元スポーツアナ週一コラム vol.7 3秒の美しさ      9月15日編

3秒の美しさ

日中はまだまだ
残暑厳しいですが、
朝晩は涼しくなって来ました。
 
秋めいてきた
綺麗な夜空を見て
ふと思い出した
言葉がある!
「3秒に魅了されてしまったの」
 
今から約25年程前、
初めてお会いした時に
聞いた衝撃のフレーズ❗

たった3秒で
心惹かれるものなんて
何があるだろう?

絶景?
赤い糸で繋がっている人?
ペットショップの動物?
大体が
ある1つの
対象物に湧く
感情の様に思える。

その言葉の主は・・・

直木賞作家であり
作詞家としても
五木ひろしさんの
横浜たそがれ
石原裕次郎さんの
北の旅人などを書いた
山口洋子さん。

そんな山口さんが
惚れた3秒とは?

プロ野球で
内野手が併殺を狙う
一連の動きだった❗
「あの白いボールが
 何のためらいもなく、
 例えば6➡️4➡️3と渡る
 ショートからセカンド 
 そしてセカンドが
 クルッと反転して
 ファーストに送球して
 ボールが移って行く様。
 白球が糸を引くように、
 スムーズに軽やかに
 グラブに収まり
 離れて行く姿
 あの3秒の美しさは
 芸術的!
 本当にダブルプレーの
 場面が好きなの」
 
確かに併殺シーンは
鮮やかだと思う。
ただ美しいと言う
見方は無かった。
女性ならではの目線であり、
足繁く球場に通っていた
山口さんならではの
野球に対する愛情表現。

そんな山口さんと
お話し出来る機会は、
自分のミスから
始まった。

忘れもしない
人生初のプロ野球取材の時、
場所は神宮球場。
ヤクルト野村監督時代、
練習時1塁ベンチで
報道陣相手に
30分程度
監督を囲む取材対応があった。

そしてここでの決まりは、
絶対メモを取ってはダメ🆖
本当に聞きたい事は
目を見て話して
覚えるものだろう
と言う道理が有った。

そんな中、
初取材で多くの報道陣の
輪の1番後ろにいた私は、
何とか聞き取れる言葉を
ほんの僅か
ノートに記している所を
野村監督に見られてしまった❗
「おいそこの若いの、
 見ない顔だな!
 メモを取ったら
 アカン事知らんのか?」

野球の話が止まり、
監督の低い声がこちらに向けられ
周囲の冷ややかな視線が
集中的に送られてきた。

自身どうすることも出来ず、
どぎまぎしていると
監督の横に座っていた女性から
救いの言葉が飛び出した‼️
「あんな若いお兄さんが
 汗かいて頑張っているんだから、
 監督大目に見てあげなさいよ!」

この一声で
流石の野村監督も
苦笑いで、
次からは気を付けろよ
と事態は収まった。

その声を出してくれた方こそ
山口洋子さん。

難を逃れた私は
当然練習終了後
監督に謝りに行き
山口さんに
お礼を言いに向かった。

そこで
教えて頂いたのが
前述の
「3秒の美しさ」

ワンプレーの
完成形に至る迄
必死に練習している
汗や涙を知っているだけに
愛おしく思うとの事。

そんな山口洋子さん
亡くなって
先日9月6日で
8年も経った。

五木ひろしさんで
大ヒットした
「夜空」
の歌詞を書いたのも
野球好きな山口さん!

今宵もそんな空を見て
白い星が
白球の様に
ためらいもなく
流れてくれたら
美しいだろうな~
と思う感傷の秋である❗








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