帰って行った。
石秀…俺はこんな扱いをされる男ではないはずなのに!

27.
史進「俺たちの名を融合させて遊ぼう」
班光「どういう意味ですか?」
史「たとえば俺と林冲殿を融合させる」
班「はい」
史「林進」
班「はあ」
史「史冲」
班「美味しそうな名前ですね」
史「お前もやってみろ」
班「…史光」
史「ふむ」
班「班進」
史「あだ名は九紋虎だな」
班「面白いですな!」

史「遊撃隊には姓の部最強の男がいる」
班「誰ですか?」
陳達「俺だ」
班「陳達殿…」
史「陳進などつまらん」
班「陳光…」
史「すけべ小僧め!」
班「!?」
陳「杜興もできるな」
班「鬼瞼児陳興…」
史「最低だ班光!」
班「全国の陳殿に謝ってください!」
陳「陳小五」
史「陳飛麟」
班「酷いw」

史「名の部最強は解珍だ」
班「ちんと言いたいだけではないですか!」
陳「言ってみろ班光」
班「陳珍…」
史「ツーアウトだ班光」
班「鎮三山という方がいます」
史「鎮三山陳珍…」
班「卑猥な!」
燕青「…私の友に」
史「燕青?」
燕「李固という者がいるが」
班「陳…」
史「班光」
陳「懲罰を」

史進…下腹部に打撃を与える技をかけた。
陳達…股間を直撃する技をかけた。
班光…宦官になるところだった。

燕青…商人の宴でそんないじられ方をしてたな…

28.
史進「ビジネス書を書こうと思う」
班光「ツッコミ待ちですか史進殿?」
史「字が読めなくても分かる風紀の正し方」
班「史進殿を追放すればいいのでは」
史「知らなかったと言わせない!軍規の守り方」
班「着物を着ましょう」
施恩「胡散臭いタイトルばかりだな史進」
史「替天行道よりも売れるぞ」

史「売れなかった」
施「言わずもがなだ」
班「何を書かれたのですか?」
史「俺の軍での経験を生かしたハウツー本だが…」
班「そんなセコい話ではなく、史進殿の人生を振り返る伝記にすれば良いのでは?」
史「しかしな、班光」
班「ダメなのですか?」
史「そしたら全五十一巻の大長編になるぞ?」

史進…全五十一巻の三部作で売るつもりだ。
班光…なぜ私が第二部しかでないのですか!
施恩…俺なんてほんの少ししか出てないぞ!

twitterにて連載中!

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中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!