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1.4mmの生命

現在、妊娠7か月。自覚がそんなにあるわけじゃないけど、妊婦として過ごしている。おなかも大きく目立つようになってきた。

妊娠なんて人生でそう何度も経験することでもないし、せっかくだから少しは記録しておこう、と思って早数か月。すでに妊娠初期の記憶は薄い。これは産前産後特有のものなのか、単に私が忘れっぽいだけかはさておき、その薄い記憶すら跡形もなく消えてなくならないうちに書き残しておこう。今回は妊娠が分かったときのこと。

陽性?

生理が来ていなかったからもしやとは思っていた。翌日に控えていた家族旅行でお酒が飲めるかどうか一応確認しておこうと妊娠検査薬を取り出したところ、陽性の表示。でも検査薬の反応が悪かったこともあり、ほんとに?と半信半疑でいた。ぬか喜びしたくない気持ちもあって、ドラマで見るような「やったー!」という雰囲気にもならなかった。

夫も似たようなかんじで、結果を伝えるとちょっと面食らった様子で「おめでとう」と一言。私たち二人のことなのに、他人事として扱われたように感じてちょっと拗ねた。夫には大喜びしてほしかったんだと思う。自分の感慨の浅さを棚に上げてね。

近いうちに子どもを授かりたいね、とお互い確認していたはずなのに心細くなってしまったのは、やっぱり未知の世界に足を踏み入れた不安からなのだろうか。このあとちゃんと「嬉しいよ」と言ってもらえて心底安心した。

病院を選ぶ

産婦人科。女性にとって必要だということは分かっているけれど、なるべく行きたくない病院である。歯医者さんと同じかそれ以上の行きたくなさ。本当に陽性なのか確認が必要とはいえ、あの内診台を思い出せば産婦人科選びはおのずと慎重になった。

さらにもし陽性が確定した場合のことを考えると条件も増えてくる。無痛分娩に対応しているか。分娩費用が相場より高くないか。アクセスは悪くないか。クチコミはどうか。男女の産み分けなど看板に書いてないか(これ意外と多い)。

夫と相談しながら病院を選んで、予約日が来るまではずっとそわそわしていた。なんの変化もない自分の腹に“なにか”いるかもしれないのだ。

再度、陽性

どきどきしながら病院へ行って、1.4mmの新たな生命を確認した。いってんよんみり! あまりにも小さな生命。細胞。

ドラマだと先生と差し向いに座って「おめでとうございます」とか言われるけど、実際は先生が内診台の奥から器具をがちゃがちゃしながら「いるかな~…………あ、これが赤ちゃんですよ」とかなんとか言っていて、私は見せられたモニターをぼーっと見ていた。実感、ない。

妊娠が確定したからといって、いきなり妊婦としてのソフトがインストールされるわけでもないのだから実感はなくても自然なのだろうけど、でも実感はないなりに今度は流産が怖くなる。なんたってミリ単位の生物なのだ。こわれものというより、いつ見失ってもおかしくない存在。再びぬか喜びしたくない気持ちで、初診察以降の妊娠初期は常にどこか怯えながら過ごしていたように思う。今振り返れば、ほんとに喜ぶのが下手なやつだなあと笑えるのだけど。

このあとは、つわりがやってきたり母子手帳に怒ったりする。


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