絵本の裏側 11
だだっぴろい砂地の真ん中。
じいーっとミナミコメツキガ二を見ていたら、周囲はすっかり賑やかになっていました。
じっとする、の効果
生き物を観察したいとき、じっとしたもん勝ちだと勝手に思っています。
体は動かさず、影も動かさず、でもぼうっとしている訳ではなく、五感はきりっと研ぎ澄ませて、じっとします。
男の子もミナミコメツキガ二にすっかり心を奪われて、一生懸命に彼らの動きを見ていました。
すると...
きづけば ぼくは かこまれていた!
男の子の周りでは、ミナミコメツキガ二以外の生き物も通常運転を開始。
砂地の表面、小さな水たまりの中、地面にできた穴の中。
初めからそこにいたのか、どこからともなく現れたのか、いろんな生き物がうごめいています。
誰が誰だか
静かにゆっくり、周りを見渡してみます。
マングローブの地面でもみた、とんがりの貝を見つけました。
でも、ずっと動きの速いヤツがいる。とんがりの貝に混じって、貝殻に住んでいるヤドカリも歩いているみたい。何かに集まって、ご飯を食べてるのかな。〈ウミニナのなかま、ヤドカリ〉
黒い砂を巻き上げながら、横長の甲羅をしたカニが地面の穴から出てきました。水たまりの中で目だけをぴょんと水の上まで突き出して。いったい何を見てるんだろう。〈オサガ二〉
もう一匹カニがいる。脚をひらひらとして、半分泳いでいるような歩いているような。ギザギザしていて強そうなハサミ。きれいな色のカニだなぁ。〈ダイワンガザミ〉
見たことないピンクの絨毯を引きずりながら、丸っこい巻貝が進んでる。砂地に溝を掘りながらずんずん進んでいくよ。ものすごい勢いだ。〈ホウシュノタマ〉
地面がヒラリと動いた。砂粒を乗せた柔らかいヒモみたいなものが、穴の中に吸い込まれていったけど…。今のは何だったんだろう。〈ユムシ〉
アンテナを付けたような小さな貝も歩いてる。何を探しているんだろう。〈カニノテムシロ〉
巻貝じゃない貝が動き回ってる。地面をキックしてなんだか大変そうだなあ。意外と早く動けるんだな。〈二枚貝のなかま〉
...
なんにもいないと思っていた砂地。
いまではもう、とても賑やかな場所です。
動けないや
生き物の活動を邪魔しないためにじっとしていたけれど、やがてたくさんの生き物に囲まれて、足の踏み場に困る事態になりました。
ほんの少し前、マングローブの森に入ったばかりのときは、怖くて踏み出せなかった一歩。
すっかりそんな怖さはなくなって、今度は生き物を気遣って一歩が踏み出せなくなってしまいました。なんだか不思議。
男の子は小さな生き物たちの真ん中で、とことんじっと立っていることに決めました。〈本編 P.15-16〉
【絵本のまるごと、こちらです】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?