杉森久英「美酒一代」


サントリー創業者/鳥井信治郎の伝記の名著。有名な「赤玉ポートワイン」のポスター制作エピソードが一番面白い。モデルは赤玉楽劇団メンバーの1人プリマ・ドンナ/松島栄美子で、この衝撃的なポスターはドイツポスター展で入選もしたことを知る。現代に置き換えると(といってもちょっと古いが)宮沢りえの写真集の新聞全面広告と同じインパクトだったかも。鳥井の広告・デザインのセンスは高く、香水やたばこのパッケージを瓶のデザインの参考にもしていたらしい。
クリエイティブスタッフはデザイナー/元画家/井上木ダ、コピーライター/片岡敏郎(元森永製菓宣伝部長を高給で引き抜いた)。広告では西の寿屋(現サントリー)、東の森永。
関東大震災のあと、本格的なウイスキー作りに着手(社員すべてが反対)。明治・大正のウイスキーはまがい物(グレーン・アルコール+香料=混成ウイスキー)。偶然、こうしたウイスキーを葡萄酒の樽に入れて数年放置していたら熟成し美味になり、これをトリス・ウイスキーとして売り出す。ウイスキーづくりの場所選び(湿度が重要)。ロンドン在住の商社マンにウイスキー作りの技法を知っている人を紹介(ムーア博士)してもらい、そこからスコットランドでウイスキー作りを学んだ日本人の存在を知る(これが竹鶴政孝/年俸4,000円で採用)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?