こんな静かな雪の夜に少しだけそっと祈らせてもらった話
男女生きていれば恋愛やセックスで悩むときがある。
それは年齢関係なく、本気で好きだからこそ悩むし、セックスについての悩みについては、なかなか人に話す機会はないだろう。
この記事を書くオンナは、セックスも恋愛も人間関係も一通り経験し、『なるほどね』とどこか悟った空気を醸し出すだけのオンナが書くコラムである。よって特に学ぶことはない。いや、あるかもしれないが多分そこまでない。
今回は私が今まで経験してきた恋愛のなかでも、ちょっとほろ苦い経験をしたことについて記事にしようと思う。というか勝手に語る。
まぁ今回の記事で『ウケるんだけどこの人!』とかいろいろ思ってもらえたらうれしいし、それはそれで私の幸せに繋がるので、まぁちょっとタバコでも吸いながら読んでみてください。(タバコ吸わない人はポリンキーでもつまみながら読んでちょ。)
あと今回の記事は初めてなので日本語だし特にウケるとこはない。
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題材にもなった男の話は私が高校1年の頃の彼氏だ。共に同じ学年であり、同じ年齢だった。
10代ですからそんなにイカれた男がいるワケでもないんでしょう?なんて思った方もいるかもしれないが、実は私はイカレポンチ(まぁ男だからチン…と失礼!)としか付き合ってこなかった。器用にイカレポンチだけを選び抜くのだ。
これがババ抜きだったらと思うと末恐ろしい。
ババ抜きでも良いがジジ抜きでも良い。ジジ抜き知ってる?え?知らない?じゃあババ抜きでいいよ仕方ない。
とにかく昔の私は優しくされればすぐに惚れ、恋愛と恋愛をしている自分をごちゃごちゃに混ぜ、何もかもが見えなくなる人間だった。
だから藤木直人似の歯医者とも付き合ったのだがそれはいつか話すことにする。
そんなこともあり私の恋愛遍歴はとにかくポンコツな男が多く、30年来の幼なじみに過去の恋愛話を持ち出されたときは必ず自分でも引くほどの男と付き合ってきた。
もっと分かりやすく言うと、ちゃんとしたダメンズウォーなんたらである。
本題に入ろう。
彼は高校時代に付き合った他校の男で、口にピアスを開け、当時流行っていたZEEBRAやNIGHTMARE、DABOやS-WORDが好きなB系男子だった。
自転車でお互いの家を行き来し、情事を済ませればお互いの友人を呼び大勢でカラオケ店で遊ぶ、という遊びが主流だった。
誰かしら呼べば来ることが多かったため、彼とマンツーでカラオケに行くことはほぼなかった。
ある日ふたりでしか時間が潰せないと分かった秋の夕方。
今にも雪の降りそうな寒さのなかでも私は彼と過ごしたく、1時間でも良いから、とふたりきりではじめてのカラオケに出掛けた。
彼は安定してZEEBRAやDragonAshなどをダミ声で歌い満足そうにしていた。毎回聞いても大して上手くはない。なんならまだまだ発展途上で歌えてなんかなかった。聞くのすら辛かったが、一緒にいたかったから我慢していた。
私も当時流行っていた浜崎あゆみや浜崎あゆみを歌い、浜崎あゆみで締め、夜に差し掛かりそろそろ帰る時間だねとなったころ、彼ははじめて私の前である曲を歌った。
女パートと男パートに別れて歌うのだが、当時の私はその曲の存在を全く知らなかった。
そのため一緒に歌うことは一切出来ず、彼の女パートと男パートで歌う後ろ姿をただ眺めていた。
が、その時だ。
彼が歌詞の流れるテレビの前に立ちながら歌うその背中に、ほかの女の影を見た。
『こんな静かな雪の夜に 少しだけそっと 祈らせて』
この歌詞がいわゆるサビになるのだが、女パートの部分を歌う彼に、女の影を感じたのだ。
しかも心のなかにどこか点と点が繋がり、ひとつの答えを導き出したような、無性に悲しい気持ちになった。
なんとなくその時から一緒に行動するのを避け始めた私に、ある日彼は『別れよう』と言った。
私はあの時感じたことを告げることも無く、「ん。」と答えその日を最後に彼とは会わなくなった。
彼と別れてから1週間がすぎた頃。
合同で遊んでいたうちのひとりで、彼の幼なじみの男から、『話さなきゃならないことがある』とメールが来た。
電話することになり、なんで別れたのか理由を聞かれた時に、はじめて私は「彼の歌う歌に女を感じた」と打ち明けた。
言ってる側から信じてもらえないと思ったし、なんなら『ワケわかんない理由で別れんなよ』なんて言われるのかな、と思ったりもした。
が友人はそんなことは一切言わずこう話した。
『ずっと言えなかった。楽しそうに毎日過ごしてるのを見てたら言えなかった。
アイツ、他に女いるんだ。』
「ふーん。」
そうかなるほどそういうことか。
どことなく楽しくしようとしていたことも、笑ってなかった目の奥も、寂しそうなあの背中も、全部そういうことだったのか。
あの時初めて聴いた曲なのにも関わらず、妙にイメージできて心に流れてくる何かを感じ取ったのは、やはりアイツは歌詞に自分の思いを乗せていたんだ。
アイツの本命に対する思いが、歌い慣れていくなかでどんどん歌詞にリンクしていったんだろう。
『でも本命にはかなりヒドイ振られ方をして、おかしくなって手あたり次第遊ぶようになった。
本当はそんなダラしない男じゃなかった。』
「ふーん。」
そんなことはもうどうでも良い。まぁどうでも良くはないが今更私には関係ない。
おそらく本命の彼女への積もり積もった愛が当の本人には理解されず受け止めてもらえない状態が続き、苦しくて、忘れたくて、どうにか抜け出したくていろんな女と遊んでいたのであろう。
だがしかしそんなことはもう別れた私には関係ない。
「そ。別にもうどうでも良いよ。特に凹んだりもしてないし。わざわざありがと。あ、そいやアイツが歌う女パートと男パートのある曲のタイトル教えて?」
電話を切った私は、パソコンでOnly Holy Storyという曲を探した。
初雪が降る夜。
私はひとりひとつの曲をひたすら聴き続けていた。
友人から聞いた彼の気持ちを成仏させるかのように。
~おわり~