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【イベント参加レポート】NIG EVENT #01 最新事例に学ぶコミュニティマネージャー入門編

愛知県内のインキュベーション拠点の共創を促進するために立ち上がった「NAGOYA INNOVATION GATEWAY」。2020年9月29日(火)19時から、名古屋市経済局スタートアップ支援室と、拠点間を有機的に結び付ける「名古屋市共創コーディネーター」の株式会社UNERI主催のオープニングイベントが開催されました。

拠点の顔として欠かせない存在の「コミュニティマネージャー」のマインドセットと、インキュベーション拠点の活性化を学ぶオンラインイベント。講師には、コミュニティマネージャーの学校BUFF代表の加藤翼さん(以下、加藤さん)と、コミュニティデザインツールを提供しているstation株式会社代表の渡邊雄介さん(以下、渡邊さん)が登壇されました。

・抽象的で言語化の難しい「コミュニティ」の理解を深めたい
・コミュニティ運営の悩みを解決するヒントを探したい
・ベンチャー、スタートアップ企業支援の参考にしたい

それぞれの課題や思いを持った、東海圏のコミュニティやインキュベーション拠点に関わる100名が、ZOOM上で一堂に会する熱量の高い1時間半。

今夏BUFFでコミュニティ入門を学び、止まることのない知的好奇心に動かされ参加した本イベント。1時間半に詰まった濃い学びをレポートとして残します。

心理的安全性と共有価値を生み出す、コミュニティマネージャーの役割とは

加藤さんからの講義は、コミュニティマネジメント概論でした。コミュニティとコミュニティマネージャーの定義付け。そして必須スキルについて。BUFFの1時間半の講義内容が30分に凝縮されており、瞬きするのも惜しく感じる学びの濃度が高い時間でした。もっと詳細を学びたい方はBUFFへ。

ーコミュニティマネージャーにとって最も大切な、話しやすい環境作りを体験するところから講義スタートです。

加藤さん
まずは、皆さんのことを知りたいのでアイスブレイクから始めましょう。これから出す2択に、リアクション機能のいいねマークか拍手マークで回答をお願いします。

……(アイスブレイク)……

コミュニティの中でアイスブレイクが大事だと思っているから、普段から取り入れていて。メンバーやユーザーさんが、無条件にそこに居ていい心理的安全性を生み出すことができます。場を作っていくときには、まず話しやすい環境作りが、コミュニティマネージャーにとって最も大事になってきます。それを体感してもらうために、今回もアイスブレイクから入りました。


ーコミュニティマネージャーに必須のスキルについて、説明が続きました。

加藤さん
コミュニティの主役であるメンバーやユーザーさんの、実現したい内容に対する課題や困っている点を引き出す。これはコミュニティマネージャー必須のスキルです。
引き出すために、私たちコミュマネが出すべきは答えではなく、問いです。問いを通して課題解決や、やりたい事を叶えていくサポートをします。


ー抽象的で言語化が難しいコミュニティの定義付けとは何か。

加藤さん
コミュニティを定義付ける特徴は4つあります。

1.Shared Value(共有された価値)

コミュニティには、メンバーそれぞれの価値や思い、目的が重なる部分が必ずある

2.Membership Identity(メンバーのアイデンティティ)
会員制度によって内外(うちそと)の関係が作られるからデザインが大事

3.Moral Proscriptions(行動原則)
メンバーとして、コミュニティ内のどんな行動が良しとされるのか

4.Insider Understanding(内観=認知)
中のメンバーにしか分からない認知。何に価値を感じ自分をメンバーだと思っているのか


ーコミュニティマネージャーの定義とは何か、BUFFの見解が提示されました。

加藤さん
所属しているコミュニティの代表として対外的に見られます。その役割としては、会員制度を通して入ってくるヒト・モノ・カネ・アイデアの内、何を通して何を通さないかの判断はコミュニティマネージャーの重要な役割になります。
また、リアルな場所をマネジメントしながらShared Valueを最大化するために、人間の行動をデザインしていくのも役割です。その役割自体が、コミュマネの定義となります。


ー締めくくりは、今回のような企画の意義と参加者さんへのエールです。

加藤さん
コミュニティは何の目的で作るのかが重要です。コミュニティマネージャーがいないと「弧」ワーキングスペースになってしまいますが、それはもったいないと僕は思っています。その場所にあるShared Valueを最大化するために何からしたらいいのか、今回のような機会で共有できるのは素晴らしいと思います。

そして、コミュニティマネジメントは手段であって目的ではありません。何のために作って使うのか、徹底的に自分の中で問いを立ててください。まずはスキルよりも眼差しが大事なので、コミュニティ内で何ができるのか皆で考えていってほしいです。

パッと見てわかるコミュニティデザインが、コミュニティを支える

渡邊さんからの講義は、コミュニティデザインとコミュニティマネジメントとの関係性についてでした。コミュニティデザインとは何か。なぜコミュニティマネジメントには、コミュニティデザインが必要なのか。階層を潜っていくような順を追った説明によって、理解が深まる時間でした。

ーコミュニティへのヒアリングを通して導き出した、運営が抱える課題7つの紹介からスタートです。

渡邊さん
昨年station株式会社を起業後、200ほどのコミュニティに対してヒアリングを実施しました。その中で見えてきたコミュニティの抱える7つの課題をご紹介します。皆さんも思い当たる内容が含まれていませんか?特に1つ目と2つ目は該当者が多い内容です。


1.どうやってコミュニティを作ったらいいか分からない
2.運営メンバー間の情報とタスクが共有できていない

3.運営者がメンバーの事をよく知らない
4.メンバーに、コミュニティの事を具体的に説明できない
5.コミュニティマネージャーに属人化してしまう
6.定性的な事象を定量化するのが困難
7.コミュニティの評価方法が曖昧


ーデザインとコミュニティデザインの違いは何か、定義をご説明いただきました。

渡邊さん
デザイン会社での100以上のプロダクト経験から、デザインとはパッと見てわかりやすくする技術だと考えています。

例えば、ターゲットは誰なのか、ユーザーが迷わない設計、絵やアイコンで理解できる世界などがあげられます。一方コミュニティデザインは、抽象的になりがちなコミュニティをパッと見てわかりやすくする技術です。だから「どんなコミュニティですか?」と聞かれたときに、すぐに説明できるコミュニティマネージャーに寄り添うシステム作りをしています。先ほど紹介した7つの課題を解決する手段でもありますね。


ーなぜ、今こんなにもコミュニティマネジメントが重要視されているのか。関係性が紐解かれていきます。

渡邊さん
現在、働き方や暮らし方が企業や行政で捉えきれないほどに多様化してきています。これまでにない人との繋がり方が、現代的なニーズとして高まっている状態ではないでしょうか。

実際にコミュニティを運営する企業や行政に視点をうつすと、コミュニティ利用者と繋げる橋渡しの役割が必要だとわかります。その役割を全うし、コミュニティの目的達成のためにはコミュニティマネジメントが必要です。その際のマネジメント時のリソースを、コミュニティマネージャーと呼んでいると私たちは理解しています。


ー円滑なマネジメントに欠かせないコミュニティデザインとは何か。具体的な説明が続きました。

渡邊さん
コミュニティマネジメントのやり方を考えると、コミュニティのコンセプトや目的の定義付けが必要になります。そこで重要なのがコミュニティデザインです。

例えば、コミュニティにおけるゴールの言語化をした場合、自分たちの到達点を具体的にイメージできます。メンバーが同じ方向を見て進める状態でのマネジメントは、実施しやすくなると思っています。コミュニティの価値や所属の理由付けを明確にして、マネジメントが助けられていく流れが作られていくという考えです。私たちは、コミュニティマネージャーさんのサポートをシステムやフレームワークの提供で実現していきます。次回の応用編では、さらに実践的な内容についてご紹介します。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。

コミュニティを良くしたい思いが溢れる100人

講義後は質疑応答の時間でした。満員御礼の参加者100名が、2つのブレイクアウトルームに分かれて待機。私がご一緒したのは、名古屋市のインキュベーション施設の方や、オンラインコミュニティを運営している方々でした。今まさに悩んでいることへの解決の糸口を探す、前のめりにコミュニティを良くしていきたいからこそ出てくる質問が続いた30分間。質疑応答を、一部ご紹介します。

【加藤さんへの質問一例】

Q1:コミュニティはできるものですか?作るものですか?
A1:有機的な繋がりから自然と仲間ができるパターンと、一緒に設計して作っていく2パターンがあると思います。

Q2:メンバーのアイデンティティの設定方法を教えてください?
A2:コミュニティにはインナーリングという、メンバーの分布があります。上位5から10%のコアメンバーを、最も大事にする設定をすべきだと思っています。残り約90%の傍観者に該当するメンバーには、クローズな場で盛り上がりを徐々に広げていくのが正しい設計です。逆に最初の間口は広くとり、次のステップで誰がコアメンバーになるかコミュマネが見極めていく方法もあります。

Q3:幅広い年齢層のコミュニティで、気をつけるポイントはありますか?
A3:世代に合わせたテクノロジーツールなのか、気にかけた方がいいです。対話においては幅広い年齢層は、むしろ多様な視点が生まれていいですね。またオフラインの方が、コミュマネがサポートしやすいです。例えば、その場で一番参加できていない人の隣にいき、心理的安全性が生まれるように動きやすいのはオフラインだと思います。

【渡邊さんへの質問一例】

Q1:コミュニティマネージャーに発信力は必要ですか?
A1:必要ですが、インフルエンサー的な発信力は必要ないと思います。発信力とは企画力で、コミュニティの価値をよどみなく伝えるために、どういう企画でどんな言葉を使うのか設計できる能力が加味された発信力が必要です。

Q2:拠点(実際のスペース)とコミュマネどちらに影響力を持たせた方がいいですか?
A2:有名で影響力があるスペースばかりではないと思っています。だからコミュニティの価値を言語化して、想定しているペルソナに届いているのか実証実験が必要です。私たちもユーザーヒアリングを実施して、気づけなかった魅力や価値を発見しています。

Q3:アクテイブと非アクティブのメンバー比率のデータはありますか?
A3:まさにこれからの市場で、コミュニティのビッグデータは今後注目されていくと思っています。現時点では、信頼するコミュニティオーナーさんからの依頼で集めた、緻密なデータの集合体がビッグデータになるかなと思います。

共創という温かさ

捉え方次第で解釈が多様にある、身近な存在コミュニティ。

コミュニティマネージャーの観点と、コミュニティをデザインツールで支える観点から抽象的な概念が紐解かれる時間でした。現場で試行錯誤を繰り返すコミュニティに関わる参加者は、一度立ち止まり内省を促す問いを受け取ったように感じました。

また、講師の加藤さん、渡邊さんの講義30分に凝縮されたエッセンスの数々には、おふたりからの「仲間はいっぱい周りにいますよ。一緒にがんばっていきましょう!」と、そっと後ろから見守ってくれている温かさが込められていたと、私は思いました。東海圏のコミュニティが、今後盛り上がっていく近い未来が楽しみです。


最後に、次回開催されるイベントをご紹介します。コミュニティマネージャー経験者限定の、発展的かつ実践的な内容を学ぶイベントです。

加藤さんからは、コミュニティマネジメントのHowの部分。現場でのスキルセットの使い方が講義で聞けます。また渡邊さんからは、コミュニティの段階に応じた実践的なフレームワークの使い方が講義で聞けるようです。今回以上の熱量が生まれそうな予感でいっぱいですね。気になった方は、ぜひ!

<次回イベント概要>
最新事例に学ぶコミュニティマネージャー応用編
日程:2020年10月15日(木) 19:00から20:30
場所:オンライン開催 (ZOOM)
内容:最新事例に学ぶコミュニティマネージャー入門編の内容を踏まえ、コミュニティマネージャー向けの発展的な内容

キーワード
・現場でのKPI設定
・コミュニティ運営での留意点
・Withコロナ時代の課題

詳細確認とお申込みは、Peatixイベントページへお進みください。

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