【随想】昭和35年。
祖父の若かりし頃を見た。
今ではなかなかお目に掛かることのないサイズの白黒写真。
昨今にはない空気感を漂わせるその中に祖父はあった。
寡黙で聡明な人だった。
鎌倉学園を経て明治大学を出た人だと聞いている。
静かに煙草をふかす人だった。
幼稚園生の頃、2畳ほどの小さな自室の窓辺に立って
沢山の書籍に囲まれながら煙を吐くその姿が大好きだった。
会話らしい会話はした記憶がない。
それでも目が合えば不器用に口角をあげるその姿が愛おしかった。
あたたかい葬式だった。
またいつか、会えるだろうか。
その時は、コーヒーでも啜りながら
なんでもないことを語り合えるだろうか。
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