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プロフェッショナルに学べ!        菅野孝明さん 浪江日記③

まちの再構築に走り続けてきた4年間。避難指示から指示の解除、人口が少しずつ戻り、まちの再起を図る浪江には学びの視点が多く備わっている。「次に進めているのは、『観光・教育事業』です」と話す一般社団法人まちづくりなみえの事務局次長 菅野孝明さん。浪江で取り組まれている新しい事業に込めた菅野さんの想いを伺いました。

わたしのまちに持ち帰ってください

 菅野さんが属している一般社団法人まちづくりなみえでは、福島県および福島県観光物産交流協会、さらには周辺町村のまちづくり会社と協働で、企業、官公庁から中学生、高校生などを対象とした「ホープツーリズム」を実施しています。このまちで何が起きたのか、そこで人はどう対応したのか、国の対応などについて、たくさんの人に伝えているのです。
 また企業が果たす役割、まちを訪れる人が浪江に対してできること、自分の住むまちに持ち帰って、日頃からできることを問い直そうと考え直せる機会を作っています。
「中学生、高校生には視察してから『一緒に考える時間』と『その考えを発表する時間』を持ってもらうようにしています。真剣な眼差しで話を聞いてくれ、感じたことを率直に伝えてくれます」と視察で吸収し、地元に持ち帰って自分のまち、これからの日本に対して活動を続けてくれる生徒たちに強いメッセージを込めながら、菅野さんは、ツアーコーディネートを続けています。

ぜひ、一度「浪江」を訪れてください

「企業の方々はそれぞれが持っている技術がある。その技術を使って浪江に対して何かできるかを検討してくれたり、また災害時の職員や人の動きからマネジメントの要素を汲み取って社内の研修に活かしている企業もあります。想定外のことが起きた時に対応できるスキルをどう磨いていくのか、この浪江で生きてきた人の中に答えがたくさんあります」と企業との交流を深めながら、菅野さんは視察内容のブラッシュアップを続けているのです。

「浪江を訪れる人、浪江に移住する人、視察で来る人、仕事で携わる人、いろんな形で浪江に関わっている人がいる。その人たちと語るには共通言語が必要です」と菅野さんは話す。浪江町は、福島県の双葉郡に位置します。このエリアには、大熊、双葉など他のまちも再起を続けています。
それぞれのまちの特徴と歴史・背景がある中で、同じ未来を描いて進まなければならない。そのためには、同じ目線で話ができるような共通言語の必要性を感じ始めています。その言語を生み出す、『話し合いの場』が必要だね」と菅野さんは未来を見ながら、熱い眼差しで語りました。

未来を見て、過去を忘れないで「まち」の再構築する

 前回も出てきた「話し合いの場」。住民を始め、まちの再構築に関わる全ての人が集う『場』が必要です。それぞれの想いを抱えているだけでは何も前に進みません。
 綺麗な言葉にまとまっていなくていい。それぞれの「想い」を語ることができる「場」を創り、そこに人が集い、引き出す存在がいて、受け止める存在がいること。そのような「場」が持ててこそ次の未来へとつながるのはないだろうか。
 まさに「場」づくりの中心でまちの中を動き回っている菅野さんから出てくる言葉には、浪江のみならず全国、いや世界のまち、住む場所、営みが生まれる場所にとって大切な要素となり、学びが詰まっています。

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津波が来た「請戸小学校」を訪れました。

最後に伝えたいこと

 東日本大震災から10年を迎えました。
 私たち一人一人が被災地に対して、できることは多くないかもしれない。
 でも将来の私たちが生きる世界、社会に対して、何かしら、少しでもできることがあるかもしれない。
 それは本当に小さいなことかもしれないけれど、みんなの小さなことが集まれば、何が起きても「みんなで生き延びる」社会を創造することができるのではないだろうか。
 菅野さんのお話を聞いて、改めて勇気を持つことができました。

 私は、そんな想いを胸に、今日も防災ベンチャー企業で活動しています。
「社会に対して私がやりたいこと、私ができることはどんなことだろうか」
そんなことを、ふと日常の中で考える時間を一緒に持ちませんか。

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