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イヤホン

AirPodsの中身を紛失した。それも2回目。

AirPodsの第一世代の片耳を無くしたので、
第二世代を購入し、それは両耳無くした。
それもどちらも家の中で

病気かと思う。

Appleに問い合わせたら
耳だけ購入する場合は、
片耳で1万4千円かかると言われた。
両耳で2万8千円。

高すぎる。

新品を買うよりは安いけど、
どう考えたって高い。破産する。

でも片耳だけで音楽を聴くのは
あまりにも味気なくて、集中できなくて、
特に電車内が色んな音で溢れていて苦痛でたまらなかった。

AirPodsのノイズキャンセリング機能を
知ってしまっている以上、
あの快感をもう一度手に入れるには、
買い直す以外の方法がなかった。

結果として、購入するのに1ヶ月も渋った。
金がないというよりは、
“2度無くしたものを買い直す”という、
あまりにも惨めな行為だったから、
しばらく気持ちの整理がつかなかった。

AirPodsを無くしてから
ちょうど一ヶ月後、

仕事終わに片耳だけのイヤホンで
音楽を聴きながら帰っている時に、
「こんな人生はもう終わりだ」と
いきなり思い立ち、
その足で銀座のAppleへ駆け込んだ。

とりあえず店頭に立っている
店員さんに事情を説明したら
「予約がないと修理が受けられません」
と、門前払いされた。

いくらなんでもひどい。冷たすぎる。

片耳だけのイヤホンで音楽を聴いている
哀れで可哀想な人間に対して、
どうしてそんなに
ひどいことが言えるんだろう。

悲しくなって
真っ白な床を見つめていたら

「只今のお時間でしたら
予約後すぐにご案内可能です」と言われた。

先にそう言ってほしい。

7階の部屋に通されて、
すぐに修理担当の人が来てくれた。

「こんにちは、担当の〇〇です(下の名前)」

あ、下の名前で自己紹介するタイプだ。
なんかAppleっぽい。 

担当のかわいいお兄さんが、
めちゃくちゃ早い手捌きでタブレットを
操作して、たった5分で新しいAirPodsに
取り替えてくれた。

動作確認の為にその場で両耳の 
イヤホンをつけるように言われたので、
1ヶ月ぶりに両耳にイヤホンをつけた。
若干手が震えそうになるくらい緊張した。

「これこれ~~~~!!!!!!!!」

そう、これをずっと待っていた。

心待ちにしていた快感だったので、
思わず声が出た。感動する。
AirPodsすごい。

Appleありがとう。

心からありがとう。

帰り道はもちろんスキップして帰った。 
銀座のハイブランドのお店たちが、
余計キラキラして見えた。
ちょっと遠回りしてミスドにも寄った。
あの瞬間、世界の誰よりも幸せだったと思う。

家に帰ってAirPodsを外した瞬間、
何も楽しくはなかった。

脱ぎ捨てられた衣服、
洗われていない食器、
テーブルの上には中身だけ入っていない
別のイヤホンケース。

上着のポケットには、
ほぼ新品と変わらない値段で買った
新しいAirPodsとクレジットカードの明細。

私は何をしているんだろう。

きっとAirPodsの
ノイズキャンセリング機能なんかより、
有線のイヤホンを好きな人と分け合って
一緒に聴く方が何倍も幸福度が高い。

Appleが憎い。

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