おでんの日

鱸家には「おでんの日」という独自の記念日がある。
毎年1月9日の晩ごはんはおでん。今年で40周年を迎える。

そのルーツは、1983年1月9日。母は私を身籠っており、臨月に入っていた。陣痛も頻発。いつ破水してもおかしくない状態だった。当然この時期なので、体調も思わしくなく、晩ごはんを作るのも大変だったので、何か作るにしても簡単なものにしようとしていた母は、おでんなら何とか作れると判断。(おでんが、簡単かどうかという議論は本題から外れるので、それは一旦置いておこう)母が買い物に行けないので、姉に買い物を頼んだ。「○○(近所の小さいスーパー)で材料を買ってきて。これで足りるはずだから」と母から買ってくるものメモと2000円を受け取り出掛けた。

外は雪がしんしんと降っていた。買うものも多く、必然的に荷物も重くなる。積もった雪で歩きづらいことを考えると、近所とは言え当時小学生だった姉にとっては大変な重労働である。スーパーに到着しメモに従い材料をカゴに入れお会計に向かう。すると受け取った2000円を少し超えていた。
お金が足りない!受け取ったお金以外持ち合わせが無かったので、どうしようか困っていると店員さんは「少し足りないだけだから、次来た時に払ってくれればいいから」と言って連絡先を書かせて姉を帰してくれた。買った大量の材料とレシートを持って帰宅した。

家に到着し、母に事情を話すと即レシートを確認。「この値段はおかしい!あり得ない!ってか異常に大根高くね?!」と、やや興奮気味に騒ぐ。ドケ…じゃなくて、お金にしっかりしている母は「もう一度行って、お会計しなおしてもらっておいで!」と、姉にもう一度スーパーに行くよう指示。命令を受けた姉は再度、雪が降る中スーパーまで出掛けていった。買った大量の材料すべてとレシートを持って。(一度お店に電話をして、事情を話して確認すべきでは?と言うツッコミが入りそうだが、それは一旦置いておこう)

お店に到着し店員さんに事情を説明。雪が降る中まさかの再来店し再度確認をお願いした。おそらく店員さんも驚いたと思う。「今度で良いよ」と言って帰した子が再びやってきて、足りない分を持ってきたのかなと思ったら、再度お会計をお願いしてきたのだから。そしてレジを打ち直した結果、店員さんが正規の値段よりも高く打っていたことが判明。逆におつりをもらい、材料とレシートとともに無事帰宅。ようやくミッションを達成できたのである。どの状況でもそうだが、このような板挟みに遭うのは本当に面倒くさい。当人同士でやり取りしてくれた方がよっぽどスムーズなのにと思う。子どもながら姉もそう思っていたに違いない。(一度電話とかでやり取りしとけばいいのに…とも思うだろうが、一旦置いておこう)

雪が降る中買い物に行き、大量の材料とともに往復する、そして思わぬトラブル…まさに地獄のような買い物から解放され、姉はホッとし、母は自分の推測が正しかったことを誇示するように「ほら!やっぱり!」とドヤっていたとか、いなかったとか…こうして紆余曲折あっておでんは作られた。このエピソードがきっかけとなり、我が家では1月9日は「おでんの日」となった。余談だが翌日、1月10日に私は生まれた。

7月6日とは真逆の季節、サラダみたいに「なんかおしゃれオシャレ!」な感じの欠片もない。そもそも「この味が いいねと誰も 言ってない」ただ「大根が 高いと母が 言ったから」である。何はともあれ、鱸家では1月9日は「おでんの日」。記念日と言う感じはまるで無いけれど、1月9日は「おでんの日」。母がうっかり忘れておでんじゃない時もあるけれど、1月9日は「おでんの日」。この日は晩御飯の候補におでんを入れておこうと思う。

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