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イギリスのらりくらり 勝手にアナザースカイ

農泊してみるか

イギリスに来てから数か月たったころ。
私の行動範囲は家の周辺か、たまに出かけていくロンドンの中心部に限られていました。
「せっかくイギリスにいるんだからヨーロッパでもどこでも、遊びに行っていいのに。」と、相方は言ってくれていましたが、働いていないのに海外旅行に行くなんて、となかなか気が進みませんでした。
そんな時見つけたのが、WWOOF(ウーフ)というシステムでした。
これはいわゆる農家の民泊のようなもので、作業のお手伝いをする代わりに宿泊場所や食事を提供してもらえるという交流制度です。
ヨーロッパ旅行もいいけれど、そういえばイギリス国内もほとんど知らないではないか!
時間はたっぷりあるし、せっかくならイギリスの田舎の暮らしをじっくり体験してみたい!
ついでに、外での作業が好きな私にはピッタリに思えたのでした。

ウーフィング

聞くところによると、WWOOFというのはそもそもがイギリス発祥で、かなり古くからあるようです。
かつては電話帳のような冊子に人手募集中の農家がまとめられていて、1軒ずつ電話して交渉していたそう。ちなみに今はWebサイトがあり、そこから滞在先を探したり、メッセージのやり取りが可能です。

農家と言っても畑、果樹園、畜産、森(薪生産)など様々で、規模についてもバンバン出荷している大規模農園から、商業目的ではない小さな家庭菜園のような所まで、実に幅広い中から探すことができます。
作業内容についても、観光農園のようなレジャー・体験色の強い所から、将来農業をやろうという人向けにがっつり知識を教えます、という所までこちらも色々。

決め手は文章

そんな数ある滞在先の中で、どうやって決めようか..
最終的な決め手は、WWOOFサイトに農家が掲載している紹介文の雰囲気でした。
具体的には、丁寧で親切そうであること。そして書かれている情報が少なすぎず、かといってややこしくないこと。
当たり前のことのようですが、農家が各々に情報を載せているので、中には、「色々注文が多くて神経質そうだなー」とか「情報が少なすぎてよく分からないな」とか、意外と特色が表れています。

他に、受け入れ人数が多すぎないことと(少人数で落ち着いた雰囲気がよかった)、家から遠すぎないこと。
この3つを軸に絞った先に、あるりんご農園がありました。

りんご農園

りんご農園のある場所は、ウェールズに接するイングランドの西の端っこ。Herefordshire(ヘレフォードシャー)という地域です。
ロンドンからの直線距離は120kmほどですが、公共の交通機関を利用すると移動には半日位かかります。
初めて訪れたのは、昨年(2022年)の11月はじめ。
サイダーとペリーの仕込みの最中で、りんごを絞るのが主な作業内容でした。ちなみに、サイダーはりんごのお酒(フランス語だとシードルといいます)、ペリーは洋ナシのお酒です。

まるまる一週間の滞在中、Shepers hut(シェーパーズ ハット)と呼ばれる、小さな移動式の羊飼い小屋に住まわせてくれて、作業は基本午前中のみ(13時ころまで)。そのあとは自由に過ごすことができました。

木々に囲まれた羊飼い小屋。母屋との往復の道すら楽しい。

このりんご農園の何が良かったのかというと、挙げるとキリがないのですが…
とにかくホストの老夫婦がとっても暖かいこと。
それから、ほとんど自前、もしくは知り合いの大工さんが改装したり作ったりした母屋、羊飼い小屋、さらにはトイレ(のノブ!)までもが素敵だったこと。
そして、作る時間も含めてごはんを囲む時間が、とってもとっても豊かだったこと。

一本ずつ植えたというりんごの木

そんな訳で、この農園にどっぷり魅了されてしまい、初めて訪れた数か月後、りんごの剪定時期に合わせて再び訪れ、来月には、三度訪れようとしています。
心の中では勝手に「私のアナザースカイ」「イギリスの実家」と思っているほど。この農園での出来事も、少しずつ書いていけたらと思います。

小屋の中でぼーっとする時間もたくさんありました


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