川越宗一「熱源」
終電アタックをする飛行機の中で震えながらあらかた読んで、その後ヘロヘロになって東北行ってから実家に帰ってきて読了。
文明における弱肉強食の摂理に抗う熱を、アイヌを題材に史実を交えて描いた本作。加えて「日本とアイヌ」「ロシアとポーランド」他、オロッコなどアイヌ以外の少数民族も登場。
読んで、ロシアとウクライナとの現在の戦争を思い起こした。あとは、日本と、私の住む(住民票のある)沖縄の関係性も。
熱源は人であり文化である、潰してはならぬ。そう静かに呟くような、他文化を蔑み呑み込もうとする小賢しさへの怒りを感じた。
第二次世界大戦が終わったにも関わらず攻めてくるぼろぼろのロシア軍と、それに応じるぼろぼろの日本軍とを描写して、物語は終わる。
この物語は、日本にもロシアにも優しくはない。少数民族を通じて描き出される大国の側に私は属していて、内省を促させられる。奇異の目を持ってアイヌ文化に接する和人とも違う、共に生きるあり方は、人生を賭してあまりに重い。
そのあり方こそが、無理解という分厚い雪を溶かす熱となるのかもなぁと思った。