“こんにちは、今日は晴れでしたか。”

扉の向こうの光が眩しい、とでも言いたげに目を細める。
その体がそれを求めているのを、自身は知らない。

——可哀想。

そう思うからまたここに来てしまうのだと、わかっている。
…わかっては、いるのだ。

“明日も晴れるといいですね。”

静かに頷く。思っても無いけれど、肯定する他ない。

“お困り事でも?”

首を横に振る。

“じゃあ、悩み事とか。”

「…話せない、かな。」

“そう。構いませんよ、貴女の声が聞けて嬉しいです。”

嗚呼、本当に。


嫌になる。

私じゃなくて、貴女がこちら側なら、貴女は何と言っただろうか。

もう何回目かも覚えていない。

貴女がここにいるべきでは無いことが分かっていて、それを止めているのは私のエゴだ。

それで自分が辛くなってここにくるなんて都合が良すぎる。

踵を返す。
これ以上居たら発狂しそうだった。

“良かったら、また来てくださいね。”

自然と進む足が止まった。
貴女はいつもそうだった。

——許さなくったっていいのに。

扉に手をかける。
また、太陽が待っている。

踏み出した足の、影が落ちた。

声は聞こえなかった。


さよなら
また、新しい貴女と私で


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