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味わいは、訳す人の数だけある

【ワークショップ】絵本翻訳ワークショップ
【日時】 2023年6月24日 土曜日  18:00-19:30
【参加者】 8人
【講師】ふしみみさを(英仏翻訳者)
【場所】埼玉県越谷市 駅から徒歩5分 カフェあかね.ya
 

「絵本にも翻訳にも興味がない」という人や高校生も参加!


 
6月24日土曜日18時。
閉店後のあかね.ya で、絵本翻訳講座第二回目がスタートです。

今回は8名の方が参加してくださいました。
前回から来てくださった方もいれば、初めての方も。
 
参加動機もバックグラウンドも、やっぱりさまざま。
 
「絵本が大の大好き」
「大人になってから、絵本にはまった」
「課題を訳していたら、脳みそに汗をかいた」
「いつか赤毛のアンを訳すのが夢」
「翻訳というより、伏見さんの性格がおもしろいから」
(※ありがとうございます! 最高の誉め言葉です!)
 
そしてなんと、
「絵本にも翻訳にも興味がないけれど、好きなものを探しているから来てみた」と言う方や、
「英語や本が好きなので、将来できることを探して」という高校生も参加してくれました。
 
こういうの、めちゃめちゃいいですねえ、ウェルカム!
 

四歳半の男の子の一人称


 
さて、教材として選んだのは、
『Little Boy Brown』
Isabel Harris 文  André François  絵

(日本語版は『ブラウンぼうやのとびきりさいこうのひ』ロクリン社)
 
わたし自身が、大、大、大好きな本です。
(って、いつも大好きな本しか選びませんけれど)
 
四歳半の男の子が主人公で、「ぼく」として、お話を語っていきます。
そのため、ぼくの語り口調で、主人公「ぼく」の性格が決まっていきます。
 
みなさんの訳を聞きながら、わたしがとったメモは、
 
「ハキハキ」
「やさしい」
「かわいい」
「子どもらしい」
「しゃれた」
 
など。
 
同じ文章を訳しても、こんなにいろんなブラウンくんが出現するのです。
語り口調に、自然と性格の違いが表れます。
 
そしてはからずも、訳したご本人の性格も。
 
全員にひと通り、訳文を読んでもらって、
「ね、ひとりひとりすごく違うでしょう?」と聞くと、
みなさん、目を丸くして、大きくうなずいていました。
訳した本人もびっくりするくらい、はっきりと「違う」のです。
 
そしてそれが翻訳のおもしろさ。
 

翻訳に「正解」はない


 翻訳は、正解がある世界ではありません。
とくに絵本は、文章だけでなく、絵もある。
何度も何度も読み、自分の身体に取り込んで、この絵本のよさをいちばん表せて、
読み手である読者(しばしば子どもであることが多い)に届きやすい言葉にしていく。
 
ある言語で書かれたものを、自分の体を通してから、
別の言語で語り直す。
 
本は、受け取ってもらって、完成です。
訳したところ、書いた、描いたところで、完成ではないのです。
 
そのための試行錯誤も楽しさのうち。
 
うれしかったのは、みなさん、とても伸びやかだったこと。
英語を訳すことも、人前でそれを読むことも、けっして楽なことではないのに。
 
そしてとても驚いたのは、前回いらしてくださった方全員の訳が、ぐっとよくなっていたこと。
いい意味で、自分らしさが出て、ずっと自由になっている。
伸びやかになると、自然とリズムも整います。
それが客観的に伝わってきて、感激しました。
 

自分の想いを表現する


 言葉にしてみる、表現する、自分の想いを伝えるって、本当に大事なこと。
それは訓練を通して、磨かれていくことでもあるのだなあと、今回実感しました。
そして安心して、表現して、自分を表せる場って、とても大事なのだなあということも。
 
じっさいの本づくりの工程や、紙や印刷のこと、どうやってわたしが訳を手直ししていくかなども、実例をお見せしながら、お話しました。
 
最後はみなさん、明るい表情で、にこにこしながら帰っていかれました。
その顔を見て、「ああ、やってよかったなあ」とうれしく思いました。
 
参加者のみなさんにおたずねしたところ、
「この本の続きがやりたい」という意見が多かったので、
次回はLittle Boy Brown の後半をやろうと思います。
 
この本、何とも言えない、あたたかな読後感があるのです。
読んだあと、幸せな気持ちになるんですよ。
その部分を、いっしょに見ていけたら、と思っています。
 
次回は7月29日(土)。
よかったら、いらしてくださいね!
 
文責:ふしみみさを


 
お申込みは、InstagramのDMでお願いします。https://www.instagram.com/0plus0_/
気軽にお問合せくださいね。

前回の様子。


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