きなこから掘り出しているわらびもち暇ではないよ自由なだけで/北山あさひ
最近、職場で立場が変わって、頭の中が忙しない。でも、この話をわたしが受けると決めてこうなったので、文句があるわけじゃない。給料も上がった。と言っても、そもそもの給料が低いので、上がったところでまだ低いが。
わたしは自分の今の仕事が社会に絶対に必要だと思っている。自分の生きる社会にあり続けてほしい場所だから、見合った対価が受け取れないことを承知で、この職場を選んだ。自分がいったい何の役に立っているのかわからなくなりそうになりながら高給取りでいるよりも、ずっといいと思う。
でも、自分の仕事を誇りに思っていても、仕事にばかり入れ込んではいられない。この薄給で、この先どう人生を進めていけばいいのか、あまり未来のことは見えていない。
きなこからわらびもちを掘り出すところは、側から見れば滑稽に見えるだろう。きっと息を止めていて、猫背。でも、本人はいたって真剣。きなこも美味しいけれど、本質はわらびもちにあるとわかっているからだ。誰にも邪魔させず、きなこが多少こぼれ落ちようとも、自分の意志でわらびもちを求める。きなこばかり食べたってむせてしまうし、きなこはせいぜい、あったら嬉しい飾りくらいに思っておくのが良い。わらびもち無しには満足できないのだから。
この歌を読んで、わたしも、きなこからわらびもちを掘り出すのに忙しくしているが、それは自分が選んでやっていることなんだった、と思い直して、なんだか自分のことが愛おしくなった。そして、わたしはいつだって自由なんだった、と安心した。
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