イーライ・ブラウン「シナモンとガンパウダー」

 夜中の2時半過ぎまで読んで、読み終えた。
 海賊に拉致された天才料理人の話で、すこぶるハッピーエンドだ。海賊という枠を利用して、こちら側の先入観を主人公に抱かせては、大波に飲まれた船のように転覆させられていく。
 編み物をする巨漢の海賊が羊とsexしたがっているとか思わせてみたり、ゲイの二人と思わせて片方が実は男ではなく女だったり、冷酷な海賊と思わせておいて母であり女性であり魅力的で優しさを持った人だったり。
 料理の描写とキャラクターの持つ物語性に惹き込まれた。
 ちなみに最後は、生き延びていては都合の悪い人間がタイミングよく死んでしまい、少しご都合主義的なクライマックスを迎える。荒れ狂う海と輝かしい宝物と残酷な血みどろの思い出を、夕陽の中で親しい人たちに囲まれて穏やかに思い返すような。
 それが少し物足りない気もしたけれど、フィクションだからこれで良い気もする。

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