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【見返し編②】「100年ドラえもん」のためのオリジナル和紙には、ドラえもんの「透かし」が入っている・・・・・・! その技術をお伝えします。

 前回の【見返し編①】では、てんとう虫コミックス『ドラえもん』豪華愛蔵版 全45巻セット「100年ドラえもん」の「見返し」には、オリジナルの和紙が使われることが分かりました。また、和紙は耐久性が高いことが、「100年ドラえもん」の「100年先の未来に届けたい」というコンセプトに通じていることが、和紙を採用する決め手となったことも分かりました。

 今回は、前回謎のままに終わった「透かし」について伺います。「透かし」とは一体どんな技術なのでしょうか? なぜ、「透かし」を入れるのでしょうか? 【撮影:明直樹(MOv)/ 聞き手:佐藤譲】


ドラえもんは、どこにいる?

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 こちらの写真は、試作品の紙たち。目指す色(グレー)をつくるために、何度も試しました。
 なんと、この紙たちには、すでに「透かし」が入っているのです。手元にあると、消えてしまう。しかし、よく見ると・・・

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 いた! ドラえもん!!
 これが、「透かし」です。

「置いていたら見えない。でも、よーく見たら、ドラえもんがそこにいるんです!」
 「100年ドラえもん」制作チームのメンバーたちは熱く語ります。


「透かし」とは、どんな技術?

 私たちが最もよく目にする「透かし」は、お札です。光にかざすと、中央の白い部分に、うっすらとそのお札の肖像画が浮かびあがってきますよね。また、賞状や認定証などにも、特別感を演出するものとして、「透かし」の技術が使われています
 賞状や認定証などに使われる「透かし」の技術は、「白透かし」と呼ばれます。一方、お札に使われている「透かし」の技術は「黒透かし」といって、お札以外で使用することは禁じられています。
 今回の「100ドラ透かし和紙」に使用される技術は、「白透かし」です。

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こちらは、サンプルを作るときに使用した簡易の「透かし」の版。様々な印刷の現場に立ち会ってきたメンバーも、この素材の「透かし」の版を見るのは初めてでした。

「透かし」は、網目を樹脂でふさぐことで、生まれます。樹脂でふさがれたところには原料がつかないのでそこだけ紙が薄くなります。だから透ける、のです。

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 こちらが本番。工場の抄紙機の一部より。ステンレスの網目に、樹脂(赤色のところ)でドラえもんを型取っています。そこだけ、原料がつかないようにして、ドラえもんの形をした透かしが生まれます。

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 こちらは是非、動画でもご覧ください!↓


「100ドラ透かし和紙」をつくる、和紙メーカー・石川製紙の石川浩社長によると、色の付いた紙で「透かし」を入れることは、非常に珍しい、ということです。
 ますます「100ドラ透かし和紙」に愛着が湧いてきます。

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こちらはサンプルで使用した「透かし」の版です。よくよく見ると、網目になっていることが分かると思います。


「100ドラ透かし和紙」の誕生。

 こうして、「和紙」にドラえもんの「透かし」が入った、オリジナルの紙「100ドラ透かし和紙」が作られていきました。

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 ピッタリの色、地合い、そして、透かしの具合を、時間をかけて見つけていきました

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 ドラえもんルームの徳山編集長とブックデザイナーの名久井直子さんは、「100ドラ透かし和紙」が見返しとして本に入ることを「読者の方々、ひとりひとりにとって、きっとパーソナルな証になる」と話します。

徳山:
「見返しとして入る「100ドラ透かし和紙」は、透かしの位置が、本によって異なります。大きな紙から裁断する際に位置が自然にずれて行くので。本によって異なるということは、それは逆に、『自分の100年ドラえもんだ』ということの証だと思います。自分の家の「100年ドラえもん」と、隣の家の「100年ドラえもん」は違うものなんです。「100ドラ透かし和紙」の見返しによって、より一層、特別な本になりました」

名久井:
「100ドラ透かし和紙」は、「100年ドラえもん」のためのオリジナルの紙です。光に透かせて見たら、ドラえもんが見える。オリジナルの証を、お楽しみください!

 全2回にわたって、福井県越前市の、石川製紙さんの現場からお届けしました!

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試しに、「100ドラ透かし和紙」のサンプルを「100年ドラえもん」の本の大きさに切り取って、見返し部分に当ててみました。お手元に届く「100年ドラえもん」は、こんなイメージです。


ドラえもんルームより〜舞台裏の写真〜

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今回の「100ドラ透かし和紙」を作るために集合した「100年ドラえもん」チームです。それぞれが「紙」に対して一家言あるメンバーたち。紙を指でつまんでパチンと鳴らす共通の癖をお持ちです(厚みをみるためだとか)。


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「100ドラ透かし和紙」を生んだ石川製紙の石川浩社長。紙があるとついパチンと鳴らしてまう癖以外に、宿に泊まると部屋の襖がどんな紙でできているかを見たり、絵があったらその紙を見ちゃう、のも癖だと言います。