桶狭間の僥倖

 さて、相手は出てこない。一気に距離を詰めて山の尾根を伝って突破しよう・・・とその時。

 凄まじい突風と豪雨が襲いかかってきた。織田カンパニーは後ろから、今川カンパニーは正面から暴風雨を受け止める形となった。途中で鎧兜にこつこつ当たるものがある。雹であった。どれくらいの激しさだったかというと楠がばたばたと根本から抜けるくらいだったそうだ。

 陣を構える今川方はたまったものではない。大きな木々が自分たちの方に倒れてくるのである。さらに、桶狭間山というのは地盤がゆるい。土石流とはいかないまでも土砂で足が滑ってうまく動けない。さすがの義元もここに留まっているのはリスクが高い、側近とそっと抜け出そうと判断した。

 「注進、注進〜!」と信長のもとにかけてくる者がある。
 「なんだ?」と声をかける。
 「この先、桶狭間は山が崩れて大変です。攻め上がるのは困難かと・・・」
言い切る前に遮る
 「よし、ナイスだ。お前達。山の中を攻め上る必要はないぞ。もう勝負は見えたな。うっしゃ、分捕りなんかしてる場合じゃねーぞ。かかれかかれ〜!ははは。」
 さて、と・・・「じゃあ、俺達はあっちに回るか。馬廻りついてこい!」

 どこに?と考える暇もなく駆け出す信長にみんながついていく。必死でついていく。
 「殿!どちらに行かれるので?」
 「馬鹿者!あんな崩れた陣を頼みにすぐ程に今川方は愚かかっ!さっさと抜け出すだろう。だが残念、このへんはみんな窪地に深田だ。となると地元が有利!先回りするぞ!」

 しばらくみんなで必死に駆けると信長の思惑通り、東へ向かう一団をみかける。
 「よし、とりあえずあいつらをひっ捕らえて敵将の行く先を聞こう。それ、かかれ、かかれ!」

 先駆けした毛利新介は「あっ!」と信じられないものを見た。なみなみならぬ身分の将が中心にいたからである。これは手柄だ。出世のチャンスだ。
 「オラオラオラオラ!織田企画の営業、毛利新介が一番やりかますぞおら〜!」
一番やりは将にとどいたものの、致命傷には至らず、新介ははねのけられてしまった。それから乱戦が続く・・・信長は自ら突っ込み敵兵を切り伏せる。

 さすがに信長には誰だか想像ができた。「おい、あれ、CEOじゃね?」
 えっ?と全員が一斉に義元をみる。と同時に殺到する。義元も一人の英雄だが、足場が悪く、しかも多勢に無勢。虚しく討ち取られてしまった。

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