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斜線堂有紀「本の背骨が最後に残る」

 南国の本読み仲間からの餞別を、昨日読了。

 人間が本となる表題作と、それに対応する最後の一編に挟まれると、それぞれの短篇たちが全て、十または綴、あるいは別の本が語った物語のようにも感じた。

 目や手足を、肉体を失うことについて繰り返し、この短編集では描いている。身体を損なうグロテスクさ、痛みに苦悶する登場人物たち、を、通勤電車内でリアルに想像して、何度か気分悪くなった。

 短編はこんな感じの物語だった。
・生きたまま焼かれて死ぬ本
・肉体が死ぬと魂も失われることを知る兎になれなかった少女
・仮想現実の世界で少女時代の自分を虐待するピアノの先生
・拷問されて死んだ者の痛みを引き受けて踊る姫
・永遠の降雨で身体が溶ける整形美女
・嗜虐癖のある精神科医と昔の精神病院

 仮想現実の世界で嗜虐癖を爆発させる、というのは、まさに作者や読者のことを指しているのではないか?と感じた。
 痛みを引き受けて踊る姫の物語が一番、綺麗で御伽話っぽくて好きだった。

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