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CEATEC JAPAN 2019

Webアクセシビリティセミナー1:障害当事者のWebの利用方法を知る

伊敷 政英(WG2 委員)※弱視の方
諸熊 浩人(WG2 招聘専門家)※中途失明の方

ウェブサイトのアクセシビリティに関する公的規格「JIS X 8341-3:2016」の公示から3年半が経過しました。ですが、ウェブサイトやアプリなどには、障害のある方や中高年にとって、アクセスが困難であったり、快適に利用できなかったりするものが少なくありません。このセッションでは、障害当事者のデモンストレーションを交え、身近なWebアクセシビリティに対する課題について、当事者視点で語ってまいります。

以下諸熊さん---

ウェブとのつきあい方
web閲覧時はスクリーンリーダーを使用
SNS、買い物、会社ではグループウェアやSlackを使用

ウェブ利用の苦労と工夫
ブラウザが進歩し、またアクセシビリティの対応が当たり前になってきたため、ウェブサイトが読みやすくなった。
基本的にはKBを使用して閲覧しているので、困っている点としては、
・マウスを操作しなくてはいけない
 →カーソル位置をトリガーにした操作やポップアップを選択できない
・画像を見なくてはいけない
・自動的に内容が変わってしまうサイトがある

デモ
>>勤怠管理から勤怠申請をしてみる<<
KBで移動するとスクリーンリーダーがパーツを読みあげる
入力した文字も読まれる(倍速みたいな音声で聞いてらっしゃる。なにを読み上げているか一見聞き取れない。速度落としてもらったら、パーツごと読み上げていることが分かる感じ。)

以下伊敷さん---
先天性の弱視、視力0.01以下

使用環境
PC:拡大鏡による色反転と拡大。スクリーンリーダー(NVDA)も
iPhone:メインはVoiceOver。色を反転、ズーム
スマートスピーカー:Alexaとclova。天気、時間など
プライベートではメール、LINE、SNS等。仕事ではRedmine、Google、GitHub、Slack

★VoiceOverでもわりと使えるアプリ
UberEATS!店舗選択、メニュー選択、注文までできる。
出前館は店舗一覧の店舗名が見出しになっていないので、何度も右フリックしないと次の店舗にたどり着かない

★使えないアプリ
Cookpad、食べログほか
「ボタン」と読み上げるボタンが不自由。弱視だから拡大すれば読めるけど、全盲の方は無理では。

最近特に感じていること
・見出しとランドマークだいじ
 ページ内の目的の場所にスムーズに移動できる
・ユーザの操作を邪魔しないでほしい
 モーダルはせめて閉じるボタンを押せるようにしてほしい
・テレビでの音声解説めっちゃ助かる

「使える」の意味
ロービジョンにとっての使えると、スクリーンリーダーの使える、は違う
スクリーンリーダーでは、サイトやアプリの構造について深く知っていないと使えない。(ex.h3へは「3」で飛ぶ、など)

>>当事者の声を聞いてほしい <<
どういうふうに生活しているのか、どういうサイトやアプリを使っているか、アクセシビリティ施策としてはなにをすべきか、を直接聞いてほしい

Webアクセシビリティセミナー2:なぜ企業はWebアクセシビリティに取り組むのか?

伊原 力也(WG1 委員)
伊敷 政英(WG2 委員)
諸熊 浩人(WG2 招聘専門家)

ビジネスを支えるWebサイトの品質として、Webアクセシビリティの重要性はますます高まっています。それに伴って「どのような考え方なのか、どんなメリットがあるのか、何をすればよいのか」といった疑問や不安を耳にする機会も増えてきました。このセッションでは、民間企業がWebアクセシビリティに取り組む価値や方法をお伝えするとともに、障害当事者を交えながら、具体的な民間企業の取り組み事例をご紹介します。

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以下、伊原さん---
なぜ企業はWebアクセシビリティに取り組むのか

Webアクセシビリティ
概要障害者、高齢者への対応にとどまらず、一時的な障害への対応も含む
視覚、四肢、聴覚、認知障害や、加齢による能力バランスの変化、周囲の状況による行動の変化
=ユニバーサルデザイン

webにおけるユニバーサルデザインとは
ブラウザや支援技術で状況に適した表現に変えられること
・スクリーンリーダー(PC、iOS)
・拡大鏡、ハイコントラストモード
テキストをマークアップすると機会が解釈できる、クローラーも情報を取得しやすくなる
ex. カーリル(全国の図書館を横断して本を探してくる)、ログミー(動画のテキスト書き起こしサイト)

なぜ企業がアクセシビリティに取り組むのか
▼体験向上のため
多くの状況で知覚・理解・操作のハードルが下がり、ユーザビリティが向上する。また、アクセシブルなもの以外は使えないユーザにとってはロイヤリティが上がる。
▼効率よくビジネスを回す下地になる
運用コスト削減
見えない流出を避けられる
▼法律による義務化
アメリカでの訴訟件数は2000件以上
日本でも「障害者差別解消法」が施行された
合理的配慮をするよう努力しなくてはいけない


以下、諸熊さん---
企業のwebサイトリニューアルの中でアクセシビリティに取り組んだ事例

コーポレートサイトリニューアルの目的
・経営理念の、ビジネス方針のアップデート
・内外へ向けた啓発、コーポレートの強化
・サイト運営の効率化

アクセシビリティ対応の意思決定まで
アクセシブルなサイトであることは当たり前という認識
社内での啓発活動

実施プロセス
1.アクセシビリティ対応方針の策定
2.ウェブサイトの作成・実施方法を検討
3.検証
※ユーザビリティ担保の定義(ISO9241-11)と似ている

▼重要なポイント
・JISに対応していることが重要なのではない。訪問者が、このサイトはちゃんと使えるかを確認するためのシンボル
・品質をチェックしながら実装、があるべき姿

リニューアルの結果
・ここのページが小見出しで整理され、読みやすくなった
・どのページでも共通の作法で閲覧できるようになった
・掲載される写真に付記する代替えテキストのルールができた
 →写真の場合は写っているものと、写真を見ると何が分かるのかを記載
  グラフは何を表そうとしているのかを記載


以下、伊敷さん---
多様なユーザーの声を聴こう

・Webサイトの発注者・制作者とユーザーを近づけたい
・アクセシビリティに携わる障害当事者を増やしたい

サニーバンクという会社を作った
障害者専門のクラウドソーシング(データ入力、ライティング、アクセシビリティ診断など)

▼アクセシビリティ診断
・障害当事者がユーザーとしてサイトを使用し、良い点・問題点をレポートする
・アクセシビリティ診断
 →実際できるようになるために、講習会も開いている

・JIS X 8341−3は大切だけど、JISに対応していることがだけでは不十分
・ユーザとの接点を持ち、声を聴いてほしい
・>>障害者雇用の新たな一手になる<<

質問タイム
★社内での意識を高めるには?
社内にいる詳しい人に依存してしまっている現実がある。
まずはドキュメント化。ここが難しい、ここは誰に聞く、みたいなのをメモ
そしてすべてをアクセシビリティの担当者がやってしまうのではなく、当事者が質問したりできる体制にする。


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