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垣谷美雨「懲役病棟」

 昨晩は少し体調が悪くて、最終章を読みながら寝落ちてしまい、今朝読了。三部作らしいのだが、この作者の本を初めて読んだ。

 軽い読み物だけど、患者=女性受刑者たちの境遇はそれなりにリアルで、実際に居そうな感じである。あてると心が分かる聴診器とか、個人情報流出しまくりな物語の展開は完全にファンタジーだけど、「被害者的な犯罪者たち」も一定数いるということを、そういうことにあまり興味を持ったことがない人に知ってもらえる機会になる本だと思った。
 もう少し言うと、この本は登場人物がほぼ全員女性で、作者の視点も女性側である。良くも悪くも。家族に縛られたり夫に傷つけられたり、心血を注いで育てた子供や自分自身も子供のような親が迎えに来てくれなかったり、孫も子も呆気なく理不尽に死んだり。
 傷ついていくらでも孤独になりながら、ファンタジーの力でまた繋がって生きていく彼女たちが現実なら良いのに。

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