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ソウル・パワー|ジェームス・ブラウンのファンは奥歯が短い

「ジェームス・ブラウンがいちばんかっこいい」という意見が挙がるとき、異論を唱えられる人間は果たして存在するのだろうか。想像がつかない。
いちばんというのはもちろん1番のことだが、厳密に言えばすこしだけ違う。2番や3番がいての1番ではなく、いちばんっつうのは、いちばんのことだ。俺はJBを誰かと比べたことは一度もないし、今後もするつもりはない。

JBのかっこよさは絶対的な物であって、誰かと比較してはじめて浮き彫りになるような陳腐なものではない。

JBの演奏はしばしば爆発と例えられ、ミスター・ダイナマイトと呼ばれることもある。
「なんとか世代におけるなんちゃらの代弁者で、なになに界に変革をもたらしただれだれである。」みたいな洒落臭い言葉で語れば社会的に死ぬし「JB?いいよね〜」みたいな感想も許されていない。

いつの日か子供から「JBって何?」と聞かれたとき、その返答次第で親の真価が問われることになる。
思うに、もしそんな日が来たら「ソウル・パワー」と答えるしかない。

文筆に関わる人間としてこれは悲しいことでもあるが、世界に存在するあらゆる言語の中で、彼を形容できる可能性のある言葉はソウルとパワーの2単語しか発見されていない。
専門家の間ではこれよりも密度の高い言葉は開発不可能とされており、無理に作ればブラックホールが誕生して世界が滅びる可能性もあると言われている。JBを形容するにはこれでもまだ足りないが、現段階の科学ではソウルとパワー、ここが限界だ。

JBのエネルギーは凄まじい。50年前の技術で録音された音源を少し流すだけでも、人間を変えてしまうくらいのパワーがある。

まず、どんな人間でもJBの歌を聴いているときは顔がJBになってしまう。
ターンテーブルが回っている最中は、奥歯がすり減るほどに歯を食いしばるし、ンゥ〜〜〜!!であり、フオーーアッッッ!!?でもある。

レコードの針を止めれば顔は元に戻るし、ンゥもアォも自然と出なくなるが、ただ一つ後遺症として、しばらくのあいだホットパンツのことをハッペィと発音してしまう問題がある。これには誰も、抗えない。


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