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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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2020年9月の記事一覧

遊ぼう

君にとっての恐怖は何 人それぞれ異なるだとか みな腹の底は分からないと聞くけど どーせ同じ体しか持ってないだろ 驚くほどのこともないよ 言葉になんか囚われるから 意味が違って聞こえるんだ いつまでそこにいるんだ そんなに心地良いか そりゃ良かった まるでめでたくないよ 祝う気なんてちっとも起きない 君が壊れることに期待している 気色悪いの? うんざり疲れるから近寄らないって そんな大人しい自分を褒めてどうするんだ まったく美しくないよ 遊び方も忘れたのか 老いるのが趣味の

思考のトグロ

もやもやと熱い煙が腹の奥を渦巻く 吐き出せない重たい煙 血に乗って体の端々まで回る毒 気持ち悪い 深夜の焦燥 思考がトグロを巻いて 頼りない電灯の包む室の中で 溶けず消えずまとわりつく 体も思考も どこへも行けない 深夜の焦燥 気持ち悪い また一夜 わだかまって老いる

世界に一人ぼっち

言葉を忘れたら 僕は美しくなれますか 言葉を忘れたら 愛し方を知りますか 言葉を忘れたら 存在を許せますか 言葉しか使えない 醜い体しか持ってない 何をどう壊してでも 僕は僕でなくなりたい 大丈夫になってほしい 君のこともあの人のことも 死んだあの子のことも 明日どう生きるかも 忘れて知らず見えなくなって 僕は僕を手放して やっと安心して居場所に帰るの 僕は言葉を忘れて この醜い体を消したい 世界を愛すために

言葉を信じたバカ

‪優しい言葉を信じて穴から出て、‬ ‪嬉しい言葉を頼って鎧も捨てて、‬ ‪安心する言葉を愛そうと 武器も防具も手から離したのに、‬ ‪何も無い場所に放って置かれて、‬ ‪寂しくて寒くて心細い。‬ ‪訳も分からずただ皮膚が痛い。‬ ‪あーそうか、私みたいのを‬ ‪バカって言うんだね。‬ ‪バカをからかって君は愉快か。‬ ‪それもおしえてくれないんだね。‬ ‪声も聞かせてくれないんだね。‬ ‪君の言葉はそんなに空虚か。‬ ‪その美しく強く短い言葉を、‬ ‪信じて頼って愛す

ロボット人形

僕は君を ロボット人形にしよう。 僕はある日怒った 良い子にしてても救われない みんなポンコツなのに 僕を笑うから 世界中の人間どもを ロボットにしてやると怒った 君は言った 「私もロボットにしてくれる?」 感情、自意識、劣等感、 嫌悪にルール、同調圧力 ぜんぶ忘れたいの、 何にも無くて 命令だけで チクタク動くのがいいの。 君はロボット人形 君はロボット人形にするよ 好きな形にしてあげる 好きな色にしてあげる きれいきれいにしてあげる 他の人間ロボットには 触らな

来世はあなたのウサギになるの

あと何回生まれ変わったら 私ウサギになれるかな ふわふわウサギになったら あなた飼ってね 大事にしてよね 暖かいところで穏やかに 死ねるように 優しくしてあげてね 生まれ変わったら 生まれ変わったら 来世のお話 次から次へとつくる君は でも本当は 来世なんて信じていないと笑った 私が粉々になったら あなたのご飯になるの あなたのご飯になりたいの だから先に死んではいやよと 怒るように必死になって言った

お別れは夏に

‪星空観察をしたいんだ‬ ‪空が暗くて‬ ‪周りが静かで‬ ‪何にも邪魔されないところを見つけよう‬ ‪生きた時間を忘れるまで‬ ‪星をたくさん見るんだ‬ ‪最後に火を灯して‬ ‪肉体にお別れの儀式‬ ‪木々のヴェールで覆い隠そう‬ ‪もう二度とお日様を見ないんだ‬ ‪そうだねきっと夏にお別れだね‬

‪生きるの空しい午前4時‬ ‪脱衣所で座り込む‬ ‪お湯は冷める‬ ‪前に進めない‬ ‪君はいないし‬ ‪僕が消えても気づかれない‬ ‪隠れた世界の午前4時‬ ‪届かない声でさようなら‬ ‪大丈夫はじめから‬ ‪僕なんて居なかったんだよ‬

花のきもち

‪美しいと思ったならその瞬間に摘み取って 自分だけで毎日愛でて 目の前で枯らしてよ 触れて汚れる覚悟も無しに 目の前で向き合う感性も用意せずに 遠くからただ眺めて知った気になって 美しいなんて寂しい感情だけ投げないで