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大人になりたくなかった

2021.11.26

将来やりたいことがあった。昔から。

漠然としていたけど、周りの同級生と話していても
私ほど具体的なことを言える人はいなかったし
みんなすごいって言ってくれた。

中学までは普通にそのまま地域の学校に上がるだけだった。
だから高校からは夢に近付けるように
そういうことを学べるところに行こうと親を説得した。

大学も本当に自分のしたいことを職にするための
最後の、本当に最後の、そういうところだしって思って
その道の専門的なことを学べる学科を受験した
いまは大学生をしていて、これを書いていて
そういう経緯だったなあって振り返っている


16の私も17の私も18の私も
今よりは全然青くて、硝子みたいに壊れ物だった。
でも何の拍子に、それが落ちてなくなるか分からなくて
一生懸命自分の中に防波堤を築いて
心に頑丈なテープを何枚も巻いて、巻いて
必死に守っていた、外で壊れて中の水が零れないように。

大人は大人で自分よりも学がある人で
完璧で自分を守ってくれる存在だと信じていた

信じていた、のは間違いかもしれない
蛇口を捻ると水が出て、赤色の絵の具からは赤が出るみたいに
私の中ではただ"それがそう"だった

でも全然そんなことはなくて
教師も大人もただの人間だったみたいで
それを思い知ったとき、私はすごく悲しかった


私は私が正しくあるために
周りも私を正してくれるために
ただ、正しくあって欲しいと願う

道を外れないように
一般的に悪いことは絶対的な悪であって
許されるべきではないから。

外れたことをする人には心底軽蔑する。
間違ったことをしていると、線を引く。
私には関係の無い人だから、ことだから。
そんなことを言いながら、線を引く。

でも楽しそうだ、その瞬間はきっと孤独じゃない
正しさばかりを主張して線を引いた
こっち側は少し風が冷たくて指先が悴んだ


今まで家族と過ごしていた私の家庭の年中行事を
去年から今年にかけて1人で過ごした

流行り病のおかげで5回帰省がなくなった

最近は普通に悲しい、と思った。
でも2回目、3回目になると寂しさが麻痺してきて
当たり前のように、普通に、シンプルに
私は1人なんだと思い知らされた気がした。

お盆休みにお墓参りに行けなかった。
おじいちゃんとかおばあちゃんとかご先祖さまと
手を合わせている間はお話が出来る。
その時間がなんとなく好きだった。

クリスマスに少しいいお肉を家族で食べて
プレゼントをもらってドキドキして眠れない夜を迎える
年の離れた妹を見るのが好きだった。

1年が終わる日、変化の瞬間に
1年前から○○してるって冗談を言うお父さんが、
蕎麦が苦手だから年越しうどんにして欲しいって
わがままを言う私にダメ!って怒るお母さんが、
何だかんだ最後には折れてなんでも頑張る弟が
ただ可愛くて私を好いてくれる妹が

ただ、ただ、本当に心の底から大好きだった。

私にとっての1人で過ごす1年は
あまりにも孤独で悲しくて、寂しかった。



大人になりたくなかった

こんなに寂しいって気持ちが分かりやすく
具体的に分かって気付けてしまうような

そんな大人になりたくなかった

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