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シーリングスタンプ

新しい趣味ができた話をしよう。

僕にとって手紙とは、個人に向けた詩なのだと思う。もちろん普通に書かれる詩より明確に具体的で、わかりやすく、伝えたいという気持ちが強い。でも存在感というか、僕が書く文章の枠組みの中では、詩に類するんじゃないかと思っている。

はじまりは文具好きだったせいだと思う。様々に絵柄や形が広がる便箋と、「書く」を体感にしてくれるペンと、遊びを広げてくれるインク。それらを好きだが使い所がなかった僕に、文通相手ができた。そこからは自由だった。

そんな僕はずっと気になっていたものがあった。シーリングスタンプだ。だが火をつけワックスを溶かしスタンプを押す、なんて手間なこと、もともと面倒くさがりな僕ではすぐに飽きて続かないと思っていた。興味はあるしとても心惹かれるが、手間やら金銭的な面などからいっときの楽しみで終わってしまいそうで、敬遠していた。

そんなふうに、うっすらと自分から距離を取っていたシーリングスタンプだったが、Twitter(X)の相互がえらくハマっていた。楽しそうだなと思って見ていると、「シーリングスタンプの一式を人に贈ってみたい」なんて言い出したので、我欲に忠実に手を上げた。

スタンプやワックスの好みを聞いてもらい、大人しく楽しみに待っているとそれは本当に届いた。
それは僕にとって、得も言われぬような新しい体験であり、その中で様々に遊べる自由を得た感覚だった。
要するにめちゃくちゃ楽しかった。

このシーリングスタンプ、普通に考えれば手紙の封くらいな用途なのだが、スタンプだけして遊ぶことも可能だし(贅沢過ぎるので百均のワックスで遊んでいる)、ラッピングのワンポイントとしても使える。

思いの外楽しめることに興奮したし、このスタンプを押すという一見ただの作業でしか無い行為が楽しい。
キャンドルに火をつけ、炉を被せ、その上にスプーンを置いて温める。スプーンにワックスを入れて溶けていくさまを眺める。完全に溶け切ったところでスタンプを押したいところにワックスを垂らすのだが、ここで少しコツがいる。スタンプがきれいになるようにできるだけ丸く垂らす必要がある。
そして、ワックスが固まらないうちにスタンプを押す。
語っても仕方ないからできればやってみてほしいというのが本音。でもこの短い作業の中で、「ものをつくる」ときに見られる美しい光景だとか楽しさだとか達成感が得られるのだ。損はない。

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