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ジョンが出会った読者たち【第63話】

お母さん&皆さんへ
シバノソウからの手紙

★大反響だった前号(このページから生まれた女子高生シンガー・シバノソウへの母からの手紙)。お母さんからの手紙を全国誌で初めて見るという前代未聞の展開に、シバノソウ本人はもちろんのこと、関係各所やツイッター上で様々な反応がありました。そして嬉しいことに、懐かしいボルタたちからも久しぶりに電話をもらいました。なんだかドラマが始まる予感! そんな中、本人はいったいどんな胸中だったのか? 正直な気持ちをシバノソウに書いてもらいました。

文/ジョン・ヒロボルタ

お母さんは正しい
でもわかってほしい

まず記事を見たとき、めちゃくちゃ恥ずかしかった。外堀から埋められたみたいな。(これが全国誌か~!)って思った。あの母親がふざけないで書いているあたりでガチだったし、それがなおさら心に刺さった。

 お母さんが言っていることは全部正しくて、だからこそ苦しかった。でも私の気持ちもわかってほしい。私が焦るのも、お母さんにがんばっている姿を見せたかったから。褒めてもらいたかったから。お母さんが大好きだから、一番に応援してほしかった。だけど、ブロス発売後にツイッターを見る限り、みんなは完全に母親寄りみたいだった。というか、反応がすごすぎて、私自身びっくりした。

 言い訳にならないし、本当にお母さんが全部正しいのはわかってる。でも、私がみんなにどう思われているかわからないけど、私は進学校に通ってて、年に9回もテストがある学校で正直めちゃくちゃしんどいし、夜遅く帰ってきても歯は磨いてたし(お母さんは磨いていないって書いてたけど)、お風呂は朝にちゃんと入ってたのに! そんなこと今さらだとは思うけど…。記事を読んだとき、お母さんがいい人過ぎてぐうの音も出なかった。

 ここ最近、音楽やってたら楽しいことが多くなって、夜帰るのが遅くなってしまい、お母さんに会わす顔がなくなってしまっていた。「怒られるから帰りたくない→遅く帰宅→怒られる」の永遠ループが嫌すぎて、お母さんが寝た後で帰ることもしばしばあった。

 けど、これを読んでくれてるみなさんに一応言いたいのは、お母さんは朝から私にミルクティーぶっかけてきて、教科書も服もシミだらけになったりとか、蹴られたりもしてた! 手紙だけ読んだら、シバノソウはどれだけダメな子なんだ!って思うかもしれないけど…。親不孝で、楽しいことしかしてなくて、ダメな娘かもしれない、でも半年間でここまでやってきて、さあこれからって時にいろんないい話が舞い込んできたら、今しかないかもしれない、やらなきゃ!って思っちゃうのもわかってほしい。だってお母さんが喜んでくれると思ったから…。

 確かに夜遅くに出歩くのはよくないけど、私はもう高校生だし、お母さんだけは味方でいてほしかった。嫌わないでほしかった。きっとお母さんの手紙を読んだ人は、「勉強します! 進級しました!」っていう流れを求めてると思うけど、高校1年生は今しかないんだよ。若い!って言われるのは今だけ。歳の割に上手だねって言われてることだけが救いだったから、私は実力差を埋めるためにライブをたくさんするしかないと思った。場数を踏めば、ファンがつくかは置いておいて、自分の力と信頼になると思った。本気で何かが変わるって思ってた。今のスピード感じゃなかったらここまでできなかったと思う。人に恵まれているとはいえ、ここまで一人でよく戦ったな、とも思う。

 もちろん今後は勉強もきちんとするけど、それはお母さんのためじゃなくて自分のためだし、そして私と一緒に卒業したいって言ってくれた友達と、応援してくれる人たちを裏切れないから。だから私は少しだけ音楽を休んで、ちゃんとした人間になって、人前に立たなきゃいけないと思う。だけど、音楽がないと死んじゃうし、音楽がやりたいし、私はアイドルでもなんでもなくシンガーソングライターだから、どんどん進化していきます! みんな期待して待っていてほしい。

 ていうか、今日好きな人にフラれたんですけど!?!?!?!?!?!?

シバノソウ

ジョンより

あなたの文章には「ほしい」が多いように思います。きっとこの「ほしい」という気持ちが、今のあなたの活躍の原動力になっているんだろうと思います。でもこれは、裏を返すと「今はない」と、あなた自身は思っているということを意味しています。そうじゃないんだな。お母さんはあなたが生きているだけで幸せなんだし、読者だって実際、歯くらい磨いてはいるだろうとわかってますよ。確かに高校1年は今しかありません。でも、高校2年だって来年しかないし、僕の年齢35歳だって1年しかないことに変わりはない。シバノソウさん、あなたにはいろんなものが実はもう「ある」んですよ。そのすでに「あるもの」にもうちょっと目を向けてみてください。あなたには若さ以外の素晴らしい能力があるんだから!

久しぶりにあいつらから電話が!

以前このページに頻繁に登場していた、すずきゅうボルタ(当時高校生美術部、現在群馬の大学1年生)から久しぶりに電話が! そういえば、彼らと第一回の美術展をやったときに、何の前触れもなくいきなり来たのがシバノソウとの初めての出会いでした。

▲群馬在住、すずきゅうボルタ

「いやあ、ブロス久しぶりに読んだら急に電話したくなって。シバノソウ、がんばってますね。俺もグラフィティがんばってるっす!」

——そうなんだよ。すずきゅうは美術部の仲間には会ってる?

「大学がバラバラなんでさっぱり会ってないっすね。グメンバ(写真部の友人)は連絡先すらわからないですし…」

——そっか、みんなそれぞれの道を進んでいるんだな。絵は描いてる?

「グラフィティはがんばってるっす! 最近は東京のチームと一緒にやってるんす」

——お! 相変わらず描いてるんだ。いいね! すずきゅうの大学は遠いの?

「うす。自転車で通ってるっす」

——「群馬の風はマジできつい」って、すずきゅう言ってたもんね。がんばって!

「うす。いつかシバノソウともコラボしたいっすね」

 初めて会った時、すずきゅうは高校2年だったな。この連載もひとりひとりの人生を追いかけているのだと思うとジーンときますね。

入院して連絡が途絶えていたスプリガンボルタからも、久しぶりに電話がありました。

▲埼玉在住、スプリガンボルタ。

「ジョンさん、最近自分、TVnavi買ってます」

——おいおい! ブロスも買ってくださいね!

「自分は重い病気で入院してて、一応退院したけど、今も定期的に病院行ってます」

——なんとか退院できてよかったですね。

「この経験を生かしたいと思って、医者にデータを取ってもらってるんですよ。少しでも同じ病気の人の役に立ちたいから」

 スプリガンさん、昔は攻撃的な感じだったのに、今ではかなり丸くなってます。さらに、メールも届きました。

「あれだけシバノソウにページ使えばジョンさんの仕事終わり! 後はどうしようが本人の問題だよ…あの年頃はジジイの話聞かないしね(爆笑)」(メールが長いので割愛)

 どうやらスプリガンさんも大人になったみたいですね。


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