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中学生のころに出会ったキャリア学習の講師のはなし

中学生のころ、キャリア学習をする時間があり、その時に何度か講師を招いて話を聞くという機会があった。
そこで確か、ハローワークで就業支援をしていたか何かしていた、「岸さん」というおじさんが来たことがあった。
ゆっくり・もったりとした癖の強い話し方をしている人であったのでよく物まねをしてバカにしていたのだが、曲がりなりにも仕事をするような立場になってみると、結構まともなことを言っていたような気がしている。

岸さんは「名前を丁寧に書くこと」「正社員になったほうが生涯賃金が高いこと」の2つをことさらに強調していたのだが、ふとこんな風に言い出したのである。

「若い子から、冷房が効いている部屋でダラダラ仕事をしながらたくさんお金をもらえるような職場はないですかと聞かれるのだが、そんな仕事があれば僕がやっているよ、といつも言うんです」

要は、「この世の中に楽な仕事などない」ということだ。これは言われてみれば、結構真理だなと思っている。

確かにだれしも少しでも楽な仕事を求めてしまうものである。でも、何も仕事をしなくても月に100万円もらえる、という仕事があったとしたら、そんな仕事には力のある人が就くはずだ。100%理想の仕事など、なかなかないのだろうと思う。

いうなればトリレンマのようなものなのだろう。
つまり、「金」「仕事の適性や充実感」「労働環境」の3つがあって、そのすべてが基準を満たした状態で成立することはなかなかないということだ。それがすべて成立した状態で仕事ができていることは、かなり幸せな部類に入るのではないか。大概そうもいかないから、まずは仕事は完全な形になるものではない、というある種の「諦念」に立つことが重要なのだ。

諦念のもとで完璧でない状態から少しずつでも改善を生むために何をしたらいいのか、と考えて行動することに実は働きがいがあり、生きがいがあるのだろう。諦念に不満を乗せ続ける人生にハリが出ることはない。

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