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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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#好き

しあわせの日に

過ぎたいつかに帰れるのなら 死んでもいいと思えたあの日に 世界で一番しあわせだって 生まれて初めて感じた日 月がきれいだったよね 君と初めてくちづけ叶えた 君と私しか居ない夜の街 こわかったけれど信じた日 手を離すことができなくて 大きな手のひら握りしめてた 下げてたペンダント私の首に 通してくれた別れの日 みじめでずっと恥ずかしかった 弱い私を何度も抱きよせ 額にやさしくくちづけ与えて 静かに受け止めてくれた日に 過ぎたいつかに帰れるのなら 死んでもいいと会いに行っ

生きるのに必要な君のひとしずく

半分この愛なんて要らない 何より大事に思うもの どうして分け合えるの そんな優しさ残酷なだけ 半分くれるなんて言わないで 優しさなんかで愛さないで 君をすべてくださらないなら 私ひとりで潰れて息絶える 半分でも一口でも 本当は涙出るほど嬉しいの 胸が裂けるほどくやしいの 優しさで撫でてもらえて 死んじゃいたいほど喜んだ 君の欠片に触れられるなら どんなさみしい一瞬でも必要だ 何もくれないなんて言わないで あと少し君を感じていられるように ひとすくいの水をください 君に

なくならない世界

すべてのものは過去にはならない 時間はただの位置でしかない 古くなるなんて錯覚だよ 脳は現在も過去も区別しない 好きな電気は何度でも 脳に読み聞かせてあげて 君の好きな世界は いつもここにあるよって安心させてあげて あの歌はいつでも歌ってくれる あの物語はいつも仲間に入れてくれる あの人との思い出は無くなったりしない 君が愛しく抱きしめるかぎり 君の好きな世界は ずっと一緒なんだよ

君は綿の中

いつか遊んだ大好きなみんなを 縫いぐるみに詰めて 森へ連れていくの 死んでしまった人やウサギや猫 消えてしまった友達 遠くへ行ってしまった人たち いつか私を忘れる人も 夢の中から切り取って 綿の中にしまっていくの 消えないで 一人にしないで 何があっても捨てないで こわいこわい気持ちが 入る隙間の無いくらい 耳の先から爪先まで 大好きな気持ちでいっぱいに いつか遊んだ大好きな君を 縫いぐるみに詰めて 森へ連れていくの 毎日抱きしめて 手を繋いで眠ろうね

何があっても消さない

どこにでも行ける 何にでもなれる 愛しさにめぐりあうためなら 何度だって生まれ変われる 永久に喜びの日を繰り返す 痛くても苦しくても 手を離したりしない たとえ影も形も無くても 僕は君を抱きしめる

ぼくときみ

おぼろげなぼくのきみ ぼくしかしらないきみだから ぼくがずっとだきしめる からだがなくてもいつまでも ぼくがきえるまでいっしょだよ あいまいなぼくのきみ ついにしらないきみだから ぼくはずっとひとりきり すべてはゆめだったとしても ぼくがきえるまでいっしょだよ

てをはなす

この手を離してあげましょう 掴んでいるから重いのです 静かに落ちていきましょう 私の居ないあなたの世界 快く安く静か あなたは二度と汚れない 音を立てず 波を立てず 手を離す 痛みはありませんから 握りしめた指ひらくだけ 楽になりますよ 体をあずけました 温かい居場所をもらって いつまでも居られるかと思い ひととき宿をありがとう やわらかくて愛おしく いつまでもそこに居たい 願った私は弱かった 多くを望めば痛いのです この手を離してあげましょう 掴んでいるから重い

言葉を信じたバカ

‪優しい言葉を信じて穴から出て、‬ ‪嬉しい言葉を頼って鎧も捨てて、‬ ‪安心する言葉を愛そうと 武器も防具も手から離したのに、‬ ‪何も無い場所に放って置かれて、‬ ‪寂しくて寒くて心細い。‬ ‪訳も分からずただ皮膚が痛い。‬ ‪あーそうか、私みたいのを‬ ‪バカって言うんだね。‬ ‪バカをからかって君は愉快か。‬ ‪それもおしえてくれないんだね。‬ ‪声も聞かせてくれないんだね。‬ ‪君の言葉はそんなに空虚か。‬ ‪その美しく強く短い言葉を、‬ ‪信じて頼って愛す

来世はあなたのウサギになるの

あと何回生まれ変わったら 私ウサギになれるかな ふわふわウサギになったら あなた飼ってね 大事にしてよね 暖かいところで穏やかに 死ねるように 優しくしてあげてね 生まれ変わったら 生まれ変わったら 来世のお話 次から次へとつくる君は でも本当は 来世なんて信じていないと笑った 私が粉々になったら あなたのご飯になるの あなたのご飯になりたいの だから先に死んではいやよと 怒るように必死になって言った

好きなんて言葉はまやかしだろ

ぼくのことなど大して好きでもないくせにな ぼくもそう 君のことほんとに好きとも言えなくて でも君の中には時々 ぼくの探してるきらきらした石が転がっているだろ それをどうにか拾いたくってしかたがなくて 喉がからからになるまで手を伸ばし続けてしまう 手が届かないと知っても離れないのは ぼくのものにならないのならせめて死ぬまで その存在を慰めに見つめようとするからだ 君もぼくもきっと 好き合ってなんかいない ただなすすべなく落日を見送るように しおれると知