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そこが変だよ南信州。

長野県の南部、特に諏訪湖から流れる天竜川沿いの地域には不思議がいっぱいだ。
北部から嫁いだ私には「おいおい、マジかよ。」と思う事が良くあるのに、彼らにとってはそれは普通の事だ。

例えば、縄文土器だ。
諏訪市、茅野市で縄文土器がゴロゴロ発掘されている。
天竜川沿いの岡谷市、辰野町、箕輪、伊那、宮田村、駒ヶ根市と、天竜川を愛知県の方向へ下っていく中でもゴロゴロ発掘されている。
発掘されすぎている。
発掘されすぎて、土地開発が進まない。
駒ヶ根市の美容師さんが、私の髪をシャキシャキ切りながら
「駒ヶ根に自宅を持ちたくて土地を探しているんです。」と切り出して
そのすぐ後に「でも土器が出るからねー。」と続ける。
ネズミが出るからねー、というようなトーンだ。
しかもかなり困っている様子だった。
土地が買えないからだ。
土器がゴロゴロ出土しちゃうから。
土地を買おうと奮闘する駒ヶ根市民として、普通に困っちゃっているのだ。
古代のロマンも身近過ぎると、煙たいのだ。

まだある。
駒ヶ根市に隣接する宮田村でも縄文ロマンは同じような扱いだ。
竪穴式住居が普通にある。
しかも民家と民家の間にある。
野晒しだ。
野晒しだし無料で入れる。
こんなもんで良かったら見て行ってください、というようにポツンと立っている。

ほんとすみません、の風体。

民家と民家の間にあっても竪穴式住居は竪穴式住居だ。
そこに縄文人が住んでいた証だ。
縄文時代から子々孫々、受け継がれて民家ができたのだ。
その民家と民家に挟まれている様はまるで、ひひひひひひひひ孫に囲まれているようではないか。そう考えると日本最古の幸せ者かもしれない。

まだある。
先述した茅野市は、立派な博物館がある!

茅野市の尖石縄文考古館。


ジャジャーン、である。快挙だ。
茅野市はついに縄文土器が出土する素晴らしさに気づいたのだ。
入館料大人500円。安い。
水族館より安い。
山の中にポツンと建てられているとはいえ、安い。
国宝の縄文のヴィーナスだって飾られているのに。
あまりの安さになぜか文句を言いながら入館する私。
さてさて縄文土器を見せてもらいましょう、と思いながら進む私の前に、南部のパノラマが現れた。
そのパノラマにビッシリ、まち針のようなものが刺さっている。
説明を読むと、出土した場所にまち針を刺して行ったそうだ。
奇特な人がいるものだ。
いや、奇特と思ってしまうのは、あまりに縄文遺跡が出土しているからだ。
まち針を刺すのがアホらしくなるほど、もう、パノラマにはビッシリまち針が刺さっている。
まち針の方が足りない。

しかもかなり広いはずの博物館には、縄文土器が所狭しと飾ってある。
もう重ねて飾ってしまうのではないか?と心配になるほど、収納技術を駆使して縄文土器が置いてある。
ばあちゃん家の戸棚みたいだった。

まだ裏にもある。もう置くところがない。

500円でこれだけ見れたらお腹いっぱいだ。
しかもどの縄文土器にも蛇の柄が描いてある。
縄文中期、盛んに縄文土器を作り、私の土器を見て欲しいと言わんばかりに華美されていく姿はまるで芸術品だ。
その装飾に蛇柄が使われているのだ。
どれも、これも。あっちもこっちも。
さらに赤い塗料で塗った後もあり、赤い蛇だと言わんばかりだ。
国宝や国宝級の土偶は、女性を模したような体型で、妊娠しているかのようにお腹がポッコリと出ている。
その曲線が、また美しいのだ。

お腹も胸もぽっこりでお尻も丸い。

頭のヘルメットみたいなものもすごく愛らしい。

これだけの情報を持って、そのお隣の市、諏訪市に建てられている諏訪大社に行くと度肝を抜かす。
なんと子宝と勝利の神様なのだ。
それも諏訪大社を調べていくうちに、どうも蛇か龍の神様も祀っているようだという事がわかった。

勝負事に勝利を招くといわれ、武田家が熱心に通ったと言われている諏訪大社。
勝利を招く龍神の色は、なんと赤い龍らしい。
縄文人が競い合うように作っていた赤い蛇柄の縄文土器。
もしかして諏訪大社の大元も縄文時代から繋がっているかもしれない。
あぁ、考えると夜しか眠れない。ロマンがある。
ロマンはあるが、どれだけ一生懸命調べて解説しても、やはり南信州の血を受け継ぐ旦那にはいまいち響かない。
顔は縄文人にそっくりなくせに、自分がもしかしたら縄文時代から脈々とその血を受け継いでいるかもしれないという事に対して全く関心がない。
明日の天気のほうが興味ある。
でも。
でもきっと、ここまで読んでくれたあなたなら、それがどれだけ凄いことか、きっと分かってくれるはずと期待しています。ドキドキ。
興味があれば南信州、是非遊びに来てください。

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