ヤギさん郵便No.47「声」
今はもう完治しているけど、息子は「てんかん」という病気を持っていた。てんかん発作がはじめて起きたのは小3年生のとき。発作が起こるのは年に1〜2回だし、命に関わる発作ではないとわかっていても、てんかん発作が息子に起きている時間は生きた心地がしなかった。
お医者さんには関係ないと言われたけれど、息子が発作を起こす時は決まって私のストレスがピークに達した時だった。
そういう親の直感というものがある。それは私にだけ特別に備わっているというよりも、むしろみんな備わっている感覚だと思う。
生きている事が奇跡と言われていた女の子のお宅に訪問介護に伺っていたことがある。その小さい女の子は、小さな喉を切開して人工呼吸器を付けていた。
その子のお母さんはいつも寝不足でご機嫌がよろしくない日が多い。当たり前だよね。毎日神経をすり減りながら在宅で看病しているんだから。
だけど、その女の子のお母さんが私は苦手だった。高圧的な人だったから。私は高圧的な人がとても苦手だったの。自分でも馬鹿だなと思うんだけど、高圧的に言われると頭が真っ白になり思考停止になる。そして無駄な動きも増えて挙動不審になる。
だから、いつもそのお宅に向かう時は車の中で音楽をかけ気分を上げる。そうしないと自分が潰れてしまいそうだから。
一年半ケアに入っていたけど、慣れることがなかった。いつものように緊張を紛らす為の音楽をかけ、女の子の自宅の駐車場に車を停めようとしたら、いつもよりアクセルを強く踏みすぎたみたいで、立水栓(水が出る蛇口)に車をぶつけてしまった。
その時に「終了」という声がした。
声と言っても、外から聞こえてくる声ではなくて、頭のなかで響く声。その声を聞いてなんとなくココでの修行が終わったんだと感じた。
事故を起こした2週間後、そのお宅からの撤退、サービスの中止が決まった。
「終了」と声が聞こえたのは、この事だったんだ。人生って不思議なことがあるなと思った。
私は、苦手な人をクリアしたくてアレコレ考えて行動に移してみても大した効果はなかった。たぶん100点満点で採点すると20点とか35点くらいだったと思う。でも20点しかとれなくても、地球では赤点だったとしても、宇宙は不器用なりに頑張っているのをみててくれて、ここでの修行はギリギリクリアにしててあげるわ♪と言われているような気がした。
その声が時々聞こえる。
でもこれは驚くようなことじゃなくて、母親の直感と似てるような気がする。
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