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しあわせ恐怖さん





連続テレビ小説「おかえりモネ」が
ラストスパートに向かっている。


物語の一つひとつが丁寧に紡がれ、
視聴者にも演者にも向けて
温かく導いてくれていると思う。

わたしは、のめり込みすぎて
私情も挟みつつ、楽しんでいる。

メッセージ性も、しっかりある。

あの世界観もストレートに響く。

忘れかけていた気持ちに気付かされる。

それが、『おかえりモネ』の持つ
パワーだと思わされる。







そして、ひとつひとつの決断を。

一人ひとりの決断を。

暖かく見守りながら導いていくかのように
物語は進んでいく。




そのなかでのワンフレーズ。
「幸せになってもいいのかな」

何度も聞いた。




何度も聞いては、私も思う。


私も元彼と付き合うときに
思わず吐露した言葉だった。

私が歩んできた震災のことを
伝えた上で、話したことがあった。



わたしも震災で
人生を棒に振ったわけじゃないが
人生の岐路には立たされた。



生きるか死ぬか。

どう生きるか。

どう死ぬか。

どう働くか。

大学を辞めるのか。

仕事は地元なのか。都会なのか。

結婚は、どうするのか。

夢は、どうするのか。

ひたすら未来を悲観した。





まだ二十代が始まったばかりだった。

周りと比べまくって
悩み続けた。

なかなか結論が出せず、
愚痴ばかり。


いろんなことから逃げてばかりだった。





2011年4月以降は、
「震災、大丈夫だった?」と
連日、聞かれた。

何年続いたんだろう。

なんて、答えようって悩んだ。






ごめん。

その話題を私に投げかけないで。

本当は、そう叫びたかった。



相手に悪気はない。

それは分かっている。

でも私は答えたくなかった。


大丈夫なわけない。

テレビで取り上げられるものは
ほんの一部だもの。

何があったのか私の口で
気軽に話せることじゃないもの…。



元彼は、
たぶん私が震災のことを、伝えたとき
重たい女だな…って思ったんだと思う。

元彼も、被災してるところで
生まれ育った人ではあったけど
どれだけ理解してくれていたのか、
いまだに気になってしまう。



震災にトラウマを抱くことが
どれだけの選択肢を
狭めていくのか、知らなかった。



地元のために何かしたいと思っても、
震災のとき居なかったことは
絶対的に除け者にされる心配。

そんなはずはない。

今なら言える。




地元に戻らなくても、
地元に冷たいと言われる恐怖。

そんなはずはない。

今なら言える。






当時の私は、こういうことも考えていた。


自分は結婚も出来ないし、しない。
幸せになる資格がないから。

でも幸せになってもいいのかな。







震災で一度、心を殺した。

だから頑なに、
あのとき居なかったから
私は地元に戻れない。

地元で生きる資格なんてない。


それが自分のなかでの流行語だった。



でも、時が経つにつれて、
そんな感情は少なくなっていった。




地元に想いを寄せては出来る事を
模索していった。


自分でも気付かないうちに
地元へ何かしたいけど…きっかけがなく
手も足も出なかった。




そして数年かけて、
身体も心も縮めながら
いろんなことを考えた。


地元にいないことへの虚無感。寂しさ。

地元を離れたからこそ分かる、
地元の魅力。

突然に、ふって湧いてきた。

それを手放すのは、
もったいない。

子どもの自分じゃ知らなかったこと、
分からなかったこと、
大人になって見える景色が変わってる。



地元に戻ろう。

ふと思い付き、決断した。
  



当時の自分は、ほんとにたくさんのことを
抱え込んでいたから、逃げたかったのかもしれない。


人間関係に、
仕事のこと、結婚のこと、実家のあれこれ、将来のこと、など。


いつのまにか
色んなことを一人で
抱え込んでしまった。


何やってるんだろう。



そう思った。



ずっと、そんなもの抱えて生きていくの?

この疑問を持ち続けていた。



あれだけ、
『地元に帰れない、帰らない…』と
思い込んでいたのに。


なのに、
今は地元に戻っている。


思ったほど楽しい。
思い描いていたほど、窮屈じゃなかった。


震災のとき居なかったことは、
たしかに私の中でネックではある。

でも、地元には震災を乗り越えたからこそ
人を受け入れる暖かさのような
じわ〜と心に滲みていくような空気がある。


子どものときは気付かなかったなぁ。




地元に居なかった空白の時間を
埋めるように過ごしている。


地元時間を堪能しようと
一歩を踏み出している。



そして、つぶやく。

『幸せになってもいいのかな』


未だに迷っている。




でも、しあわせのカタチも大きさも
人と比べなくていい。

自分が嬉しい、楽しい。

心が踊る、ときめくような光景を
目にしたときでいい。

幸せだな…って、しみじみ感じた時でいい。



いまは、そう思っている。