「寂しさは予報外れの、晴れ、きまぐれに、雨」

無音の中で、ただ文字を飲み込み、吐き出すのを繰り返す。息をするより激しく、その作業は淡々とすらしてる。
冷蔵庫の心音とか、外の世界で人が動く羽音とか、そういうのがやけに響いて嫌いじゃない。

寂しい、という感情を教えてくれた人がいて。
その人に悟られてはならない、想いの隠し場所が定まらなくて、途方にくれる深夜の一歩手前。
当たり前に昇って沈むのが本当は正解なのにな、と太陽のそばに布団を敷いて寝る準備をする。
その大きく安定した波が完璧すぎて怖くて仕方ないんだ。
時々姿を消してしまったり欠けたりする様を隠しもしない、月の端っこで毛布にくるまってみる。
その緩やかな不完全さのほうが見渡す限りの闇を肯定してくれる。

どうか、この寂しさを忘れてしまう日がきませんように、と願う。
闇から抜け出したいんじゃないんだよ。そのままの場所で、寂しさを堂々と掲げながら、笑ってみたい。
気が済むまで洪水させて、泣き止んだ空の澄んだ水色みたいになりたい。
いちばん傷つけたくない人に向かう鈍い色をした感情は、やっぱりどうでもいい人には向くはずもないから。
孤独が生み出す虚空に支配されるなら、せめて噛み砕いて体内で消化される頃、やっと君に届いてほしい。

囚われている。
世界が美しいという幻想とか、人を信じなきゃいけない善意とか、守らなきゃいけない距離感と関係性とか。
たぶん悪じゃなくて、正義でもないけど、だからどうでもいいわけじゃなくて、ただ、もう少し脆かったらいいのにって、ね。

頑なに自分を貫く強さが死ぬまで真実であり続けたならいいな。
足枷を外して辿り着きたい場所は最初から決まってる。
立ち向かうんじゃなくて、いつでも一緒にいようよって、どんな模様にも言いたい。吹雪でも嵐でも、君のいる世界にいたい。

遠くで救急車の鳴く音がする。いつのまにか、また予報外れの雨がきまぐれを発動してる。
静寂とは無縁の惑星が今日もまあるく弧を描く。手を伸ばし、その真似をしてみる。笑っちゃうほど下手くそなまるが、愛しさの真ん中。
明日は、晴れるかな。

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